水の災害で持って避難してほしいもの

 大雨による水害や台風、高潮など水の災害ではいかに安全な高台に避難するかが生死をわけるといっても過言ではないと思います。
 自宅が完全に水没してしまう場所や平屋建てなどにお住まいの場合には、場合によっては雨と水の中をかき分けて安全な場所に避難するような場合も出てくると思います。
 その際、避難先に絶対に持っていってほしいものをいくつかご紹介しておきます。
 これらは安全な場所に避難が完了して初めて役に立つものですが、これがないとせっかく安全を確保できたのにその後に起きてくる問題で死んでしまうことにもなりかねません。

1.乾いた大きなタオル

 避難のタイミングでは全身がずぶ濡れになっていることがあると思います。その時に一番怖いのは水分蒸発で身体の体温を持っていかれてしまうこと。
 たかが濡れているだけと思われるかもしれませんが、長時間にわたって濡れた状態でいると、身体の体温が蒸発する水によって奪われて低体温症を引き起こすことになります。
 安全が確保されたなら、まずは乾いた大きなタオルで全身をしっかり拭くことが非常に大切です。

2.乾いた長袖長ズボンへの着替え

 身体を拭き終わったら、速やかに乾いた服に着替えることが必要です。
 プール也海などで身体が冷え切ったときのことを考えていただければわかりやすいと思いますが、まずは身体の水気を拭き取ること、そして乾いた服に着替えること。
 これだけで身体がずいぶんと温まったのではないでしょうか。
 大雨の中での避難でも一緒で、ずぶ濡れになったらまずは水気を拭き取ること.次に乾いた服に着替えることが必要です。
 手足の先まで暖かい血を循環させてやる必要がありますから、まずは長袖長ズボンで身体を温めることを意識してください。
 女性の場合にはスカートでもいいのですが、できるだけ暖かい空気の層を身体に近いところに作ってやった方がいいですので、スカートを着用するのであれば、その下に暖まるまででいいので長ズボンを着用するようにしてください。

3.携帯カイロ

 冷えている身体を外部からの熱で温めることは命を守るための生命線になります。
 携帯カイロは、身体を温めるだけでは無く、後述する飲料水を人肌程度に温めたり、非常食を暖めたりと、さまざまなものを暖めるのに使うことが可能です。
 小さくて身体等に貼り付けることができるようになっているものを数個、持っていくようにしてください。

3.飲料水

 必死になって避難をするときには気がつかないことが多いのですが、さまざまな理由から身体から水分が結構消費されていることが多いです。
 そのため飲み水を準備しておきましょう。スポーツドリンクは糖分が高く、避難直後に飲むのであればいいのですが落ち着いてくると余計な糖分がのどの渇きを産むことになってしまいます。また、紅茶やコーヒーは利尿作用が高いですので、飲むと逆に脱水症状を起こすこともありえます。
 そのままで飲め、飲むこと以外にもいろいろと使える飲料水を準備しておきましょう。政府の推奨は一人一日二リットルですが、ご自身の体力や水を飲む量などを考えて、持って移動できるくらいの量にしておいてください。

4.非常食

 水害で避難した場合、すぐに水が引くことはあまりなく、少なくても半日以上は避難を続ける必要があります。
 どうしてもお腹がすいてきますから、何らかのお腹に貯まる非常食を準備しておきましょう。
 アルファ米やシリアルバーだけでなく、パンやインスタント食品でも構いません。
 ただ、水でも戻せるものであることが大切です。二食分くらいあれば、とりあえずはひもじい思いをしなくてすむと思います。

5.携帯ラジオ

 水害発生時には状況が刻一刻と変化していきます。リアルタイムの情報は難しいかもしれませんが、耳だけで聞き取れて避難中でも動きを止めなくてすむ携帯ラジオはぜひ準備しておいてください。
 携帯テレビやスマートフォンではどうしても画面を確認するために動きを止める必要があるので、避難行動中は安全な場所以外で画面を確認するのは止めるようにしましょう。

6.エマージェンシーシート

 名称だけではなんのことかわからない人も多いと思いますが、銀色や金色の薄い素材でできていて身体に巻き付けることができる道具だと考えてくだされば結構です。
 これは断熱効果がありますので、首から下の身体を覆うことができれば、身体の熱を逃がさずに暖かく過ごせる優れものの道具です。
 本来は空気を貯め込めて床に敷いても上にかけても包まれても大丈夫な毛布をお勧めしたいのですが、濡れてしまうと役に立たないという致命的な問題があるため、軽くて保温力があるエマージェンシーシートを持っていくことをお勧めします。

7.新聞紙

 新聞紙は水気を取ったり暖を取ったりするのに非常に役立つアイテムです。
 また、床に敷けば簡単な断熱材としてもクッション材としても機能してくれます。
一日分から二日分あると、いろいろなことに使えて非常に便利です。

 他にもさまざまなアイテムがあれば避難した先での生活は非常に快適になっていきますが、とりあえず今書いたものがあれば、避難した先でも安全を確保することはできると思います。
 ここで書いたさまざまなアイテムは、水害に限らずさまざまな災害でもきっと役に立つことは間違いないです。
 非常用持ち出し袋の中身、人によっていろいろと異なるのは当然ですが、何に使うのかをしっかりと考えた上で準備しておきましょう。

「災害時に便利なアプリとWEBサイト」を紹介するリーフレットのご紹介

リーフレットで紹介されているアプリの一つ「Safety tips」の日本語版の画面。
天気や避難所案内だけで無く、災害とは何かを学べる「事前学習」や
簡単なコミュニケーションができるコミュニケーションボードもついていて便利。


 他の国から来て地域に住んでいる人が、地域活動に参加されることも増えてきました。日本に住む以上さまざまな災害と無縁ではいられないのですが、顔見知りになったとはいっても、お互いの意思疎通というのは、以前ご紹介した「voicetTra」などの翻訳ソフトを使っても、なかなか難しいところもあります
 とはいえ、災害時などの緊急事態には、どのような情報をどこで見たらいいのかくらいはきちんと伝えておきたいですよね。
 このたび内閣府防災が災害時に情報を集めることのできるスマートフォンアプリとWEBサイトを紹介するリーフレットを作成しました。
 内容は、本当にアプリとWEBサイトの紹介なのですが、その国の方が使っている言語があれば、このリーフレットを渡して説明していくと理解がしやすくなるのではないかと思います。
 また、災害に対する備えが勉強できたり、コミュニケーションボードが搭載されているアプリもあって、いざというときに途方に暮れなくてもすむかなと思えるくらいのないようにはなっています。
 どこの人であれ、災害なんかで死んでいい人はいません。情報がうまく伝わらなくて逃げ遅れてしまったと言うことが起きないように、地元の集まりのときなどに、こういったリーフレットを配って、地域の安全につなげていただければと考えます。

災害時に便利なアプリとWEBサイト(多言語)」(内閣府防災情報のページに移動します)

炊き出しで気をつけること

 大規模な災害が起きると、さまざまな場所で炊き出しが行われます。
 被災者同士が材料を持ち寄ったり、ボランティアの方が避難所まで来て調理したり、さまざまな形はありますが、行政からの配給弁当はパンか冷たいお弁当が多いですから、温かい食事ができるのは非常にありがたいことです。
 ただ、その時には衛生管理を徹底することがいつも以上に大事になりますので気をつけておいてください。
 例えば、水道が損傷して潤沢に水が使えない状態であるなら、素手で食材を触ることは厳禁です。手には普段からさまざまな雑菌がついていることはご存じだと思いますが、満足に手洗いのできない状態だと間違いなく汚れた状態になっています。アルコール消毒すればいいとお考えの方もいると思いますが、あれはあくまでも普段の手の状態がある程度衛生的であることが前提ですので、水と石けんによる手洗いの補助だと考えてください。
 素手で食材を触らないためには、使い捨ての手袋を着用すればいい話なので、自治会などで準備する災害セットの中には必ず使い捨て手袋を加えておくようにしてください。そして、使い捨て手袋はゴム製でない方が安全です。これはゴム製が食材に悪さをするわけではなく、ゴムアレルギーの方がいることを想定する必要があるからです。
ゴムアレルギーの方はゴムに接触すると赤くなって腫れたりかぶれたようになったりします。災害後には病院も稼働できていないことが殆どですから、抗アレルギー薬も手に入りません。
 非常時にはそういったことに意識が向きにくいですから、手袋はゴム製以外、例えばポリプロピレンなどの素材のものを用意しておく方がいいです。
 次に食材の温度管理。肉や魚は常温だと腐敗が進みます。クーラーボックスに入っているからと言っても安心はできません。しっかりとしたクーラーボックスにしっかりと冷やせるだけの保冷剤を入れ、必要時以外は開け閉めせず、炊き出しで材料を全部使い切るようにしてください。
 また、生肉や生魚を使った道具は雑菌に汚染されていると考えて、しっかりと洗浄もしくは処分を行ってください。充分な消毒ができれば良いのですが、そういった環境でない場合も多いと思いますので、使い捨ての割り箸などを使って利用後は処分するようにした方が安全です。

炊き出しの基本は素手では触らないことと食べ物全てに火を通すこと。


 最後に、出来上がったらすぐに食べること。暖かいものであれば2時間以内を目安に食べきるようにしてください。食べられなかったものは、もったいないですが全て破棄をしましょう。
 もし食中毒になったら助からないかもしれないと考えて、間違っても食中毒が起きないような衛生管理をするようにしましょう。
 なお、発生した生ゴミは液体と固体を分離した上で固体はビニール袋などでしっかりと密閉してゴミ袋へ、液体は猫の砂や吸水ポリマーなどに吸収させた上で、ビニール袋に密閉してやはりゴミ袋へいれるようにしてください。
 生ゴミは固体も液体もハエやゴキブリ等が発生する格好の温床となりますので、処分までしっかりと衛生管理をすることが大切です。
 被災地では食中毒を出すと死者が出てしまうかもしれません。そうならないためにも、衛生管理をしっかりと行って、安全に暖かくておいしいものが食べられるようにしておきましょう。

避難所の幻想

 あなたは災害時の避難所というとどのようなイメージを持っていますか。
 身一つで避難すれば、食事、就寝、快適な居住空間が確保されて少々の不便はあるにしても、それまでとさほど変わらない生活を送れる場所だと思っていますか。
 それとも、身一つで避難したら食事も寝るところもなく、避難所からはあぶれてしまって空腹を抱えて建物の犬走りでうずくまっていることもありうる場所だと思っていますか。
 この二つは極端な例ですが、大規模な災害になると、多くの場合は後者の状態になって非常につらい思いをすることになることが殆どです。
 そのため、車中泊や損壊した自宅で無理矢理生活するような人達が大勢出てきます。
 避難所に避難しても、よほど事前準備のよい自治体で無い限りは、避難所に必要な資機材は置いていません。殆どの場合、その避難所を運営する地元の自治会や自主防災組織が防災倉庫に準備していたものが供出されることになります。
 自治体は住民に対して平等であることが望まれていますが、運営が自治体でない場合にはあらかじめの取り決めで資機材が運用されます。その時、あなたは助けてもらえる関係を作っているでしょうか。
 避難所は基本的には避難する場所のみを提供しています。避難して生活するためのさまざまなアイテムは自分で持ち込まなければならないのです。
 国も地方自治体も、全ての住民に対して支援できるだけの物資は持ち合わせていません。だから事前にしっかりと準備をしておくように言い続けているのです。
 安全が確保されたなら、基本は自宅避難。旅行者や家が全壊したり道路が通れなかったりといった理由で家に入れない人達が避難所で生活するのが一番合理的な避難方法です。
 繰り返しますが、避難所には自分の命を守るための資機材は置いていません。それを忘れずに、自分自身あるいは自治会や自主防災組織などで資機材の準備をするようにしてください。

ワセリンは救急箱の万能選手

普通に薬局やドラッグストアで売っている白色ワセリン。
無臭で白っぽい半透明な感じ。かなりべたべたはする。

 ちょっと大げさな書き方になってしまいましたが、今回は非常用持ち出し袋に入れるコンパクトな救急ボックスに入れておいた方がいいものの一つとして、ワセリンをご紹介したいと思います。
 ワセリンにもさまざまなタイプがあるようですが、今回は日本薬局方に記載されている白色ワセリンで考えてみたいと思います。

 薬ですので、側面には効能効果が書かれています。「手足のヒビ、アカギレ、皮膚のあれ、その他皮膚の保護」が効果効能、そして使い方である用量用法は「そのまま患部に薄く塗ってください」とあります。
 皮膚のあれ、ということなので、最近よく聞くマスクかぶれ対策にも使うことができます。ポイントは、マスク使用後にできるだけ早くしっかりと石けんで顔を洗ってから塗っておくこと。保湿効果があるので、カサカサになったお肌を守ってくれるようです。ただ、塗ったままマスクをつけるとべたべたになって貼り付いて困ったことになるので、マスクをつける前にも顔をしっかりと石けんで洗うことに注意してください。
 べたべたで思い出しましたが、花粉の舞う時期に鼻の穴の入り口に薄く塗っておくと花粉症が軽くなる気がします。たぶん花粉がワセリンのべたべたにくっつくからだと思うのですが、今シーズンは新型コロナウイルスのおかげで一番欲しい時期にマスクが手に入らなかったので、一時これでしのいでいました。
 また、ワセリンは皮膚を保護する作用があるので、ちょっとした傷ややけどの時に塗っておいても保護効果が期待できます。ワセリンの効果は乾燥させないことなので、これを塗ってから絆創膏を貼ると、ハイドロコロイド絆創膏のような働きもしてくれます。ワセリンを塗った上でラップを巻くとよりよいようですが、あくまでも緊急時の対応と考えておけばいいと思います。
 肌への刺激が少ないので、唇が切れたときにもリップクリーム代わりに塗っておくこともできますし、避難所等で乾燥していたら、薄くのばして肌に塗ってやることで肌の乾燥を防ぐこともできます。特に乳幼児や高齢者はそのあたりも考えて準備しておくことをお勧めします。
 他にも、成分がほぼ油なので、緊急時には芯を差し込めばロウソクの代わりに使うこともできますし、脱脂綿やティッシュペーパーに浸せば着火剤としても使えます。
 値段も安く、保管期限も長いので、防災アイテムとしても及第点。
 あなたの救急箱に、ぜひワセリンも加えてやってください。

 余談ですが、効果効能に書いていないことを試す場合には、あくまでも自己責任でお願いします。著者はいろいろとやってみましたが、あくまでも個人の感想であることと、まねてトラブルが発生しても責任は負いかねることをここに明記しておきます。

防災で遊ぼう

 防災に限らず、どんなことでも楽しく体験できなければ身につくことはないと思います。例えば、講演会などで役に立ちそうな話を聞いても「いい話を聞いたわぁ~」で終わってしまうことも多いのではないでしょうか。
 阪神淡路大震災から後、防災も楽しく体験して身につけていこうという空気が出てきて、さまざまなゲームが登場し、それらを通して災害対策に関する学習ができるようになってきています。
 例えば、PS4やSwitchなどでは「絶体絶命都市」という災害体験のアドベンチャーゲームがありますし、双六やカードゲーム、ボードゲームなどでの災害対策ゲームがあり、小さなお子様から大人まで、楽しみながら知識を身につけることができるソフトがたくさんあります。
 普段なかなか意識しないので目につかないことも多いのですが、インターネット上では無料でダウンロードして遊べるゲームがいろいろとありますので、家族や友人達と一緒にわいわいと遊んでみてはいかがでしょうか。
 思ったよりも子どもの方が成績がよかったりしてびっくりすることがあるかもしれませんよ。

段ボールベッドと病気の予防

段ボールベッドの構造は簡単で、たくさんの箱の上に座面を載せるとできあがる。
段ボールの強度をどう出すのかが問題。

 避難所で必要な資材の一つに段ボールベッドがあります。
 被害を受けた地域などでは非常に必要とされているのですが、供給体制がさほどしっかりとしていないため、発災後に頼んでも届くのは数ヶ月後といった状態になっています。
 事前にきちんと準備しておけばいいのですが、値段と「たかが段ボール」という感覚があるのでしょうか、なかなか普及が進んでいない現状があります。
 では、発災後にどうして段ボールベッドの需要が出てくるのでしょうか。
 これは衛生管理と連動している話になるのですが、不特定多数の出入りがある場所では細かいほこりやゴミが常に舞っている状態です。避難施設が出入口で土足禁止になっていればそこまでひどくはありませんが、再度の避難を考えて土足のまま避難所で生活する場合もありますから、そうなると砂やゴミで床は常に汚れている状態になります。
そんな状態で床に寝るとどうなるか。
 空気中に舞っているさまざまな細かなゴミは最終的には床に落ちます。そしてそこで寝ている人がそれらのゴミを吸い込むと、ゴミによる肺炎やゴミに付着したウイルスや菌による感染症の原因となってしまいます。
 床面から数cmでも高い位置で寝られるとこういった病気を劇的に防ぐことができることから、高さを稼ぐために段ボールベッドが必要となるのです。
 また、段ボールベッドはその構造上中に避難者の生活物資をいろいろといれることができますから、狭いスペースを効率的に活用する意味でも、ないと不便なアイテムです。
 さらに言えば、寝る場所から立ち上がるのにベッドからの起き上がりだと、身体への負担が少ないので、高齢者の方の寝たきりを防ぐ効果も期待できます。
 段ボールベッドは、同じサイズの箱の数があれば専用キットがなくても作ることができます。段ボールの強度を出すための工夫が必要となりますが、作り方を知っておくことは無意味ではないと思います。
 また、自宅で避難生活をする場合でも、床にそのまま寝ることができない場合もあると思いますから、そういった意味でも準備しておいて損はないと思います。
 もし段ボールベッドが手に入らず、段ボールもないようであれば、床から10cm以上の高さが確保できるような就寝スペースの構造を考えてみてください。
 雑誌を積み重ねたり、机やいすを並べたり、その場にあるもので工夫すれば、数は足りないと思いますがいくつかを作ることは可能だと思います。
 床に直に寝なくても済むように、いざというときにどうしたらいいかを考えてみてくださいね。

雨の中の避難に関する一考察

避難の時の格好の一つ。

梅雨に入り雨が降ると、心配するのは大雨です。
雨が降っているなかでの避難で気をつけるとしたらどんなことかについて、少し考えてみたいと思います。

1.雨具

 雨の中を避難するとしたら、まず最初に必要なのは雨具です。
 傘、合羽がその代表になると思いますが、避難するくらいの雨が降っているのであれば、道路がいつ冠水してもおかしくありません。また、流れてくる水で足を取られるかもしれませんので、早めの避難以外では傘は使わずに両手を空けておいた方が安全です。
 まだしっかりと歩けない乳幼児をつれて避難するときは、できるだけ乳幼児が濡れないようにポンチョの中で抱っこやおんぶをする、クーファンの上から雨よけをかぶせるなど、ちょっとした工夫が必要となります。
 また、非常用持ち出し袋は避難時には両手を空けるという原則がありますので、基本的にはリュックサックだと思いますから、着込む合羽によってリュックサックも雨対策をしておかないといけません。
 完全防水のリュックなら大丈夫ですが、そうでない場合には、ザックカバーをかけるか、あるいは雨具をポンチョタイプにしてリュックの上にかぶせるかということになるでしょう。
 撥水程度の防水では、豪雨だと雨が縫い目などからザックの中に浸透しますので注意が必要です。
 あと、頭から垂れてくる水が目に入るとうっとうしいので、つば付きの帽子も準備しておきましょう。

2.足下

 雨の中の移動では、基本的に長靴を使う人が多いと思いますが、道路が冠水しそうな状況での避難では長靴の中に水が入って歩けなくなる可能性がありますので、できれば止めた方が無難です。
 マリンシューズが一番いいのですが靴底の厚いものは少ないので、運動靴を履いて避難するようにしてください。
 非常用持ち出し袋には換えの靴下や換えの靴を準備しておいて、避難先に到着したら冷える前に履き替えるようにします。

3.濡れ対策

 大雨の中の避難になると、合羽を着ていてもどうしても濡れてしまいます。
 そのままだと風邪を引いてしまうので、非常用持ち出し袋には必ず吸水性のいいタオルと着替えを入れておいてください。
 濡れると身体が冷えますから、羽織れるものも準備しておいた方が安心です。
 寒さに弱い方は、非常用持ち出し袋の中に使い捨てカイロを準備しておいてもいいかもしれません。
 また、着替えやタオル、使い捨てカイロなどは濡れないように密封できるビニール袋にいれておくことをお勧めします。

4.暖を取る

 避難先でなにがしかの暖かなものが飲食できればいいのですが、そうでない場合も多いと思います。
 そのため、非常用持ち出し袋には携帯コンロや発熱剤など、お湯を沸かせる道具と飲料用の水、それにほうじ茶を準備しておきます。
 避難先でお湯を沸かし、ほうじ茶を飲むことで身体がしっかりと温まります。

 暑い時期でも、雨でずぶ濡れになると身体は芯から冷えてしまいます。
 特に乳幼児や高齢者、身体の弱い方などは冷えは大敵ですので、濡れるのは仕方が無いとして、安全な場所へ移動したら、可能な限り早く水気を拭き取って暖がとれるようにしてください。
 着替えた後、お茶を飲んでも寒いようなら、湯たんぽや使い捨てカイロを身につけ、エマージェンシーブランケットや毛布にくるまって身体から熱が逃げるのを可能な限り防ぐようにしてください。
 何もないに超したことはありませんが、念のためにお手元の非常用持ち出し袋の中身が水に濡れない水害対応になっているかどうかを確認してみてくださいね。

眼鏡と入れ歯

 夜中に突然災害が起きたとしたら、あなたは平静でいることができますか。
 寝込みを襲われるとどうしても気が動転してしまうものですが、なかでも避難時によく忘れてしまうものに眼鏡と入れ歯があります。
 どちらも必要な人が日常生活を送るのに欠かせないアイテムなのですが、壊れたり無くなったりすると、再度手に入れるまでに非常に時間がかかるものです。
 非常用持ち出し袋には、必ずスペアを入れておくようにしてください。
 とはいえ、眼鏡はともかく入れ歯は普段使っていないと口の中にあわなくなっていくものですから、どうしても普段使いのものを持って逃げるしかありません。
 洗浄液につけた状態で密封できる容器に入れ、身の回りに置いておくくらいしか方法が考えつきませんが、避難の際には絶対に忘れないようにしてください。
 口から食事がとれないと、人間はだんだんと弱っていきます。気力や体力を維持するためには、どうしても口で咀嚼して食べる行為が必要となりますから、入れ歯の管理には充分に気をつけてくださいね。

筆記具とメモ帳

 災害発生後にさまざまなことを記入しておく備忘録として用意しておきたいのがメモ帳です。
 メモ帳と一口に言っても、大きいの、小さいの。耐水性のあるもの、字が書きやすいものなどさまざまですが、伝言メモや張り紙といったことにも使うことを考えると、耐水性のあるものがよさそうです。
 では筆記具はどうするかというと、やはり耐水性のことは重要ですが、それ以上に書いたものがにじんだりかすれたりせずきちんと読み取れる状態になっていることが大切です。
 その条件で考えると、鉛筆、油性ペン、ダーマトグラフ、クレヨンといったところが候補になります。
 それぞれ一長一短あるので一つあればいいということにはならないと思いますが、メモを取るのなら鉛筆がいいでしょうし、油性ペンならガラス以外のものなら殆どしっかりと書き込むことができ、なかなか消えないのが強みです。
 ダーマトグラフやクレヨンはガラスなど油性ペンが苦手なところにもしっかり書けますし、不要になればすぐ消せるという強みがあります。
 筆記具とメモ帳、案外と使うことが多いので、非常用持ち出し袋だけでなく、防災ポーチなどにもいくつか種類を変えて揃えておくといいのではないでしょうか。
 ちなみに筆者の非常用持ち出し袋には、キャップ付き鉛筆と油性ペン、それにダーマトグラフが入れてありますが、先日使おうとしたら鉛筆の芯が折れていました。
 鉛筆を持って歩くときには、鉛筆削りなどの鉛筆が削れる道具もわすれてはいけないなと感じました。