災害って何だろう?

 あまりに初歩的なことで申し訳ないのですが、一つ質問です。
 あなたにとって、「災害」とはどんなことでしょうか。
 いろいろと思い浮かぶのではないかと思うのですが、恐らく何らかの形で人が被害を受けているイメージになったのではないでしょうか。
 人が立ち入らないような山の中で起きた土砂崩れや、何も無い岩でできた島が津波に飲まれるようなイメージを思い浮かべた人はいないと思います。
 一般的に言われている災害の定義としては、

自然事象で起きる天変地異+人が受ける被害=災害

となると思います。
 例えば、崖崩れで考えてみます。
 同じ崖崩れでも、人の住む地域で道路の寸断や家屋を巻き込むような崖崩れが起きたら大騒ぎになりますが、山の奥深くで発生した崖崩れは、恐らく誰も気づかないのではないでしょうか。
 ちょっと余談になりますが、今世間で大問題になっている新型コロナウイルス感染症も同じことが言えます。コロナウイルスの変異自体は普段から頻繁に起きているものですが、人間に悪影響を与えるものが発生したので現在のような災害になっているわけです。
 こうして考えてみると、自然現象で起きる天変地異は止めようがありませんが、人が受ける被害を減らせば「災害」にはならないと考えられないでしょうか。
 最初の崖崩れでは、それが起きないように防護壁をつくったり、危ない場所への建築制限をかけたりしているわけですし、新型コロナウイルス感染症については、コロナウイルスの撲滅は不可能ですから、ワクチンを射って人に耐性をつけることで被害を防ごうとしているわけです。
 被害が起きる前になるべく被害の発生を押さえるための備えをすることが、一番簡単で確実な災害対策になると思うのですが、あなたの備えは大丈夫ですか。

【お知らせ】特定非営利活動法人になりました

 このたび、2021年1月15日をもって当石西防災研究所は特定非営利活動法人になりました。
 法人成りして何が変わるわけではないのですが、活動内容に問題ないというお墨付きをいただいたと考え、この団体を維持できるように努力していきたいと思います。
 今後とも個人の方、ご家庭、学校や保育園などの施設、自治会を中心に地道に活動していきたいと考えておりますので、引き続きご協力をよろしくお願いいたします。
 なお、今回の法人成りに伴い、今後このウェブサイトにいくつか変更を行いますので、突然一部のレイアウトやリンクが変更になっているかもしれませんが、驚かれないようにお願いしたいと思います。
 繰り返しのお願いになりますが、石西防災研究所を今後ともよろしくお願いいたします。

意識しないと見えていないもの

先般の大雪のときのことです。
当所の理事長が出勤しようとして車に乗り込み、エンジンをかけるとすぐに声をかけてきました。
曰く「見たことのないランプが点灯している。寒すぎるからに違いない」
寒さでつくランプというとあまり印象になかったので、参考までに見せてもらったのですが、ついていたランプは水温計の低温を示す青ランプ。

水温計のない車には装備されている水温チェックの青ランプ。気づかない人は気づかない。

 このランプ、水温表示を表しているもので、エンジンが暖まるまではいつも点灯しているはずなのですが、理事長は初めて見たと言っていました。
 説明したら、「今まで気づかなかったのかな」と首を傾げていましたが、この車に乗り始めてすでに10年近く。気づいていないことに驚いていました。疑っていましたが、筆者が乗るときには必ず点灯するランプなので、普段見ていても、見えていなかったのだろうなという話になりました。
 災害対策も同じことで、危ない場所や危険な物は隠れているわけではなく、常に目で見ています。
 それでも気づかないのは、今回の水温計ランプと一緒で意識が向いていないからなのでしょう。
 災害に対する事前準備は、その気にならないと必要なものが見えてきません。
 もしも、まだあなたが何も備えていないのであれば、もし災害が起きたらと想定して周囲を見てみて下さい。
 たぶん、今までと見える世界が大きく異なってくると思いますよ。

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました。

 去る1月20日、益田市立高津小学校において1月の防災クラブを開催させていただきました。
 今回は地震にまつわる内容で、地震で倒れる建物の倒れる原因である地面の固さと建物の耐震補強について説明しました。
地面については新潟地震で倒れた県営住宅を例に挙げ、建物がしっかりしていても、地盤をしっかりさせていないと建物が倒れてしまうことをお話しし、プリンを使った弱い地盤の映像を見てもらいました。

実際に使った映像。当研究所ではyoutubeにも動画を投稿しています。

 それから、その後には建物をどうやったら強くできるのかということで、ストローとクリップを使って建物のような四角形を作ってもらい、それを倒れないようにする方法を考えてもらいました。

クリップがしっかり止まらないので組み立てる端から壊れてしまい、結構ストレスが溜まります。

 準備段階ではチームを作ってやる予定だったのですが、新型コロナウイルス感染症の流行が再燃しつつあることから、個人で作ってもらうことに変更しましたが、そうなると器用な子不器用な子が出てきて、もやもやの溜まったクラブ活動になってしまったと反省しています。

三角形だと自立することに気づいて友達同士で組み立てを助け合う姿も見られた。

 最後は建物の面を三角形で構成すると建物が強くなることや、壁全体で支える2×4という工法についても紙を使って説明してみました。
 かなり拙い説明だったので理解してもらえたかどうかはわかりませんが、何かのときに思い出してくれればいいなと思います。
 毎回参加してくれる子ども達と、担当の先生にお礼申し上げます。

「どこでもシェイクアウト」の勧め

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 最近あちらこちらで地震が起きていますが、とっさのときに身を守る行動が取れるかどうかは普段それを意識しているかどうかにかかっています。
 普段の自信対応訓練では「机の下に入る」と習慣付いている方も多いと思いますが、もし道路の上で地震に遭遇したらどうしますか。
 道路の上に机はありません。どのような行動を取ると身の安全の確保をすることができるでしょうか。
 それを身につけるために、「どこでもシェイクアウト」をやってみることをお勧めします。
 「シェイクアウト」とは、2008年にアメリカで始まったとされる地震防災訓練のことで、「地震を振り払う」という意味で作られた造語だそうです。
 内容は地震の際に身を守る行動3原則を1分間で行うもので、具体的なアクションは

1.姿勢を低くする

2.頭や体を守る

3.揺れがおさまるまでじっとしている

という流れになっています。
 シェイクアウト訓練自体は多くの人が同時に短時間でやる訓練のようですが、別に一人でやってはいけないというルールはありません。
 例えば普段の生活の中で、「今ここで地震が起きたら、身を守る行動3原則をどのように取ればいいのか」を考え、実際に体を動かしてみることでできるかどうかを判断し、どうすればより身の安全な確保できるのかについて考えておけば、いざというときに考えずに身を守る行動を取ることができます。
 外出先や、ふとしたときにやってみることで、身を守るための行動の経験値が溜まっていきますから、いざというときに身を守る行動が取りやすくなります。
 周辺の状況や置かれているもの、人の流れなどで安全な場所や身を守る行動はいろいろと変わっていきますので、あらゆるところで一度やってみて、実際にそう動くとどうなるのかについて考えてみてください。
 自信が無い場合には、最初は防災をよく知っている人と一緒にやってみるといいと思います。
 自分では安全が確保できたと思っていても、窓ガラスやつり天井が落ちてきたり、ものが飛んでくる可能性があったりと、意外なものが凶器になることに気がつけると思います。
 もちろん当研究所でもシェイクアウト訓練のお手伝いをすることはできますので、ご希望があればお問い合わせください。

待つのはつらい

 災害時に、その災害がいつまで続くのかがわからないのは非常に不安なものです。災害後において受け身でいることは非常につらいことです。
 例えば大規模な台風が通過している地域では、テレビやラジオなどをつけっぱなしにして、いつ頃その場所が台風の勢力圏を抜けるのかを気にしているのではないでしょうか。
 情報収集する手段を持たず、ひたすらじっとしているところを想像してみてください。なんともいえない不安に襲われているのではないでしょうか。
 それでも、災害はいつか終わりが必ずあるからじっとしていることができます。
 でも、もし災害でいつまで続くのかわからない状態になっているとしたら、人の行動はどう変わるでしょうか。
 例えば、現在新型コロナウイルス感染症対策として外出自粛が呼びかけられています。一応期限は設定されていますが、これはいつまで続くのか、具体的な期日は誰にも予測できていません。
 春先に初めて非常事態宣言が出されたとき、いつまで続くのだろうかという言い表せない不安が多くの人の心の中に居続けたのではないでしょうか。
 その後、夏に終息したと判断され、政府は経済活性化としてGoToキャンペーンを導入しましたが、これによって「もう待たなくても大丈夫」という安心感が発生しました。
 現在また非常事態宣言が出されて外出自粛が呼びかけられても反応が鈍いのは、再び期限がわからないままに待つ事への不安が大きいと思います。
 おまけにこの感染症、感染していても発症しないケースもかなりあり、それが事態をさらにややこしくしています。
 「コロナ疲れ」と言われていますが、待つことに疲れてしまって耐えられなった結果が現在の蔓延状態を生み出しているのではないかと感じています。
 繰り返しになりますが、先の見えない待ちは非常に不安ですし、その不安は疲労を生み出します。
 くたびれきってしまうと、同じ疲労を味わうのがいやな人達は言うことを聞かなくなります。
 そうならないためにも、しっかりとした目処をあらかじめ明確にしておくことが大切なのではないかという気がしています。

新型コロナだけじゃないウイルス対策

 新型コロナウイルス感染症対策で世の中は大騒ぎしていますが、通常の下痢嘔吐の風邪も流行ってきているようです。
 どうもアルコール消毒万能主義みたいな感じで、アルコール消毒さえしていれば大丈夫と勘違いされている向きも多いようですが、ウイルス対策の基本は石けんでの手洗いと充分な流水での洗浄です。
 それができていないと、アルコール耐性のあるウイルス対策はできていないということになり、違う風邪が流行るということになります。
 下痢嘔吐を引き起こすノロウイルスにはアルコール耐性を持ったものもいるようで、新型コロナウイルス感染症が流行る以前は「ノロウイルスはハイターなどの塩素系漂白剤で消毒する」ということがいわれていましたが、「しっかりとした手洗い=アルコール消毒」になってしまっていることで、ノロウイルスが流行するかもしれません。
 だじゃれになりますが、「吐いたらハイターで消毒」と覚えておいてくださいね。
 ちなみに、ハイターには塩素系漂白剤のハイターと、酸素系漂白剤のワイドハイターがあるので、表示をきちんと見て「塩素系漂白剤」の方を使ってください。
 また、ハイターでなくても塩素系漂白剤であればしっかりと消毒できますので、誤解のないようにお願いします。
消毒液の作り方は以下のとおりですが、保管期間が長いと作り方どおりに作っても充分な濃度になっていない可能性がありますのでご注意ください。


花王さんのウェブサイトではそのあたりもふまえた花王の塩素系漂白剤での消毒液の作り方が出ていますので、そちらも参考にしていただければと思います。

塩素系漂白剤で消毒液を作る方法(花王のウェブサイトへ移動します)

母乳と乳児用ミルク

液体ミルクの一例。消費期限や内容量、味などがかなり異なるので普段使わない人は事前に試しておいた方がいい。

 災害発生後、母乳で子育てをしている方の中には被災したという精神的なストレスから母乳が一時的に止まってしまうことがあります。
 また、摂取する水分量が少なくなると、母乳が詰まりやすくなって出にくくなることもあります。
 そんなときに備えて、平時に乳児用ミルクが飲めるかどうか、どこのメーカーのどんな種類が好きなのかを試しておくことをお勧めします。
 母乳育ちの子に限りませんが、乳児も自分の好きな味や嫌いな味があります。大人でも食べ物の好き嫌いがあるのですから、乳児も好き嫌いがあって当たり前です。
 各メーカー、それぞれに特色のある乳児用ミルクを販売していて、味もかなり違いますのでお子さんの好みの味を見つけておくようにしましょう。
 また、水が手に入らないときには液体ミルクを使用することがあるかもしれません。災害支援物資として、乳児用ミルクは最初液体ミルクが送られてくることが多いようなので、各社の液体ミルクを手に入る範囲で試しておくことも忘れないでください。
 災害時だからこそ、母乳でも乳児用ミルクでも乳児にしっかりと飲んでもらって、普段と異なる環境のなかでもしっかりと育ってもらうことが重要となります。
 また、離乳食も同様で、普段手作りのおうちでも避難所では手作りすることは難しいですから、平時に市販の離乳食を試してみることで、被災時でも食べてくれる離乳食を準備することができます。
 離乳食もメーカーによって味が全く異なるので、ぜひお子さんの好みの味を見つけてください。
 筆者の家でも、離乳食の時期にはさまざまなメーカーのものを試してみましたが、よく食べるもの、まったく食べないものがいろいろとあってとても面白かったのを覚えています。
 乳幼児は成長段階に応じて、飲むもの食べるものの種類や量が変わっていきますから、一度決めて終わりではなく、その都度いろいろと試しておくことをお勧めします。

食べられるもの幅とアレルギー

最近の非常食にはアレルギー表示のある物が多い。

 災害が起きると、場合によっては食事ががらりと変わってしまうことがあります。
自分で自分の食べ物をうまく確保できている場合にはいいのですが、そうで無い場合には避難所や炊き出しの配給などに頼ることになります。
 ただ、配給に頼ることになると、アレルギー源が入っているかどうかがわからなかったり、普段の自分の食生活で出てこないような食べ物が登場することもあり、人によってはそれが非常に不安に感じる方もいると思います。
 それを回避するには、アレルギー源をどれくらい摂取することが可能なのかを知っておくことも大切なことです。
 アレルギー対応食は、非常食や災害食などの保存食では増えてきてはいますが、まず量を確保しなければいけない配給食ではそこまで考えられていないことも多いですから、万が一アレルギー源の入った食事を摂取したとして、どれくらいまでなら大丈夫なのかを知っておくことは自分の命を守ることに繋がります。
 非常時になって一か八かで試すのは非常に危険ですので、平時にアレルギーの薬をきちんと確保した上で試してみてください。
 また、普段から食べている食事の幅を広げておくことも大切です。平時にいろいろなものを食べていると、知らない食べ物というのは減りますし、その食べ物にアレルギー源が入っているかどうかもある程度予測ができるようになります。
 初めてだらけで不安いっぱいの避難所生活の中で一つ不安を減らせるのは、心理的に非常に大きな事だと思います。
 どのようなアレルギーがあってどのような食べ物をどれくらい摂取すると危険なのかについては、たとえ子どもであっても自分で説明できるようにしておくようにしましょう。
 どのような食べ物アレルギーを持っているのかは、見た目ではわかりません。わかっているアレルギー減を説明できれば、配給をもらう側だけでなく配給する側にとっても無用のストレスを減らせることになります
 最後に、さまざまな理由で自分のアレルギー源が説明できない方もいらっしゃいます。そんな人は自分の「パーソナルカード」を配給者に確認してもらうことでアレルギー源を回避することが可能になると思います。
 いろいろな食べ物を食べておくことと、自分のアレルギー源や摂取可能量を知っておくこと。
 それが被災後のあなたの命を守ります。

自分の安全は誰が守る?

 災害には、地震のようにいきなり発生するものと、水害や台風のように起こることがある程度予測できる災害があります。
 そして、予測ができる災害については行政機関が状況に応じて避難勧告や避難指示を出すわけですが、これらが出たからといって必ずそのエリアに被害が出るというものでもありません。
 ただ、状況が収まるとマスメディアはこぞって行政機関の出す避難勧告や避難指示についてあら探しをします。
 災害の検証という点では正しいのかもしれませんが、結果的に被害が出なかった状況をさも予測できたかのような書きぶりで批判するのはいかがなものかと感じています。
 行政機関が避難指示や避難勧告を出し渋る理由は、避難をさせておいて何もなければ苦情を申し立てる人がそれなりに発生し、また、マスメディアがこぞって批判するのが原因です。
 逆に考えれば避難を自分で判断できて、被害がなかったことを喜べる人ばかりになれば、行政機関は冷静に判断することができるということです。
 誤解されていることが多いのですが、自分の命は自分が守るのは生きていくための基本です。判断を他人に委ねてしまうことはあってはならないのです。
 これはその人が生活要支援者だろうが健常者だろうが、老若男女関係ない基本的なことです。
 何かあったとき、自分の命はどうやったら守ることができるのかをしっかりと考え、起こり得るであろう「何か」に備えておくこと。それが「自助」です。
 もちろん、命を守るための支援が必要な場合もあるでしょうから、必要な支援をお願いしておくことが「共助」です。
 生き残り、命を守ることができて初めて行政機関の支援である「公助」の出番なのです。
 もちろん行政機関が出す避難勧告や避難指示を避難の判断とすることは問題ありませんが、最終的になんの被害もなく不要な行動だったとしてもそれは結果論です。避難しなければならない事象は予測されていて避難する決めたのは自分なのですから、避難勧告や避難指示を出した行政機関を責めるのは筋が違います。
 自分の安全は自分で守ってください。
 そのための判断基準の一つとしての避難勧告や避難指示だということは忘れないようにしたいですね。