非常口の鍵

鍵の開け方は書いてあるが、小さいのでいざというときには読めない。

 災害だけでなく火災のときにもとても重要になるのが非常口です。
 普段はスタッフ専用出入口になっているか、もしくはまったく使わない純粋な非常用として作られている非常口の扉には、ほぼ確実に鍵がかけられています。
非常時にはこの鍵を解放して脱出するのですが、実はこの非常口の鍵は解除するのに決まったルールがないため、非常口を使う事態になったときには焦りながら鍵の解除方法と格闘することになります。
 カバーを外してロックを解除するといった単純な作業でも、焦っているときにはなかなかうまくいきませんので、そういった場所にでかけたときには、念のために鍵の解除方法を確認しておいたほうが安心です。
 本当のことをいえば、非常口には鍵はかけないのが一番いいのですが、非常口を使ってさまざまな悪事を働く人が出ることを考えると、そういうわけにもいかないみたいです。
 ちょっとしたことなのですが、そういった細部の確認が一秒を争うときにはとても重要になりますので、非常口の鍵、ちょっとだけ意識しておくことをお勧めします。

簡易トイレと汚物処理

携帯トイレ各種

 災害で通常のトイレが使えなくなったときに登場するのが簡易トイレです。
 時間の経過と共に工事現場で見るような使いやすくてきちんと仕切られた仮設トイレが到着したり、使えなかったトイレが使えるようになったりしますが、それまでは汚物を自分で処理する必要のある簡易トイレを使わなければなりません。
 最近では避難所の備蓄品や非常用持ち出し袋の中のアイテムとして常備されていることも増えてきましたが、いざというときにそれらの道具を正しく使うことができますか。
 こういった簡易トイレは使用一回ごとに凝固剤で固めた汚物の入った袋の口を縛って可燃ゴミとしてゴミ置き場に出しておかないといけないのですが、残念ながら汚物をそのままにしてしまう人が多いようです。
 張り紙などで意識させるようにしていても、普段の慣習というのはどうしても出てしまうので、次に使う人との間で大きなトラブルになってしまいます。
 普段の避難訓練や避難所設営訓練時に実際に使ってみないと身につかないような気がするのですが、トイレの問題は「汚い」とか「くさい」といった感覚が先に立ってしまって設置まではしても実際に使用するところまではいかないようです。
 ただ、使うときには本当に困ってしまう部分なので、とりあえずは使用から汚物袋の処分までを入れた訓練はしておいたほうがいいと思います。
 ところで、簡易トイレは汚物袋と凝固剤を一セットにして一回ごとに使用するのですが、あなたは自分が普段トイレに行く回数とその時の大小について大ざっぱでいいので把握していますか。

座るところは段ボールでもバケツでも作れるが、処理袋は用意していないと作れない。特に凝固剤がないと汚物が可燃物で処理できないので要注意!


 大小で使う簡易トイレが異なることがありますので、回数を把握したうえで非常用持ち出し袋に備える簡易トイレの数を確保して下さい。
 災害備蓄として避難所においてあるトイレの汚物袋と凝固剤の数は、例えば2000セットあると聞くと多いと感じますか、それとも少ないと感じますか。
 その避難所に避難する人が100人いるとします。そうすると、一人が簡易トイレを使用できる回数は20回。一日に5回トイレに行くとすると、4日分しかありません。
 もし避難者が1000人だとすると、たった2回分です。
 自分の備蓄を準備しておかないと、簡易トイレさえ使えなくなるということを知っておいてください。
 各人が自分の簡易トイレを持っているほど、トイレ事情には余裕が出てきます。
 食べたり飲んだりは我慢できても、出すのは我慢にも限界がすぐ来ますので、簡易トイレの準備と取り扱い方の熟知、そしてゴミ処理についての計画を作っておくことをお勧めします。

チャック付きビニール袋

防災ポーチや非常用持ち出し袋にはさまざまなアイテムが入っていると思いますが、汎用性が高いアイテムとして、ジップロックのようなチャック付きビニール袋を入れておくことをお勧めします。
ある程度以上の大きさのものであれば、中に衣類を詰めて枕代わりにしたり、水を運んだり、開封したお菓子類を湿気させないための保存に使ったり、使用済み紙おむつなど臭気のでるものを入れたり、濡れたら困る携帯電話等のアイテムを中に入れれば、雨天時の移動や避難でも安心して移動ができます。
さまざまなサイズがありますので、自分がよく使うサイズのものを用意しておくといいと思います。
筆者はジップロックをお勧めしていますが、これはチャックが二重になっていて液漏れ・臭気漏れがしにくいことと、触っているときのカサカサ音が殆どないからです。
夜間や静かなときのポリ袋などのかさかさという音は、案外と周囲によく響きますし耳障りでトラブルの元になります。
さまざまな場面で役にたつチャック付きビニール袋。防災アイテムの一つとしてお勧めします。

その資機材は使えるか?

 非常用備蓄品として、集会所や公民館といった避難所になり得る施設にはさまざまな資機材が準備されていることも多いです。
 仮設トイレや段ボールベッド、仕切りやテントといったアイテムは、備え付けているだけではあまり意味がありません。実際に使ってみて、使い方を覚えておかなければ、便利なものであっても役には立たないのではないでしょうか。
 以前に避難所で、本来はパーテーションとして使われるはずの段ボールが避難者の敷物代わりになっていたという笑い話のような光景を見たことがありますが、これもその段ボールがなんなのかが運営者側にわからなかったため、敷物代わりに使われてしまったようです。
 もっとも、寒い時期にはパーテーションよりも床からの寒気を遮断するための道具として使った方がよいという見方がありますので、一概に悪いとも言えません。
 余談になってしまいましたが、備え付けてある資機材は、避難者や運営者が存在を知らなければないのと同じですし、使い方を知らなければやっぱりないのと同じです。
 また、資機材を使うために必要なものが欠落している場合があります。
 とある避難所予定の施設では、停電に備えてステンレス製のかまどが用意されていましたが、肝心の薪と鍋は備え付けてありませんでした。
 近所から持ってくる想定なのかもしれませんが、使うための資機材は一通り揃えておいた方が、いざというときに困らないのではないかと考えます。
 こんな例はたくさんありますが、せっかく準備する資機材ですので、避難者や運営者もそれがどんな道具でどうやって使うのかについて、できれば実際に使ってみて使い方を知っておいて欲しいと思います。

日常の延長の災害対策

 災害対策というと身構えてしまいがちですが、その目的は「日常生活を守ること」です。
 普段の生活を守るための対策を行うので、日常生活の延長として考えるといいのではないでしょうか。
 乾物や缶詰など、長期保存できるものを日々の食事のメニューに組み込んだり、風呂の水を貯めておいたり、カバンに水の入った水筒を入れておいたりといった、ちょっとした気遣いがあなたにとっての立派な防災になります。
 無理に災害対応用の特別なものを準備するのではなく、普段の生活の中で備えをしていかないと、特別にしてしまうといつかは忘れて存在しないのと同じ状態になってしまいます。
 日常生活、例えば電気やガス、水道が止まったときにどうやったら質を下げなくて済むのかを考えて準備をしておくと、それが災害への備えになります。
 個人の災害対策は身構えるほど難しくはありません。できるところから少しずつ手をつけて、災害時に日常生活をできる限り維持できるように準備しておくことをお勧めします。

避難生活の強い味方のお茶

被災して生活が日常に戻るまでの間、生活に必要なさまざまなものが不足している状態になります。
特に食生活においては、配給される食事だけではビタミンやミネラルが圧倒的に不足していますので、それを補う方法を準備しておきましょう。
重要なビタミンである葉酸やビタミンCの補給が手軽にできるものとしては緑茶があります。
抹茶や煎茶など、緑色をしているものには葉酸やビタミンCがしっかりと含まれていますので、それを摂取することで簡単に葉酸とビタミンCを摂取することができます。
ただ、ペットボトルのお茶はこれらの効果は期待薄。葉や粉からお茶をいれるようにしてください。
長期にわたる避難生活では、このお茶にかなり助けられたという話も聞きます。
そんなに重量もありませんしかさばるものでもありませんので、準備しておくことをお勧めします。

カセットコンロと電磁調理器

よくあるカセットコンロの一つ。

 災害後に温かな食事を作るため、調理器は準備しておいた方が安心できると思います。特に災害直後はライフラインの全てが止まっている可能性が高いので、単独で使えるカセットコンロを準備しておくことをお勧めします。
 ただ、カセットコンロはその名の通りカセットガスがなければ使えません。
 調理する時期と内容によってカセットガスの使用量が異なるためになんとも言えませんが、通常2~3食分を作ってガス1本を消費すると考えて準備するといいと思いますが、たくさんのカセットガスが必要なのも確かです。
 田舎であれば廃材で焚き火などをして、そこで調理する方法もあるのですが、都会地でこれをやろうとしても廃材が手に入らないと思いますから、電気調理器を準備しておくといいと思います。
 ライフラインの中で、プロパンガスを除くと一番復旧が早いのが電気ですので、特に都市ガスの地域では電磁調理器を準備すれば、暖かいものを継続して食べることができると思います。
 最近は携帯できるタイプの電磁調理器もあるようですので、あらかじめ準備しておくことをお勧めします。
 特に乳幼児やお年寄りと一緒に避難する場合には、熱源を複数確保するのを忘れないで欲しいと思います。
 ちなみに、お住まいの地域が田舎でプロパンガスであれば、ボンベさえ無事なら、直結できるガスコンロで暖かいものを作って出すことが簡単にできます。

【活動報告】研修会の展示に協力しました

非常用持ち出し袋各種の展示。市販品のセットを手に取るのは珍しいことのようでした。

 去る4月10日、日本防災士会島根県支部益田鹿足ブロックの顔合わせ会兼研修会が開催されました。
 事前の打ち合わせの中で、エマージェンシーブランケットについて現品があれば展示がしたいとのご相談を受け、せっかくなので非常用持ち出し袋について展示していただけないかを打診、快諾いただき、当日に非常用持ち出し袋や仮設トイレ、簡易ヘルメットなどの展示をさせていただきました。
 当日は参加者の方々からさまざまなご質問をいただき、また、市販品の非常用持ち出し袋や防災食について興味深そうに品物を確認していました。
 普段は当研究所の講習会などで展示しているアイテム類ですが、こういったアイテム類の貸し出しにも需要があることがわかって非常に参考になりました。
 今後、他団体の行事でも展示の意向があれば貸し出しについても行っていきたいと考えています。
 今回お話をいただきました日本防災士会島根県支部益田鹿足ブロックの皆様にお礼申し上げます。

消火器は火を扱う全ての部屋に個別に準備する

 お恥ずかしいことですが、昨日小火を出しました。
 古いオーブントースターから出火しまして、火が大きくなるのに「火事、火事、水、水!」としか出ない言葉の貧弱さ。
 消火器は準備していたのですが、少し離れた場所に置いていたので取りに行くのに間に合いそうになく、火を消す水を汲むにも道具がありませんでした。
 ただ、筆者の声を聞いた子ども達は「濡れたタオル」「洗面器に一杯の水」「電話機の前で消防への通報準備」とそれぞれに動いてくれており、濡れたタオル+みずぶっかけで事なきを得ることができました。
 我が家では先日防災センターでの訓練で消火訓練もしており、そのときに職員さんが教えてくれた手順を元に、子ども達はそれぞれの判断で行動してくれていました。
 火を消して鎮火したオーブントースターを安全な場所へ撤去し、徹底的に水をぶっかけてからの反省会で、「小さな火でも消防へ通報する」と「火を扱う場所には消火器を置く」ことを決め、本日買ってきました。
 中型の消火器の方が確実性は高いのですが、置き場所の問題で当面は写真のようなエアゾール消火器を導入することになりました。
 日々の訓練はもちろんですが、資機材についてもきちんと整備し、いざというときにすぐに使えるようにしておかなければいけないと深く反省した筆者でした。

小銭を持つ意味

昨今は電子マネーがかなり普及していて、手元にお金を持っていなくても困らないことが多くなりました。
ただ、災害対策という視点から見ると、できるだけまとまった小銭を持っておく必要があると思っています。
というのも、災害で停電が起こると、電子的なシステムは基本的に動かなくなります。ただ、お店に物品はあるので、お金を払えば商品を買うことができます。
では、なぜ小銭なのかといえば、おつりが出せないからです。
1万円札や5千円札で支払いをしようとしても、そもそもお金の入っているレジが動かないのでくずすことができません。
ちょうど支払うことができることが求められるのです。
500円、100円、50円、10円、5円、1円を上手に組み合わせて、いざというときに当座のものを調達できるくらいの小銭は持っておくようにしましょう。
面倒くさい人は、100円1枚と10円3枚でも構いません。これだけ持っていれば水の調達はできます。
美学を持つ人にとっては許せないかもしれませんが、災害が起きたら美学でのどは潤いません。
少額でもいいので、必ず小銭を持っておくようにしてください。
ちなみに、災害時に電子的なシステムを自家発電機などに繋いで稼働させるというマニュアルは、割と多くのコンビニに備わっているそうです。
ただ、いざというときに訓練していない人がそれをマニュアル通りに使うことはかなり難しいと思います。
少なくとも、小銭を持っていればなんとかなると思いますので、どんなときにでも小銭を持ち歩く習慣をつけておくといいと思います。

クルマを電源に! コンビニエンスストア・セイコーマートが災害時でも営業できたワケ(gazooのサイトへ移動します)