水は重い

水の確保はTPOにあわせて量を考えよう。

災害時に不足するものとして、トイレと水があります。
トイレは絶対に我慢できないものですし、水分補給できなければ3日以内に動けなくなります。
食べ物は、成人の場合1週間程度は食べなくても生きていけるようですので、とりあえずトイレと水について確保する方法を考えておきましょう。
トイレについては過去に何度も触れていますので、今回は水について考えてみます。
非常用持ち出し袋に水を入れると、とにかく重たくなります。
一日の飲料水とされる3リットルだけでも、3kg。これを3日分持って避難しようとすると、恐らく他のものは持てなくなります。
山歩きなどでリュックサックになれていて、リュックサックも山用の丈夫なものであればよいのですが、普通に町歩きで使うようなリュックサックだと、9kgでもへとへとになると思います。
そうすると、水はあらかじめ避難先に保管しておいたり、家の中に分散しておいたり、車の中や倉庫といったさまざまな場所に分散して保管するという対策を考えておく必要があります。
非常用持ち出し袋には500mlのペットボトルを3本程度にして、あとは2リットルのペットボトルで保管しておくようにすれば、腐敗や重さをそこまで気にしなくてもよくなります。
また、ウォーターサーバーが停電時でも動くのであれば、そういったものを上手に使うとより快適に安全な水が確保できます。
繰り返しになりますが、水は重たいです。
しかし、あなたの命を繋ぐためには絶対に必要なものでもありますから、あなたの知恵を絞って、災害後に確実に手に入れられるようにしておいてくださいね。

避難所とお客様

「避難所は、あなたの命を守り繋ぐための場所の提供であって、避難者をお客様扱いしてくれる場所ではない」
 当たり前のことなのですが、普段災害対策から遠ざかっている人ほど、避難所で周囲に迷惑をかけるというのはもはや定番のようです。
 もし避難先でお客様として過ごしたいのであれば、避難所ではなく、被災地外の民間ホテルや旅館に避難しましょう。対価は要求されますが、対価相応のお客様扱いはしてもらえるはずです。
 避難所はあくまでも「場所の提供」なので、衣食で必要なものは全て持参しなければなりません。
 ですから、水や食事が配給されないからといって文句を言うのはお門違いです。
 布団がないからといって文句を言ってはいけません。寝具が必要なら、避難時に持参しなければいけません。
 明るかったり、うるさかったりしても、一般的常識の範囲であるなら、文句を言うべきではないでしょう。
 そして、他の避難者が衣食や寝具を持参して快適生活をしていたとしても、それに対して文句を言ったりうらやんだりすることは御法度です。
 あなたののどが渇いていたり、お腹が空いていたり、寒かったりするのはあなたの準備不足です。
 避難所で家と同じような生活を送ることは難しいでしょうが、できるだけ生活の質を落とさないようにするためには、事前のしっかりとした準備が必要なのです。
 さて、あなたの準備はできていますか。

非常用持ち出し袋に入れるもの

市販品の非常用持ち出し袋
市販品の非常用持ち出し袋の例。基本セットから自分に必要なものを追加していく。

 非常用持ち出し袋には必要最低限の避難所で生活できるためのアイテムを入れておきましょうといわれますが、あなたの非常用持ち出し袋にはどのようなものが入っていますか。
 命を繋ぐものはもちろんですが、避難所で襲ってくる一番の敵「退屈」を凌ぐためのアイテムは是非入れておいてください。
 地震のようにいきなり本番がやってくる場合にはその後の処理でけっこうどたばたしますが、水害や台風といったあらかじめ発生が予測されるような災害からの避難の場合、避難後には本当に退屈になります。
 人間、退屈だと不安になってくるものです。そのため、あなたがしっかりと時間を潰せるようなアイテムが絶対に必要となるのです。


 1日から2日程度仲間と遊べる、または自分一人でも楽しめるような何かを準備しておけば、その間には災害が起きるか、または災害が避けられたかのどちらかになるので、どちらにしてものんびりとできない状況に変わります。
 準備する際に気をつけて欲しいことが一つ。
 携帯ゲーム機などの電気を使用するものは、避難所の電源には繋がず、自前の充電池や発電機を使うようにしてください。

電気と音はあんがい周囲が気になるものです。遊ぶための準備は怠らないようにしましょう。

 避難所の電源を使うと、電気を盗む窃盗という行為になります。また、電源を独占している光景は、避難所ではあまり歓迎されません。
 ともあれ、自分が楽しめるアイテム。平時に考えて準備しておいてくださいね。

スマホのライト

 本日は会員様対象企画として、防災体験会を開催しました。
 その中で、煙からの避難という項目があったのですが、講師の方が「真っ暗になったとき、日本人は壁を探しますが、アメリカ人はまずスマホのライトをつけます」といわれ、一般家屋の火災で出るような白い煙の場合にはスマホの灯りが避難にかなり役立つことを教えていただきました。
 恥ずかしながら筆者のスマホにもライト機能はあるはずなのですが、使ったことがなく、使い方も分からない状態。
 避難訓練時には他の方のスマホのライトに助けられて脱出を行うことができました。
 油火災のような真っ黒な煙だと意味がありませんが、白い煙の場合にはこのスマホのライトを脱出路の確認に使うというのはかなり有効に感じました。
 災害時に停電したときの照明だけでなく、照度も変えることができて懐中電灯やランタンの代わりになるので、使いこなせればかなり便利なアイテムだなと感じました。
 筆者も帰ってからライトの付け方を確認してみましたが、もしもお手持ちの携帯電話のライトの使い方をご存じないのであれば、調べて使えるようにしておいたほうがいざというときに安心できると思います。

自分専用の道具を優先的に準備する

 災害時に持ち出す非常用持ち出し袋の準備はお済みですか。
 明日からは新しい年度に入りますので、引っ越しをしたり、生活環境が変わる方は、ハザードマップや周辺環境、避難や避難後の生活に必要なアイテム類の準備や確認をしておくことをお勧めします。
 さて、災害後の対策で優先的に準備するものとしては、一番最初はトイレです。さまざまなトイレがありますが、あなたは準備したトイレを使うことができますか。
 二番目は水です。災害発生後には断水することが多いので、飲料水の準備はもちろん、生活に使うための水も準備しておきましょう。
 では、その次に準備すべきものはなんでしょうか。
 これはあなたが普段の生活で必要としているが、他の人にとってはそこまで重要では無い品物になります。
 たとえば、眼鏡、老眼鏡、補聴器、杖、車いすなど、あなたが生活をするために必要な道具があるならば、それらの道具は優先して準備しておく必要があります。
 災害時の緊急支援物資では、多くの人が必要とするものが最優先されるので、特定の人が必要となる道具は後回しになるか、もしくは配慮されません。
 そのため、そういった道具が必要な人は自分であらかじめ準備しておく必要があるのです。
 災害後に自分で情報を確認できなかったり、移動できなかったりするのは生活をするのに困ったことがたくさん発生する元になります。
 非常用持ち出し袋には、そこまで見据えた道具を準備しておくことをお勧めします。

歯磨きセットは必須アイテム

 非常用持ち出し袋を作るときに見落としがちで、市販品の非常用持ち出し袋に入っていることが殆どないものの一つが「歯磨きセット」です。
 歯ブラシと歯磨き粉、それにうがい用コップをひっくるめて歯磨きセットと呼んでいますが、あなたの非常用持ち出し袋にはこの歯磨きセットが入っていますか。
 実は、被災後の生活では口の中の衛生環境を維持できるかどうかで病気にかかる率がまったく違うことがわかっています。特に高齢者の方の場合は、歯磨きは絶対にしないといけません。
 口の中はさまざまな雑菌の温床になっており、それを歯磨きしてうがいで流すことで一定以上の数を増やせないようにしています。
 でも、災害が起きて歯磨きができない状態になると、口の中にさまざまな雑菌が繁殖し、特に高齢者ではその雑菌が肺炎を起こしたりすることが非常に多くなります。
 避難生活で体調を維持するためには、口の中の環境を維持することが必須なのです。
 歯ブラシが無ければ、口をゆすぐ洗口液や歯磨きシート、ティッシュペーパーなどでも構いませんので、口の中の汚れを落とす習慣だけは忘れないようにしてください。
 災害後の避難生活では、さまざまな理由から免疫が弱ってきます。そうすると、身体のあちこちにいる雑菌が一斉に悪さをしようと活動を始めます。その中でも、口は内臓に直結している部分ですので、口の衛生を死守することが元気に災害後を過ごすことの絶対条件です。
 入れ歯の方の場合には、入れ歯洗浄剤なども非常用持ち出し袋に入れておいて、口の中の衛生環境をできる限り守るようにしてくださいね。

お風呂の残り湯をどうするか

 災害対策のお話をしていると、割とよく出てくるものの一つに「お風呂の残り湯は抜くのが正解か、貯めておくのが正解か?」という質問です。
 答えは「あなたがお住まいの環境によります」ということにしているのですが、お風呂の残り湯というのは案外と使い勝手の悪いものですので、そこだけは留意しておいてほしいと思います。
 お風呂の湯を抜かずに1日おいておくと、なんともいえない臭気がお湯から出てくると思います。特に夏場はひどいのですが、これは人が入浴した後のお湯なので、さまざまな汚れの入った水で雑菌が繁殖した結果です。
 夏場などは特にひどくなりますので、人に直接使うのはちょっとためらわれます。
 浄化キットがあればそれを使えばある程度使える水に変換はできますので、残り湯を使うことを考えるのであれば、水の浄化キットは準備しておいてほしいと思います。それがない場合、庭木の水やりか打ち水、トイレを流すかくらいになりますので、大容量の水ではありますが、過大な期待はしないほうがいいでしょう。
 また、集合住宅で2階以上にお住まいの場合には、大きな地震のときに湯船から残り湯がひっくり返って階下のおうちを水浸しにしてしまう危険性もあります。
 残り湯は抜くのが正解なのかと言われると、集合住宅の2階以上にお住まいなら抜くのが正解と答えます。
 単独住宅の場合には、風呂場が1階にあり、使い道を考えた上で残り湯を残しておくのは良いアイデアだと思います。
 ただ、小さいお子様がいる場合には、残り湯で溺死する危険性は排除できませんので、残り湯は抜いておくことをお勧めします。
 あなたのお住まいの環境でその水をどのように使うのか、そしてそれはどれ位必要なのか。それをきちんと踏まえた上で考えることをお勧めします。

トイレの問題を考える

簡易トイレの汚物の処分はどうやってやる?

 災害が起きて断水すると、多くの場所ではトイレが使えなくなります。
 流すのに水が必要ないくみ取り式や、少量の水で済む簡易水洗であればともかく、充分な水の確保ができなければ原則としてトイレは使用禁止にせざるを得ません。
 避難所の衛生環境が確保できるか否かの一番最初は、このトイレの問題となるのですが、多くの場合、運営者の手が回らずに、トイレの封鎖を行う前に汚物でてんこ盛りになっている状態になってしまいます。
 現在の災害対策支援では、早ければ3日後くらいには仮設トイレが届き始めるそうなので、発災から3日後までのトイレをどうするのかという問題があります。
 防災のワークショップなどではこのトイレづくりも取り上げられたりしていますが、実際に作るとなると、手間と時間、それに臭いの問題が発生してきます。
 簡易トイレで出した汚物は、出した先のビニール袋に凝固剤や消臭剤を投入して口を縛り、燃えるゴミなどに出すことになりますが、時間の経過と共に腐敗して臭気がただよい、精神的にも衛生環境的にもよくありません。
 また、できる限り小まめに汚物の回収を行わなければなりませんが、そういった作業をしたがらない人や、できない人も多くいます。
 避難所での最優先課題はトイレだと思いますので、地震による下水管の破断や断水時のトイレの封鎖、簡易トイレの設営、使い方、汚物処理について、あらかじめしっかりと取り決めておく必要があります。
 避難所だけでなく、あなたのおうちでも、自宅避難を行う場合に備えて、準備しておくことをお勧めします。

家具類の地震対策

よくある転倒防止装置。家具が動き出さないように設置するのがポイント。

 地震が続いていますが、あなたのおうちの家具の地震対策はできていますか。
 地震対策には二つあって、ひとつが家具そのものが倒れないようにすること、そしてもう一つが、家具の中身が落ちないようにすることです。
 家具そのものが倒れないようにするには、転倒防止用の固定器具を使うのが一般的で、例えば突っ張り棒や転倒防止用の固定器具、家具を壁にビスで固定するなどの方法があります。
 家具の中身が落ちないようにするためには、家具への中身の詰め方の工夫や、扉をロックするといった方法があります。
 でも、例えば借家などで簡単に家具の固定が壁にできなかったりする場合があると思います。
 もっとも簡単な家具の転倒防止は、家具の正面下、床と家具との間に折りたたんだ新聞紙などを入れて、家具を壁側に少しだけ傾斜させる方法です。

タンスの下の新聞紙。床がたわむような状態でもタンスが安定している。

 我が家では昔からばあちゃんが普通にやっていて、何も考えずに筆者自身もやっていたのですが、これをやると家具が簡単には転倒しなくなります。
 直下型地震のような大きな縦揺れを受けるとどうにもなりませんが、普通の地震の揺れなら、家具の上側が壁で支えられているために転倒することがなく、引き出しや扉が若干上を向いていることから、簡単には抜けたり開いたりしません。
 簡単にできて非常に効果的な地震対策ですので、もしもお引っ越しなどで家具を動かすことがあるのであれば、家具の下に折りたたんだ新聞紙を入れるとよいと思います。
 ちなみに、同じような機能を持った道具が百円均一ショップやホームセンターなどで売られているので、見た目を気にする方はそちらで調達してもいいと思います。
地震が起きたときに怖いものの一つが家具の転倒です。
 ちょっとした工夫で転倒が避けられるのであれば、やっておいて損はないのではないでしょうか。

ポンチョと雨合羽

 非常用持ち出し袋に入れるものの中に雨具があるでしょうか。
 災害後の避難や避難生活でかなりいろいろとお世話になるかもしれないアイテムなので、できれば一つ用意しておくといいと思います。
 よく比較されるのが、ポンチョと雨合羽です。
 この二つ、表向きの機能は同じ雨避けとなっているので、どちらを準備すればいいのか迷うことも多いのではないでしょうか。
 結論から言うと、ポンチョの機能を持つ上着と雨合羽のズボンを組み合わせると最強になるということです。
 できるなら、両方準備しておくと非常に使い勝手がよくなります。
 ポンチョは、身体の上半身にすぽっと被る雨具です。そして雨合羽は上着とズボンに別れていて、全身を覆うことのできる雨具です。
 構造上、ポンチョは雨の中の移動では足下はびちょびちょになります。また、防寒着としても雨合羽に比べると開口部が大きいため、あまり役には立ちません。
 では、なぜ準備するのかというと、雨具以外の使い道がポンチョには非常に多いからです。例えば、授乳時の目隠しや簡易トイレでの用足しでの目隠し、簡易タープや簡易テントと、いろいろなことに使うことができます。また、徒歩での避難時に歩けなくなった乳幼児をおんぶするときにも、子どもと一緒に雨を凌げるのはポイントが高いと思います。
 選ぶポイントは、透けないことと丈の長さ。安いものだと百円均一ショップでも売っているのですが、多用途に使おうとすると透けるのはちょっと困りますので、透けないものを選ぶことが大切になります。また、その目的上、丈が長めの方が安心できると思います。特に女性や乳児のいるご家庭では、最低一着準備しておくと困らなくて済むと思います。
 雨合羽は、構造上雨をしっかりと弾いてくれます。また、雨を通さないということは風も通さないということなので、防寒着としても機能を果たしてくれます。
 また、粉じんが身体につくのを防いでもくれます。
 代わりに、着る以外の用途に使うことはかなり難しい構造ですので、できるだけ非常時の荷物を減らしたいという人は、ポンチョの方がいいかもしれません。
 災害対策としてアイテムを選ぶときの参考になれば幸いです。