懐中電灯を即席ランタンにする方法

懐中電灯だけで照らしてみる。小型ながら強力な懐中電灯なので、壁の反射で周囲が明るくなっている。

 懐中電灯は指向性の強い灯りです。その指向性の強さのおかげで安心して歩いたり移動したりできる照明器具なのですが、いざ避難所で使おうとすると、いる場所全体を照らしたいのに天井や壁の一点しか明るくならず、どうかすると他の避難者の方からまぶしいと怒られたりしてしまうものです。
 今回は懐中電灯をちょっとした工夫で即席ランタンにする方法を考えてみます。

1.懐中電灯とランタンの違い

 懐中電灯は一点を照らすため光が指向性を持っている照明器具で、ランタンは逆に周辺全体を照らす照明器具で、懐中電灯ほど明るくはなりませんが、明るさの濃淡というのはさほどひどくはありません。

2.懐中電灯をランタンにするには?

 懐中電灯をランタンとして使うためには、指向性の強い光を周りに拡散する仕掛けを作ればいいことになります。
 灯りの部分に何かをかぶせることで、光を散らすことが基本になりそうです。

1)水のペットボトルを使う

懐中電灯の上に水のペットボトルを置いてみた
重心が上にあるので支えていないとひっくり返る。小型の懐中電灯だと、懐中電灯を入れる容器が必要になりそう。

 照明の光の上に水の入ったペットボトルを置きます。ペットボトルと内部の水が光を反射して、周囲に散光します。
 強めの光が周囲に広がりますが、水の入ったペットボトルという重たいものなので、上手に取り付けないとすぐにこけてしまいそうです。

2)不透明のビニール袋をかぶせる

不透明のビニール袋をかぶせた懐中電灯
ビニール袋はしわくちゃにしてあると光を周囲に反射してくれる。

 買い物などでよく使う不透明のビニール袋をくしゃくしゃにして懐中電灯の光の部分にかぶせます。
 懐中電灯の光は袋の中で乱反射して周囲を明るく照らします。
 懐中電灯が熱を持つタイプだと、その熱でビニール袋が溶けることがありますので、熱くならないように気をつける必要があります。

 地震などで余震が続く状態の時には、ロウソクなどの裸火は使うことができません。
 電池式ランタンがあると一番良いのですが、もしも懐中電灯しか持ち出せなかったときには、光の出口部分に出た光を乱反射させて周囲に散らせるような道具を取り付けることで、周囲を照らせる即席ランタンができますよ。
 自分たちの好みの光を見つけて、それを作れるようにしておくといいですね。

非常用持出袋の作り方・その2

市販品の非常用持ち出し袋
市販品の子供用非常用持ち出し袋。これにいろいろなものを足していくことになる。

 非常用持ち出し袋を作るのに、以前まずは自分に何が必要なのかを洗い出してみるという作業をしていただきました。
 ずいぶんと間が開いてしまいましたが、今回は全ての人に必要ではないだろうかと考えられるアイテムについて考えてみたいと思いますが、ここで書き出したアイテムを見られて無条件にそろえるのではなく、自分の生活と比較して、それが必要かどうかについて判断していただきたいなと思います。

1.飲料水500ml×2

 まずは飲み水です。洗ったり調理に使ったりもできることから、ここでは普通の水を用意することをお勧めします。1リットル1本でもいいのではと思われるかもしれませんが、あえて500ml二本にすることで、袋に入れやすくし、重さを感じにくくすることを考えています。

2.食料(そのまま食べられるもの)

 食料品はそのまま食べられるものを用意します。ピーナッツ等の豆類やようかん、チョコレートやあめ玉など、水気がなくてもとりあえず食べられるものがよいでしょう。

3.歯磨きセット

 歯の衛生を保つことで、健康を維持することができます。歯ブラシが無理なら洗口剤や歯磨きシート、歯磨きガムなどを使ってもいいです。
 何もないようなら、ティッシュペーパーやタオルでもいいですので、歯を衛生的に保つように意識します。
 また、口の中をさっぱりさせられると精神的にも安心するものです。

4.着替え・下着類

 濡れたり汗をかいたり、逆に冷えたりすることへの対策として、着替えを1セット準備しておきます。肌着があると、長期の避難でも体を衛生的に保つことが可能になります。
 また、臭いが気になる場合に着替えることで精神的に安心できます。

5.懐中電灯・ヘッドライト

懐中電灯類

移動するときに使うための懐中電灯です。夜道を移動するときや停電時には大活躍します。

6.ランタン

避難先で明かりがないときに使います。真っ暗な中に明かりが一つあるだけで、精神的に落ち着くのが不思議なところです。

7.ポケットティッシュ

トイレの時だけでなく、さまざまな場面で活躍してくれるアイテムです。芯を抜いたトイレットペーパーがあると汎用性が広がります。

8.ウェットティッシュ

 水がないときに手や道具類を衛生的に保つのに必要です。除菌仕様のアルコールと純水仕様のものがあります。体などを拭くことを考えるとアルコールでないもののほうが汎用性は高いですが、アルコールの方が衛生的ではあります。

9.非常用トイレ数個

携帯トイレ各種

 トイレが使えないときに備えて、携帯トイレを自分が一日にトイレに行く回数分用意しておきます。

10.マスク

ほこりやチリなどで気管支を痛めないため、また、避難先で感染症を防ぐために必要です。小分けタイプのものが便利です。

11.タオル

手や体、さまざまな道具を拭いたりするのに必要です。できれば数枚あると便利です。手ぬぐいでも大丈夫です。

12.ラップ

傷の手当てや体温保持、食器の汚れ防止など、さまざまなことに使えます。

13.救急セット

救急セット

基本は外傷用と考えて、絆創膏やガーゼ、包帯、テーピングテープ、それにとげ抜きやはさみ、綿棒といったアイテムを入れておきます。

14.ラジオ、イヤホン

携帯ラジオ各種

被災地周辺の情報を集めるのに必要です。AMが受信できるものがあれば、被災地以外からの情報を得ることもできます。また、イヤホンがあれば周囲の静寂を守りながら情報収集が可能です。

15.ビニール袋

 いろんなことに使えます。大きいものから小さいものまで、数種類準備しておきます。

16.乾電池

懐中電灯やランタン、ラジオなどを動かすのに必要です。電気機器の電池の規格を揃えておくことで、複数の電池を持って歩かなくて済みますので楽です。

17.雨合羽

ポンチョ着用

雨天時の移動に使えるほか、防寒着としても使うことができます。大きめのポンチョタイプであれば、簡易テントやトイレの時の目隠しにも使えます。

18.スリッパ

避難所での人の生活空間は土足禁止にすることが必要です。そのため、スリッパは必要です。

19.使い捨てカイロ

夏場でも冷えることは多いですのであると便利です。また、時間をかければ人肌以上の飲み物を作ることができます。

20.筆記具

マジックや鉛筆、消しゴムといった筆記具とメモ帳は避難所での生活では必須アイテムです。

21.小銭

 慌てていると現金を忘れて避難することもあります。また、公衆電話を使うときにも小銭は必要となります。100円と10円を取り混ぜて準備しておきましょう。

22.連絡先リスト

生存連絡や何かの連絡をするときに備えて連絡先の一覧を書き出しておきます。小銭と一緒にチェック付きビニール袋に入れておくと安心です。

23.モバイルバッテリー

携帯電話を使う人はこれが絶対に必要です。

24.新聞紙

防寒着やたき火の焚き付け、折り紙して皿にする、敷物など、一日分あると重宝します。

25.ナイフ・はさみ

いろいろなものを切り分けるのにあると便利です。

26.ひも

洗濯物を干したり、簡易テントを作ったり、避難所での仕切りやのれんなどを作るときにも使えます。

27.ガムテープ

ものを貼り付けたり修繕したり作ったりするときに、あるととても便利です。切るのに道具が入らないため、使いやすいです。

 いろいろと書いてきましたが、これらのものと自分が必要な道具を合わせてみると、案外と量があるなと思われると思います。
 書いてあるものには他に使えそうな代用品があるかもしれません。また、自分には必要ないものがあるかもしれません。
 それらを上手に組み合わせて、いざというときに持って逃げられる「非常用持ち出し袋」を個人ごとに組み立てておくといいですね。

二つの避難

 災害時における「避難」という言葉には二つの定義があります。
 一つ目は、発生した災害から身を守るための「避難」。これは「一時避難所」「避難場所」「避難所」が該当します。
 ただ、万能なものは殆ど無いのが実情なので、対応している災害によって行き先を使い分ける必要があります。
 二つ目は生活環境を維持するための「避難」。これは災害後、何らかの事情により自宅が使えなくなっている場合に行う避難で、対応しているのは「避難所」のみです。
 「一時避難所」や「避難場所」は災害が収まるまでの仮の避難先ですので、生活環境を維持するための避難は「避難所」に移動する必要があるのですが、大規模災害だと避難所に収容しきれないために、しばらくの間は一時避難所や避難場所、避難所の区別無く避難者が鈴なりというになってしまいます。
 それでも状況が整理されてくると避難所への移動を順次行っていき、一時避難所や避難場所は本来の業務を再開していくことになります。
 この二つの避難がごっちゃになっているので、避難者が避難所へ移動する場合にいろいろな騒動が起きることになり、避難者も行政も施設管理者も振り回されてしまいます。
 命を守るための避難と、命を繋ぐための避難。
 何も起きていない通常期にこの避難の違いを理解して、スムーズに避難ができるようにしたいものです。

避難カルテを作ってみよう

 益田市では先般新しいハザードマップが配られました。いろいろと新しい情報が追加されているので、これを利用してあなたの避難カルテを作成してみませんか?
 避難カルテというのは、避難に関するいろいろなことを一枚の紙にまとめておくもので、いざというときにこれを見るだけで避難すべきかどうかやどの経路を使って避難すればいいかなどがわかって慌てなくてすみます。
 今回は、高知県黒潮町で作られている避難カルテを参考に、順番を追って避難カルテができるように説明をしていきたいと思います。

1.まずは書式を印刷します。「避難カルテ」の書を用意してみました。これをプリントアウトしてください。

2.最初に家族構成を記入します。世帯の全員の名前、性別、年齢、自力避難ができるか否か、家族の力で避難できるか否かを記入します。また、避難場所までの避難方法を決めておきます。原則は徒歩ですが、場所によっては自動車やバイク、自転車でないとたどり着けないことがあるかもしれませんし、移動するのに自力では難しい場合、例えばシニアカーや車いすといった避難手段を記載しておきます。

3.自宅の情報を確認します。いつ建てられたのか、耐震診断はされているか、耐震補強はされているか、家具は固定されているかを記入します。また、ハザードマップを確認して危険と思われる災害を確認して書き出しておきます。

4.避難するときの情報を記入します。避難場所欄に名前を記入し、その避難場所がどのような災害に対応しているのかを確認して書き写します。
予想される災害に備えるため、複数の避難場所を決めておきましょう。また、家からそこまでの避難訓練をしている場合には、いつ頃、どれくらいの時間がかかったかも記入します。

5.近所で助けてくれる人を洗い出しておきます。助けてくれる人の名前と連絡先を書き出しておきます。

6.次に住宅地図を用意します。googleやyahoo!などの地図を自宅と避難所及び避難所までの道がわかるように印刷をします。

7.6の地図に、ハザードマップを参考に浸水地域や土砂災害警戒区域などの危険箇所を記入していきます。

8.自宅から避難場所までの避難経路を8で作った地図に記入していきます。その際、7で記入した危険箇所は避けるような経路を作ってください。また、可能であれば避難経路は複数作っておいた方が安心です。

9.作成した地図を元に実際に歩いてみます。避難経路を自分がきちんと歩けるか、目で見て危険な場所や危険なものはないかを確認し、あれば地図に記入してきます。

10.もう一度地図を見直して、安全と思われる避難経路を確認します。その上で、一度自宅から避難所までの移動時間を計ってみます。

11.移動時間を4で記入した避難所の「避難所までの所要時間」に記入してください。


 以上で避難カルテは完成です。年に1回は内容を確認し、記載する情報を更新してください。
 また、これに非常用持ち出し袋や非常用備蓄品などのリストもつけておくと、一度に確認ができて便利ですよ。
 是非一度作ってみてくださいね。

非常時に頼りになるラジオ

 災害に関する情報は刻一刻と変化していくので、可能な限り最新の情報を得て行動するようにしたいものです。
 その際、情報を得る機材はどのようにしたらよいでしょうか?
 スマホ、ラジオ、テレビ、防災無線など、いろいろな手段が考えられますが、お勧めなのはラジオです。
 スマホやテレビでは、その画面を見ないと詳細な情報がわからないことがよくありますが、もともと音で情報を伝えるラジオは、耳があれば情報を手に入れることができるようになっているため、避難しながら、避難所を設営しながら、休憩しながらと、作業しながら最新の情報を手に入れることができるからです。
 最近ではスマホでもラジオの聴けるアプリが登場していますのでそちらでもいいのですが、例えば津波警報などで避難している最中は、次々に受信するエリアメールや緊急メールでまともにラジオが聴ける状態ではないと考えられます。
 個人的にラジオが好きということはあるのですが、バッテリーの持ちやチャンネルの自由度を考えると、重量がかさむにしてもラジオを一台は持っていた方がいいと思います。
 一時ほどではありませんが、やはり携帯ラジオの需要はあるようでさまざまな形のものが発売されています。また、発電機を搭載して電池が切れても一応使えるという防災ラジオも多数発売されています。
 ラジオを選ぶとき、案外と気にしないのですが入れ替えた電池でどれくらい聞けるのかということが実は重要になっていたりします。

発電機内蔵のラジオの発電機はあくまでも緊急用と考えた方が良い。予備電池は必ず用意しよう。

 安いラジオだと単三2本で30時間程度、良いものになると300時間以上聞くことができ、当然電池が長持ちする方が災害時には有利と言うことになります。
 また、使う電池ですが軽量な単四電池よりも大きな単三電池、それよりも大きな単二電池の方がそれぞれ電池は長持ちします。
 重量とコストを考えて、自分にあった機材を用意しておきたいものです。

【活動報告】保育園の避難訓練に参加しました

 2019年5月30日に益田市のすみれ保育園様が実施されました地震及び津波による避難所までの避難訓練に参加させていただきました。

避難所までの避難訓練では避難経路の中に崩れたり倒れたりするものがないか確認しておくことも必要になってくる。

 今回の訓練では、地震により津波警報が発令されたという想定で保育園から近隣の避難所である益田東中学校まで実際に避難するということで、当研究所はその避難訓練の内容を見させていただき、後日具体的なアドバイスをさせていただく立場での参加です。
 訓練は午前10時に始まり、避難完了が10時25分。地震で動けない時間が3分程度ありましたから、幼児の足で1km弱の道のりを20分強で移動完了したのはかなり素早い避難だったのではないかと思います。
 今回の訓練に当たっては、ガラスでできた階段下の防煙板が落ちて散乱している想定を当日サプライズで作成させてもらい、床に卵パックやペットボトルの蓋を撒いてブルーシートで覆ってみました。

ブルーシートの上側にはガラス製の防煙板がある。もしも床に何かが散らかっていた場合には、お昼寝用の布団を上にかぶせて移動するようにとアドバイスを行った。

 ですが、廊下を覆うブルーシートにこそ躊躇したものの、子ども達は床のでこぼこやガラスを踏むようながしゃがしゃといった音はまったく気にならずに素早く移動をしていました。ちなみに避難訓練完了後に大きい子達に素足で踏んでみてもらいましたが、痛がる子よりも気持ちいいという子の方が多く、子ども達は足裏マッサージが必要な状況なのかと思わず笑ってしまいました。

道幅が狭く、軽自動車とすれ違うのがやっとというような場所もある。避難計画を立てる場合には、このような狭い道路や交差点で車をどうやり過ごすのかが鍵となる。

 今回、快晴で気温が高かったこともありどうなるかとも思いましたが、子ども達は避難所である益田東中学校までは一生懸命歩き、到着後にほっとした顔でそれぞれに持参した飲み物を飲んでいました。避難の際に水分を持って出られるというのは非常に重要な部分ですので、今後も継続してほしいなと思います。

園児と先生達が避難完了したところ。パニックも起きず、統制が取れた状態で避難が完了している。
毎月の避難訓練が子ども達にもきちんと浸透していることがわかる。

 毎回さまざまなことに気づかせていただけるこの避難訓練の見学、後日気づいた点やアドバイスを報告書で提出させていただいていますが、すみれ保育園様ではそのたびに避難訓練の内容をアップデートされ、正直なところ毎回驚かされています。

アドバイスによる変化の一例。避難所に避難する場合に保育園に掲げられる看板。道路からでも見えるように作られている。保護者へ避難先を知らせる表示をするようにアドバイスしたら、これが作られた。大きな紙に書いて窓に見えるように貼ればと思っていたが、こちらの方が時間が短縮できることを教えてもらった。

 この保育園では保育士様向けの研修会もさせていただいているのですが、その際にこちらの説明が足りない部分がいろいろとあることも、こういう訓練に参加させていたくおかげで気づかせていただきました。
 何事も無いのが一番ですが、万が一に備えて訓練をきちんとしておくことはとても大切です。そしてその訓練を第三者の目でチェックし、訓練参加者にフィードバックしていくことが大切なのかなと感じています。
 避難訓練の参加について許可いただきましたすみれ保育園の園長先生、理事長先生始め先生方、そして園児の皆様にお礼申し上げます。

家族の集合方法を確認しておこう

 災害というのはいつ何が起きるかわかりませんので、それに対する備えはしておかなくてはなりません。
 今回は家族がバラバラなときに被災した場合どうするかについて考えてみたいと思います。
 考えてみれば、いつも家族が一緒にいるわけではありません。避難訓練の時はみんな一緒でも、通常は仕事や学校、買い物やお出かけなどでそれぞれがバラバラな行動をとっていることが非常に多いのではないでしょうか。
 そんなときに災害が起きたら、あなたはどんな風に家族と合流しますか?
 まず、一番に自分が生存していることを家族に知っておいてもらわないといけません。
 以前に少し触れましたが、携帯電話や公衆電話などの通信手段がある場合には災害時伝言ダイヤルの171番に自分の生存報告とどこへ避難するかを吹き込んでおくようにします。
 また、音声回線がうまく繋がらない場合には、web171や携帯電話のキャリアが提供する災害時伝言板にメモを残すようにします。いずれにしても、鍵となる番号をあらかじめ決めておかないとメモやメッセージがうまく家族で共有できないことになりますのであらかじめ決めておいてください。また、LINE等のSNSも有効ではありますが、その場合には不急なメッセージのやりとりは事態が落ち着いてからにしてください。
 次に連絡がつかなかったり、通信手段がない、もしくは失った場合に備えて、自宅のどこかに生存報告とどこに避難しているという貼り紙を貼るようにします。
 空き巣などの不埒ものに備えて、玄関などの見える場所ではなく、家族でないとわからないような場所を決めておきましょう。
 最後は、連絡がつかない、書き置きもできないような状況が起きた場合に備えて、集合場所と時間を決め、無事な場合にはそこにその時間こら一時間待つというルールを作ります。
 こうすれば、通信手段を失い、家が跡形もなくなっていたとしても、その時間に集合場所にいけば家族がいるかもしれないという希望を作り出すことができます。
 約束した時間以外は好きなように動けるので、例えば 避難所巡りをしたり、病院巡りをしたりといった行動を気兼ねなくすることもできます。
 いくら手段があっても困るものではありませんから、どのようにするのかを家族しっかりと話し合って、災害にあったときでも素早く会えるようにしておけるとよいですね。

トイレと水と体温維持

 災害が起きて困るのは、最初がトイレ、そして渇きであり、体温を維持するための何らかの仕掛けも必要です。
 困る順番はいろいろ変わりますが、最初にトイレをあげてみます。トイレについては、くみ取り式以外は停電時には使えないですから、大量の人が避難してくる避難所だと、自分で使う携帯トイレは必須の道具です。
 大小兼用のものを持ち歩ければ一番よいのですが、せめて小用だけでも数回分は準備しておきたいですよね。

用途にあわせていろいろな携帯トイレがある。百円均一店でも扱っているので、少なくとも複数個は携行しておきたい。

 そして、トイレが収まると次は喉の渇き対策です。正直なところ被災時に一番大変なのは「飲料に適した水の入手」だと考えています。
 日本は安全な飲料水を意識することなく手に入れることのできる世界でも珍しい国ですが、災害が起きると安全な飲料水を手に入れるのが至難の業となります。
 張り巡らされた水道設備は損壊して止まり、コンビニやスーパーなどで手に入れられる水はあっという間に売り切れ、酒やコーヒー、ジュース類では喉の渇きは収まらず、という困ったことが発生します。
 そうなったとき、あなたならどのようにして安全な飲用水を手に入れますか?
 浄水器を使うのも手ですし、簡易濾過器を作ったり蒸留装置を作るのもありですが、いずれにしてもかなりの労力が必要ですし、できあがった水の安全性が完全に担保はされていないのが実際です。
 いろいろ試行錯誤はしてみるのですが、結局のところ数日分の飲料水はペットボトルなどであらかじめ準備しておいた方が安全で早いなと考えています。
 もちろん、清浄な井戸やわき水で災害後でも安定したきれいな水を手に入れられるようなところなら、そんな準備は不用かもしれません。
 ただ、出かけている先や仕事中に被災したときにどうすればいいのかを考えると、普段持ち歩く鞄にちょっとした水筒やペットボトルを忍ばせておいた方が安心です。

お水のペットボトルはなぜか容器が弱いものが多いので注意。
気をつけないと、カバンの中でべこべこになる。

 水は重たいですから大量に持ち歩くことも難しいですので、200ml~250mlくらいで充分。渇きを凌げればよいのです。
 防災セットによっては、15mlくらいのちょっとした水をレトルト加工した小さな袋に詰めてあるものもありますが飲んだ気がしないという難点もあります。
 普通の水のペットボトルで構わないと思いますが、余裕があれば毎日詰め替えることで水道水でも問題なくできます。
 また、地震を除く災害では大抵の場合準備するための時間が確保できます。その間にポリタンクや鍋、風呂桶などに清潔な水を貯めておくという方法も採れそうです。
子どもや高齢者のいるおうちでは、特にしっかりとした準備をしておく必要があります。
 1人一日3リットル。ここまでは難しいかもしれませんが、せめて喉の渇きを癒やせるくらいの水は普段から身につけておきたいものですね。
 最後に体温維持。これはとにかく濡れないことです。できれば薄手でいいので着替えがあると、濡れたままでいるよりは遙かにましですし、重ね着すれば寒さ対策にもなりますのでいいと思います。
 また、フェイスタオルかバスタオルが一枚あると汗や体についた水気の拭き取り、肩にかけて気休めの防寒などにも使えますので準備しておくといいでしょう。
 そして風に当たらないこと。暑いときには風で涼を取りたくなるものですが、汗をかいた状態で風に吹かれると必要以上に体温が下がってしまい、低体温症になる危険性があります。
 以上、いろいろと書きましたが、普段から持って歩くものとして
1.携帯用トイレ数個
2.飲料水
3.着替え、タオル
を意識しておくと、いざというときにあなたの身を助けてくれますよ。

避難所が対応している災害を確認しておこう

 「災害発生→避難所」が一般的なイメージになりつつありますが、避難所でも災害によって使えたり使えなかったりすることがあることをご存じですか?
 あらゆる災害に対応できる万能な避難所があればいいのですが、そんな場所は実際のところ殆ど無いといっていいでしょう。
 避難所のある場所によって、水没したり土石流に襲われたりする危険があったり、火事や津波に襲われたりする危険など、何らかの問題があることが殆どです。
 そのため、避難所に「避難所として使える災害」を明記することが求められています。
 石西地域では吉賀町がこのルールに従った表示をしており、その避難所の性格がその場でわかるようになっています。

吉賀高校に掲示されている避難所の適用表示。この表示に従えば、土石流や崖崩れ・地すべりのときにはここは避難所として使えないと言うことが一目で分かる。

 益田市と津和野町では「災害避難場所」「避難所」という表示しかされていないため、住んでいる地域の避難所がどのような災害に対応しているのかを役所が作成した防災計画により事前に確認をしておかなければなりません。

津和野町と益田市の避難所表示。どのような災害にその避難所が使えるのかが、この表示ではわからないため、現在の吉賀町のような表示が標準化された。余談だが、益田市→津和野町→吉賀町と避難所表示の変遷が分かるのは面白い。

 例えば、当研究所のある場所の避難所は「高津小学校」と指定されていますが、ここは水害では思い切り水に浸かってしまうことがハザードマップからわかっています。

益田市作成のハザードマップより該当部分を抜き出し。凡例は該当部分のみ抜き出した。これによると高津小学校と高津地区振興センターはともに1.0m未満の水没が予測されている。

 では、実際に防災計画の中の避難所の種類を確認してみましょう。

「平成30年度益田市避難所開設予定場所」より該当部分を抜粋。

 あれ? 「水害」のところにはなぜか「○」がついています。同じ状況の高津地区振興センター(高津公民館)は「水害」の欄が空欄です。なんでだろう???
 周囲が完全に泥地と化した中、1メートル水没している校舎の中に1,000人の避難者が押し合いへし合い・・・。
 あまり考えたくないので、この際行政の計画はあてにしないで自主的に避難先を「高津中学校」に設定することにしました。
 こんな風に、避難計画がきちんと検証されていない場合も想定されますので、市町の避難所開設予定一覧だけを鵜呑みにするのではなく、平時にハザードマップや地形を見ながら「どの災害はどこへ避難する」をあらかじめ決めておくようにしたいですね。
その際には、避難所までの避難経路も複数設定し、あわせて確認しておくようにしましょう。

災害警報の種類について考える

 ここ最近、九州や沖縄地方では大雨が降った場所があり、さまざまな被害が出ているようです。
 大きな被害がないことを願うところですが、平成の最後に政府が大雨や土砂災害についての防災情報や避難情報を5段階にレベル分けするという方針を出したことをご存じでしょうか。
 遅くとも梅雨時期となる6月までには運用を開始したいという話だったのですが、現時点ではまだ情報が確認できず、内閣府防災のホームページからもデータが削除されている状態です。
 ちなみに、予定されている防災気象情報(仮)の表示は次の通りです。

これに対して、今までのは次のとおり。

 平成30年西日本豪雨では、各行政機関が今までにないくらいさまざまな情報を提供していました。
 ところが、マスコミや住民といった情報を受け取る側が、提供される情報の整理ができなくなったため「情報を簡単にわかりやすくしろ」となり、「警戒レベルを作る」という流れになったようです。
 ただ、どのように情報をシンプル化したとしても、最終的には自分で判断するしかないというのは変わりません。
 行政が出す情報は、ピンポイントになってきているとはいえ「○○市○○町」や「○○町○○」といった「小さな面」の情報であり、あなたが考えないといけない「自分の居る場所という点」がどうなるかは自分で判断しなくてはなりません。
 このことを忘れてしまうと「避難勧告が出て避難しようとしたらすでに周りは水没してた」とか「避難の途中で遭難したが家はなんともなかった」といった事態になりかねません。
 自分の居る場所でどのような災害が想定できるのか、そして、どの情報に注意しなくてはいけないのかについて、今のうちに整理をして備えておいた方がよさそうです。

(2019年5月28日追記)
 本文中で情報が消えていると書いていましたが、どうやら当研究所の調査不足だったようで、内閣府から2019年3月29日付で警報のガイドラインに関する改正が出されていました
 ただ、実施時期については「出水期」という規定しか無く、実際にいつから運用されるのかはよくわかりません。
 ガイドラインを見る限りでは、「レベル」と「そう判断している状況」を併記して発表するような形になるようですが、発表の方法は各地方自治体によるようですので、混乱が起きなければいいなと思います。
調査不足だったことをお詫び申し上げます。

(2019年5月29日追記)
 いつから始まるか分からないと昨日書いたところですが、本日5月29日から気象庁でこのレベル表示を開始するという報道が朝のNHKラジオニュースで報道されました。その後報道各紙でも同様の内容が報道されているため、事実だろうと思われます。
気象庁のホームページ内の報道発表資料には伝え方改善の一環として「5/29より土砂災害警戒情報や指定河川洪水予報に相当する警戒レベルを記載して発表する」との記載も確認できました。
 各市町村は準備ができ次第順次導入されるとのことですので、お住まいの地方公共団体の報道発表に注意をしておいておいたほうがよさそうです。
 重ね重ね、情報が不備であったことをお詫びいたします。