普通のポリ袋と調理用ポリ袋の違い

袋調理の代名詞とも言えるアイラップ(出典:岩谷マテリアルのウェブサイト)

 よく災害時の調理法としてビニール袋を使った調理法が紹介されています。
 実際にはビニールでは無くてポリエチレンが素材になっているのですが、このビニール袋クッキングでは少しだけ注意が必要なことがあります。
 具材を入れて揉んだり保存に使ったりするぶんにはどんなポリ袋でもいいのですが、加熱調理に使うときには必ず調理用ポリ袋を使うようにしてください。
 普通のポリ袋は低密度ポリエチレン袋といい、袋は70度から90度くらいまでしか耐えられません。沸騰しているお湯につけると溶けたり破れたりすることがあるので、せっかくの料理が全部台無しになってしまいます。

上限の温度記載がないものは、基本的に低密度ポリエチレン袋と考えてよい。

 加熱調理に使えるのは、高密度ポリエチレン袋です。この袋は耐熱性があるため、沸騰しているお湯の中につけても破れる心配がありません。
 ほんのちょっとした違いなのですが、非常用持ち出し袋に備えるときには耐熱温度をしっかりと確認しておきましょう。
 ちなみに、ポリ袋は耐油性はそこまでではありません。
 もしカレーなど油分の高いものを作ろうとしたら低密度、高密度問わずにポリ袋が溶けるかもしれませんのでご注意を。

蓄光シールを上手に使おう

 夜、なんらかの事情で突然停電すると、途端にあたりは真っ暗になってしまいます。
 真っ暗なままだと不安になりますから、灯りを準備しなくてはいけないわけですが、さて、あなたが準備してあるはずの懐中電灯はどこにおいてありますか。携帯電話はどこですか。そして、もし逃げなければいけないとき、避難路がちゃんとわかりますか。
 そういったときに備えて、必要なアイテムや避難経路には蓄光シールを貼っておくことをお勧めします。
 決して強い光ではありませんし、電気が消えてから長時間立つと蓄光している光も薄れていきますが、停電直後の真っ暗で一番混乱しているときに蓄光シールが貼ってあれば、とりあえず懐中電灯や携帯電話を見つけることができますし、避難しなくてはいけなくなったときの避難経路、特に階段の段に蓄光シールが貼ってあると、階段を踏み外して落ちる可能性はぐっと減ります。
 よいものはそれなりにお値段がしますが、ちょっとしたものなら100円均一ショップでも扱いがあります。
 ちょっとした知恵ですが、身を守るのには役立つと思いますので、必要なアイテムに蓄光シールを貼るのを試して見て下さい。
 ちなみに、蓄光シールを貼ったからといって押し入れの奥深くに閉まっていては、光を貯められませんので、なんの役にも立ちませんからご注意を。

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コンタクトレンズと眼鏡

 目の悪い人にとって、コンタクトレンズや眼鏡などの視力矯正具は身体の一部になっていると思います。
 目が見えないというのは不安ですし、危険です。その上、見えないことがストレスになることもありますので、どんな状況であれ視力矯正具を複数確保しておくことは大切なことだと思います。
 ただ、気をつけておいて欲しいのが、コンタクトレンズの場合。
 災害時や災害後は、平常時に比べると衛生環境が悪化することが多いです。
 流水で手を洗ったりすることができない場合、コンタクトレンズの脱着時に目に汚れが付着して目に傷をつけたり目の病気になったりすることも起こりえますので、コンタクトレンズ派の人も、普段持ち歩くカバンや非常用持ち出し袋には眼鏡を用意しておくことをお勧めします。
 ちなみに、さまざまな理由でコンタクトレンズも眼鏡もなしになってしまった場合には、紙に小さな穴をあけてその穴を通して周りを見ると、ちょっとだけですが視力が良くなります。
 よく知られていることではあるのですが、こういったときに使えるというのは意外と知られていないので、念のため覚えておくといいと思います。

充電池と乾電池

 乾電池には大きく分けると一度しか使えない一次電池と、何度も充電して使える二次電池とに分かれます。
 一般的には一次電池を「乾電池」、二次電池を「充電池」と呼ぶことが多いようですが、繰り返して使える二次電池は環境負荷が少なくお財布にもやさしいということもあって、割といろいろなところで目にすることがあります。
 ただ、同じサイズのこの二種類の電池ですが、異なる部分もあるので取り扱い時には気をつけておく必要があります。

下が乾電池、上が充電池。どちらもパナソニック製だが、出力が異なっている。

 一番大きいのは出力の違い。一次電池では「1.5V」が殆どだと思いますが、二次電池では「1.2V」になっています。そのため、電池に出力を求めるような場合には、二次電池では力不足と言うことになりますので注意が必要です。
また、二次電池でもアンペアアワーが異なるものがあり、機械によっては動かなくなる場合もありますので注意してください。
余談になりますが、当研究所が使っているフィールドカメラで充電池の種類によっては動かなくなるものがあり、それに気づかなかったことから、現場に充電池を持参しているのに乾電池を買う羽目になったことがありました。
充電池をその機械で初めて使う場合には、あらかじめ動作確認しておく必要があるなと反省したのですが、その点乾電池はどれを使っても安定して機械が動いてくれます。
また、乾電池ではそのまま10年保存できるようなものもありますが、充電池では満タンにしたままだと劣化が早まってしまいます。
さらには回線がショートしたとき、乾電池はあまり影響を受けませんが、充電池では発熱して膨らんだり発火したりすることがあります。
環境の温度変化に強くショートにも強い乾電池。何度も使えて環境負荷の少ない充電池。
状況に応じて使い分けていきたいですね。

AEDにご注意ください

 いざというときに備えて設置されている「AED」。
 正式名称は「自動体外式除細動器」といって、心蔵がけいれんを起こしているような状態を正常化し、心蔵の正常な活動を再開させるために使う道具です。
 これは年齢を問わずに発症しますが、早期に除細動すればほとんど助かるため、誰にでも簡単に使えて除細動できるAEDが普及しています。
 さて、AED用のパッド、あるいは設定モードには「小児用」と「大人用」があるのですが、「小児用」と聞いて、あなたはどんな年齢の人まで使えると思いますか。
 医療関係では「小児」というと15歳未満を指すことが多いのですが、このAEDパッドの「小児用」は「未就学児」を指していて、これが緊急の時に判断を迷わす要因になっているようです。
 小児用パッドは大人用よりもパッドの大きさを小さくし、パワーを1/3にしています。未就学児に設定をあわせていることから、6歳から14歳までの子どもには「小児用」ではパワーが不足していて充分な除細動ができないのです。
 日本赤十字社や消防署などがやっているAEDの訓練では、パッドが大人用しか無い場合には未就学児にも大人用パッドを使っても問題ないとされていますので、判断に迷ったら大人用パッドを使うようにしてください。
 また、パッドが同じで本体の設定で小児用と大人用に切り替えるAEDもありますが、こちらも小児用は未就学児です。
 学校に行くようになったらAEDは「大人用」を使うこと。
 新しいAEDでは「未就学児」と「小学生~大人用」という書き方に変わってきているようですが、殆どのAEDでは「小児用」「大人用」という表示です。
 迷ったときは「大人用」。忘れないようにしてくださいね。

便利になると不便になる

 世の中はどんどん便利になっているのですが、その便利さはさまざまな技術によって維持されています。
 特に電気やガス、水道、通信といったライフラインは安全で確実に提供されていて、できるだけ危険が起きないように設計されています。
 ただ、災害が発生すると、普段は「安全で確実」に守られているため、自分ではライフラインの確保ができずに途方に暮れてしまうことになってしまいます。
 例えば、災害が起きて火を焚こうとしたとき、あなたはどうやって火をつけますか。
 普段なら、ガスコンロのスイッチを入れれば火は簡単につきますが、災害時にガスが使えなければ、たき火を作らないといけません。
 阪神淡路大震災や東日本大震災では、あちこちに喫煙者がいてマッチやライターもたくさんありましたが、最近の嫌煙の流れを考えると、今は事前準備しておかないと簡単に火をつけられないと思います。
 非常用持ち出し袋に、通常の保管でも劣化のしにくいファイヤスターターや火打ち石などを準備している方もいると思いますが、それを上手に使うことができますか。
 それらの道具があっても、実際に作ったことがないと災害時に作ることはかなり難しいと思います。
 缶詰はどうでしょうか。最近はほとんど缶切り不要のものになっているのですが、大規模災害で海外から届く缶詰では、缶切りが必要なものがまだまだ主流です。
 では、あなたは缶切りを使うことができますか。
 こんな風に、世の中が便利になるのはありがたいことなのですが、非常時にはそれが自分の生活の質を落とすことになるかもしれません。
 いざというときに備えて、いろいろな道具は使えるようになっておきたいですね。

絆創膏で滑り止め

使うのは絆創膏。かかと側にも貼ると効果的とのこと。

タイル張りの床や濡れている路面などでは、滑って転んでしまうことがあります。
以前「雪道の歩き方」の中で「滑り止めに包帯を使う」というのを書いたことがありますが、絆創膏も使えるのだとか。
また、靴底がビブラムソールなど凹凸の大きなものは絆創膏は剥げてしまうので使えませんが、パンプスや紳士靴など靴底が平たいものには有効なようです。
ポイントは絆創膏を貼る部分の靴底の泥や水滴をしっかりと取って絆創膏がしっかりと貼り付くようにすること。
泥や水滴があると、絆創膏の接着力がなくなってあっという間に剥がれてしまうので、これだけはしっかりとやるようにしてください。
つま先やかかと付近に1枚貼ることで滑りにくくなるそうですので、雨の日や凍った路面を歩くとき、滑るようなら試してみてはいかがでしょうか。

大掃除と災害対策

小物をまとめてかごにいれ、防振ジェルで棚に貼る。これだけでも立派な耐震化。

 だんだん年末に近づいてきていますが、あなたは大掃除をする人ですか。
 大掃除は普段やらない場所まで徹底的に掃除をすることが多いですので、普段動かさないタンス等の家具や家電製品も移動させているのではないかと思います。
 それらを元の場所に戻すとき、ちょっとだけ手間をかけて地震対策をしてみるのはいかがでしょうか。
 落下防止、転倒防止のための対策をするだけなので、たいした手間はかかりません。
 例えば、タンスの下に転倒防止用の新聞紙を入れたり、人がいる場所に倒れてこないように向きをかえたり、張り替える障子をちょっとだけ丈夫なものにしたり。
 掃除のついでにやってしまうと、新年はすっきりした気持ちで、そして安全に迎えることができると思います。
 せっかく大がかりにものを動かすのですから、そのついでに災害対策も一緒にしてもらって、お正月も安全にお過ごしください。

災害対策の準備は地域で異なる

市販品の非常用持ち出し袋セット
よくある非常用持ち出し袋のセット品

 個人の防災では非常用持ち出し袋や避難所のことがかなり頻繁に言われますが、非常用持ち出し袋や避難所の準備について都会と田舎では異なっているのはイメージできますか。
 以前に聞いた話ですが、大雨でとある田舎の集落が孤立したとき、数日後にその集落に救援部隊がたどり着いたら、住んでいた人達は特に困っていなかったということがあったそうです。
 もちろん電気は止まっているのですが、水は井戸から取っていて、熱源はプロパンガス。トイレはくみ取り。そして米は備蓄していて野菜は庭から取ってくるというような生活で、冷蔵庫と照明が使えないくらいでそこまでの不自由はなかったということのようでした。
 もしこれが都会地だと、停電は水も熱源も人の生活から奪ってしまいますし、食料の備蓄もそこまでの量はないのではないでしょうか。
 ライフラインが集中管理されている状況だと、一つのダメージが致命的な影響を与えることになりますが、普段の生活ではそこまで意識はしていないと思います。
 都会地と田舎での防災に対する準備の違いや意識の違いは、こういった普段の生活環境にもあるのではないかと思っています。
 実際、防災のご相談をいただくときにはよくライフラインと備蓄の話になって、そこまで非常食の準備をしないといけないのかと言われることがあります。
 災害への備えは住んでいる環境によって大きく異なるので、必要なものを選んで準備していただくような話になるのですが、都会基準で作られているマニュアルに完全に従うと、過剰準備になるのかもしれないと思うことがあります。
 もちろん、井戸が枯渇したりする可能性もありますから最低限の命を維持するための道具は必要なのですが、お住まいの環境や条件によって、準備するものを切り替え、命を守れるようにしてほしいなと思います。

救急ポーチの作り方

救急セット
救急ポーチの一例。消毒用として衛生綿が準備されている。

あなたの非常用持ち出し袋には救急セットは入っていますか。
非常用持ち出し袋の作り方では、「救急セット」や「救急箱」と書かれてはいるのですが、その中身について具体的に触れているものというのはあまり見たことがない気がします。
今回はこの救急セットには何を入れておくといいのかを考えてみたいと思います。

1.持病の薬がいるならまずはそれから準備する

まず最初に準備すべきは、常に必要な薬があるかどうかです。
日常的に薬を飲まないといけない人は、まずはその薬を救急セットに入れてください。
目安としては1週間分です。処方せんが必要な薬の場合には、かかりつけのお医者さんに事情を説明して非常用として準備しておくようにしましょう。
処方せんが必要な薬にも有効期限が存在していますので、新しいものを受け取ったら、その都度救急セットに備えているものと入れ替えるようにしてください。

2.外傷に備える

 絆創膏はちょっとした怪我や傷に使えて手間のいらない便利なものです。
 いくつかの大きさを揃えておくと、ちょっとした怪我なら簡単に処置ができて助かります。
 最近ではハイドロコロイドタイプの絆創膏も出ていて、これを使うと、貼り替えの手間が内上に傷跡が殆ど分からないくらいにきれいに直ります。
 ただし、ハイドロコロイドタイプは傷口を密閉して身体の修復機能を利用するという構造上、傷口がきれいになっていないとかえって怪我を悪化させることも可能性としてありますので、傷口が充分に洗浄できない場合には通常タイプの絆創膏を使った方が安全かもしれないと思います。
 次に滅菌ガーゼ。大きな擦り傷や抜くと命に危険がありそうな傷口の保護に使います。また、圧迫止血法を使うときには現金ガーゼを使うのが基本となりますので、いくつか準備しておきましょう。
 器具としては、手当に使うはさみやピンセット、毛抜きといった道具類はセットのものも売っていますが、値段と性能がほぼ比例するものです。
 そのため、入手できるのであれば個別に揃えた方が安くて良いものが揃うのではないかと思います。
 滅菌、減菌されている必要はありませんが、救急セットに入れるのであれば、それなりに衛生的なものを入れてください。
 そして粘着包帯。当然包帯として使えますが、それ以外にも添え木の固定具やテーピング、ちょっとしたものを縛るときなどにかなり役立ちますので、1セットはあったほうがいいと思います。
 粘着包帯と滅菌ガーゼの組み合わせだと圧迫止血もしやすくなりますので、滅菌ガーゼとセットで考えるといいのではないでしょうか。
 最後に使い捨てカイロと急速冷却剤。季節によって変わるかもしれませんが、小型の使い捨てカイロと急速冷却剤を入れておくといざというときに非常に役立ちます。
 使い捨てカイロは体温の保全に、急速冷却剤は打ち身やねんざ部分を冷やすのに使えます。いずれも緊急用ですので、小型のもので充分だと思います。

 基本となるのは以上の2つ。これなら準備することはあまり難しくないと思いますが、理由を説明しておきます。
 持病の薬というのは、実はかなり準備優先度の高いものになります。携帯トイレ、水の次くらいに重要なのでは無いかと筆者は考えています。
 せっかく命が助かったのに、持病の悪化で体調不良や亡くなってしまうようではなんにもなりませんので、非常用持ち出し袋だけでなく、普段持って歩く防災ポーチにも持病の薬は必ず入れておくようにしましょう。
 それから、怪我に使えるアイテム類は自分で持っておかないとなんとかできるものではありません。そこで、怪我に対しては応急処置できるようなアイテムを揃えておくのと同時に、それらの道具類が使えるようになっておきましょう。怪我をしてから治療の手引き書を読むようでは、助かるものも助からないと思います。

 ・・・ひょっとすると、「こんなものでいいの?」と思われるかもしれませんが、こんなもので充分です。
 後の準備については、おうちの救急箱を考えてみてください。普段どのような道具や薬を使っているでしょうか。救急箱に入っている薬や道具は、使うものと使わないものがはっきりとわかれていると思います。その中でよく動いていて無いと困るものを追加していけばいいのです。もし救急箱が無い、あるいは中身が動いていないおうちの場合には、追加アイテムも不要だと思います。
 最後に、これらを救急ポーチに入れるときには、それぞれのアイテムをチャック付きビニール袋にいれて収めるようにします。
 これは避難時に非常用持ち出し袋がずぶ濡れになったとしても、持病や応急処置に使うものは濡らさないようにするためです。
 蓋を開けるととても簡単な救急ポーチですが、例えば新型コロナウイルス感染症対策だとここにマスクや非接触型体温計などが必要になるかもしれません。それらのことも踏まえた上で、あなたにベストな救急ポーチを作ってもらいたいなと思います。