子どもの避難の格好について考える

 地震が起きると、建物や地面から埃や土煙が舞い上がってきます。
 ただの埃や土煙ならいいのですが、その中にはさまざまな有害物質も混じっています。
 この埃や土煙の舞い上がる高さはおよそ1mくらいなので、小さな子はこのもやもやの中を突っ切って避難することになります。
 その結果、目や鼻、口やのどなどの粘膜にダメージを受けることも起きるようなので、 避難するときには火災の時と同じように、鼻と口を袖口で覆い、なるべく浅い息で移動するようにします。
 粘膜のダメージの他に、埃や土煙をなるべく吸い込まないようにすることで後の体調不良をなるべく防ぐためでもありますので、可能であれば避難時に使い捨てマスクを着用させ、あるならば水泳用のゴーグルを着用しておくと粘膜が守りやすくなります。
また、その手の埃や土煙は身体につかないに越したことはありませんので、使い捨てのビニール製ポンチョや雨合羽などで身体を覆うようにすると、より一層安全だと思われます。

ポンチョタイプはリュックサックごと覆えるのでザックカバーがないときは便利です。

 このビニール製ポンチョや雨合羽はある程度の放射線対策にも使えますので、放射能性のものが降ってくる可能性があると判断される場合には、用意しておくことをお勧めします。
 そして、足下は運動靴か上履きといった履きやすく脱げにくいものを選びます。長靴は少し動きにくいのが難点なのと、万一水が入ったときに歩けなくなるのでお勧めしません。もし水の中を逃げるようなことが起きた場合には、足下はマリンシューズが一番安全です。ただ、靴底が柔らかくて弱いですので、水の中の尖ったものを踏まないように注意する必要があります。
 あと、頭の防護用にヘルメット、または帽子もお忘れ無く。

避難を考える

一口に避難といっても、何が何でも全て避難場所や避難所に移動しろというわけではありません。
 災害対策の考え方では、一義的には自宅避難。自宅が危険な場合に避難場所へ避難。そして自宅が損壊した場合に避難所へ入所という流れになっています。
 「自宅が使える人は自宅で」というのが計画の大前提なのです。
 まず手始めに、地元の防災計画を確認して自分が避難すべき避難所や避難場所の収容人員を見てみましょう。その地域に住んでいる人がみんな避難できる空間があるでしょうか。
 避難場所や避難所はその地域の圏域人口はまったく考慮されておらず、そこにある公共施設が割り当てられているだけという場合が非常に多いため、地域にいる全ての人が避難すると避難者が多すぎて門すら超えられないという事態が想定されます。
 そのため、災害が起きたときに自宅に居るべきなのか、それとも避難すべきなのかをきちんと想定しておかないと、避難したのに路頭に迷うというおかしな事態が発生します。
 そうならないために、まずは自分の住んでいる場所で起きうる災害について、ハザードマップなどを元にして避難場所・避難所に逃げる必要があるかどうかを検討しましょう。
 唯一、津波は発生した場合にはどこでもいいからとにかく高台へ避難する必要がありますので注意してください。
 避難が必要なのは、高潮や洪水では2m以上水没することが想定される地域、後背地に崩れやすい崖や山がある場合や家が急な斜面に建っている場合、台風や竜巻などで自宅が損壊する可能性が高い場合で、この場合には周囲が安全な避難場所や避難所に避難する必要があります。
 逆に避難が必要ない場合には自宅に立て籠もることになりますので、自宅に災害をやり過ごせるだけの備えをしておかないといけません。
 行政機関の準備している住民への災害対策はあなたが思っているよりも遙かに貧弱でせいぜい「ないよりはナンボかまし」程度のものです。
 自分の命は自分で守ることは、災害対策での大前提。
 事前にしっかりと検討し、備えておきたいものですね。

 なお、石西地方の各自治体が指定する避難場所及び避難所の一覧はこちらからご確認ください。

眼鏡と入れ歯

 被災者の不足するものにはいろいろとあります。
 特に紙おむつや子供用ミルクは結構騒がれるのですが、必要なのに案外と見過ごされているものがあります。
 それは眼鏡と入れ歯。
 どちらも必要な人にはないと困るものですが、災害時にはこれが無くなることが非常に多いようです。
 ところが「自分が我慢すれば」ということで特に訴えられないため、文字が読めず情報が手にはいらない、食事も堅いものが食べられなくなって衰弱していくような事例があるそうです。
 支援物資として送られてくるものは衣食に日用品と多岐に渡りますが、眼鏡や入れ歯は完全に個人的なもののためほとんど顧みられることがありません。
 銀行や役所の窓口にあるような程度の既製品の老眼鏡ですら被災時には不足するのですから、個人にあわせて作らないといけない眼鏡や入れ歯は、支援物資では対応ができません。
 どこかの段階できちんと眼医者さんや歯医者さんにかかり、改めて眼鏡や入れ歯を作成してもらわないといけないのですが、この部分についてはどこの防災計画を見てもあまり定められていないようで、眼医者さんや歯医者さんが災害後どのような状態にあるのかがさっぱりわからないというのが現状です。
 目や口のケアは普段からとても大切なことですが、災害時には特に気をつけないといけない部分です。
 私は発災後、ある程度のところでDMATなどの医療チームのように眼科や歯科も医療チームを編成して対応に当たる必要があるのではないかと思いますが、実際のところはどうなっているのか、調べてみましたが特に決まっていないようでした。

 かかりつけの歯医者さんと、目医者さんもしくは眼鏡屋さんに、あらかじめお願いしておくくらいしか、今のところは手がなさそうです。

【活動報告】保育園の避難訓練に参加しました

先日、防災研修で押しかけ講師をさせていただいている保育園様の避難訓練の様子を見学させていただくことができました。
 この保育園では月に一度避難訓練を実施しており、今回の想定は「地震+火事」でした。

子ども達の手はしっかりと頭と首をカバーしているダンゴムシです。

 「地震です」の園内放送を聞くと、子ども達が一斉に部屋の中央部に集まって「ダンゴムシのポーズ」を取り、クラスによっては防災ずきんも被ってじっとしていました。

 その後「火災発生」の園内放送と同時に鳴り響く非常ベル。
 子ども達はさっと立ち上がると騒ぎもわめきもふざけもせずに粛々と列を組んで非常経路に従って避難をし、赤ちゃん組はおんぶ&お散歩車で避難を行い、訓練開始から避難完了までわずか5分で安全圏に避難が完了していました。

脇目も振らず粛々と避難行動をしている子ども達。みんな真剣です。

 小学校や中学校ではもう少し賑やかでドタバタした感じになるのですが、この静けさはすごいなと思い、訓練終了後に園の先生にお話を伺いました。
 それによると「4月に子ども達が入れ替わってすぐの訓練では泣いたり騒いだりすることがありますが、この時期だともう普通に避難ができます」とのこと。
 以前に研修させていただいたことを元にして津波からの避難訓練も実施されたそうで、避難開始から高手の避難所までの避難が17分だったことも伺い、かなり素早いなと感心しました。
 普段から訓練することで避難という行為に慣れることができ、その結果として安全を確保することができるということを教えていただきました。
 後日、見た内容について修正点があれば教えて欲しいということでしたので、また気づいた部分をお話しさせていただこうと思っていますが、災害時に保育園での死傷者が少ないという理由がちょっとだけわかったような気がしました。
 惜しむらくは、これだけしっかりとした訓練が日常に組み込まれている保育園から小学校に行くと、途端に訓練回数も内容も貧弱なものになること。
 どのように働きかければうまくいくのだろうかと、少々考えさせられる体験でした。貴重な経験をさせていただいたすみれ保育園の園長先生を始めとする先生方に厚くお礼申し上げます。

災害のピクトグラムを知ろう

災害関係に限らず、あちこちで見ることの多いピクトグラムは、あなたも一度は目にしたことがあると思います。
「絵文字」や「絵単語」とも言われるようですが、その絵を見ることでそれは何を示すことなのかがわかるような表示のことです。
ところで、災害に関係するピクトグラムはつい最近まで全国で統一されたものがありませんでした。
そのため、地域地方によって同じ意味でもさまざまなピクトグラムが採用されています。
平成28年にこれをようやく統一するということになりましたが、義務ではなく努力規定なので、看板等が更新されるまでは、当分さまざまな表示が混在することになりそうです。
今回は、この統一された基準について見ていきたいと思っています。

1.避難場所

左の図は「避難場所」を表しているピクトグラムで白地に緑の絵で構成されています。
私はこれを最初見たとき「マンホール注意」と勘違いしたのですが、この絵は決して落とし穴に人が落ちることを示しているわけではありません。
緑色の丸は安全地帯を表し、そこに人が駆け込む絵を合わせることで、避難場所の表示を構成しています。

 「丸い地面+駆け込む人」で表示するこのマークは平成28年に決められたもので、割と急速に普及しつつありますが、それまでの「緑十字+青枠」という表示も併設表示されていたり、切り替えが終わっていないところもあるようです。これらの避難場所の表示は細かくみると仕様が微妙にちがっていたりしますので、観察してみると面白いです。

名古屋市港区役所の表示

  津波に対する避難場所は、他に津波から高台に逃げる人を描いたものや左のような津波と逃げる人、それにビルを表示した津波避難ビルの避難場所図も存在します。

2.避難所

右の図は「避難所」を表示しているピクトグラムで、緑地に白の絵で構成されています。
建物と人が駆け込む絵を合わせることで、避難所の意味を表現しています。

3.災害種別注意

高潮、津波、土石流、崖崩れ・地すべりには、その区間に注意を促すピクトグラムが黄色時に黒の絵で三角表示されています。
津波は「波」を、土石流は「川+岩」を、崖崩れ・地すべりは「崖と岩」を表現しています。

4.災害種別一般図

割とシンプルです。

災害を表すための図で白地に黒の絵が四角の黒枠で表示されており、主に避難所がどの災害に対応しているのかを表すために用いられます。
災害種別注意図と同じような絵ですが、「水」を示す波線二本で表示される「洪水・内水はん濫」、「家と火」を表す大規模火災が追加になります。

5.地図記号

国土地理院が作成する地図データに表示される時にはまた異なった表示を使っています。
国土地理院が提供している避難所データには、以下のような表示がされますので、確認するときの参考にしてください。

出典:国土地理院

 インバウンドが増えていることや東京五輪があるということで災害関係のピクトグラムをようやく統一する気になったようですが、一度表示したものはなかなか変わることはありません。
 中には両方併記している避難所もあるみたいですが、いずれにしてもわかりやすい表示で避難者が迷わないようにしてあるといいなと思います。

 そういえば、今日のニュースで避難所で使うピクトグラムについて学生さんが作ったものが大阪市東淀川区で正式採用されたというニュースがありました。日本語の読めない人たちでも避難所に避難してくれば中のどんな場所で何が行われているのかがわかるようなわかりやすいピクトグラムとのことなので、標準化していけばいいなと思っています。
 ちなみに当研究所のある市では、一部地域を除いて災害関係の表示をみることはありません。といいますか、そもそも表示がされていないような・・・。

避難口誘導灯

「非常口」というのはご存じですよね?
消防法では「避難口」と呼ばれていますが、緊急時にその場所外部へ脱出するための出口のことで不特定多数の人が集まるところには設置が義務づけられています。
建物や地下街といった施設や鉄道車両やバスなどの乗り物もこの「不特定多数の人が集まるところ」という条件を満たすので、定めることが義務づけられています。
さて、その避難口を示す誘導灯の存在を意識したことがあるでしょうか?
建物の扉部分から左側向きに脱出する人のピクトグラムは、意識したことがない人でも見れば一発でわかるはずです。
この避難口を示すピクトグラム、現在は国際標準になっているそうで、よく見ないと分からないくらいの違いでしかない避難口のピクトグラムがISO7010の中に規定されています。
それはともかく、今回はこの避難口を示すピクトグラムの書かれている避難口表示標識、避難口誘導標識についてまとめてみました。

1)避難標識とは?
文字通り非常時に避難口及び避難口へ避難者を誘導する誘導標識のことです。
暗闇や煙でも見やすくするため、自光式や蓄光式など最低20分程度は光り続けることを始めとするさまざまな条件が「誘導灯及び誘導標識の基準」で定められています。
これらの表示は離れたところからでも見やすいという理由で天井に近いところに取り付けられることが多いようです。
余談ですが、不特定多数の人が集まる施設の場合には、避難誘導標識に加えて避難経路や現在地を示す地図が備えられていないといけないことになっているのですが、あなたはその施設に入ったとき、すぐにそれを確認していますか?

2)避難誘導灯の種類
避難誘導灯には二種類存在します。一つ目がそこが非常用出口であることを示す避難口標識で緑地に白色、そしてもう一つが避難誘導標識で、白地に緑色となっています。
避難口標識は人のピクトグラムが左を向いていますが、避難誘導標識では人は避難する方向に向いています。また、避難口が両側にある場合には左を向いています。
避難するための流れを図で見ると次のようになります。

3)避難誘導灯の素朴な疑問

煙の中で見るとこんな感じ。

災害等による停電の場合はともかく、火災の場合には煙は高いところに立ちこめます。その際に避難誘導灯が見えなくなるのではないかなと感じるのです。
以前にとある消防の方に尋ねてみたところ「排煙設備のある施設では高いところのみが多いが、排煙設備のない施設では高いところに加えて壁や床などの低い位置にも表示がされている」ということでした。
それからいろいろな施設を観察してみましたが、低い位置に設置された避難誘導灯はあまり見ることがありません。
災害時の暗闇では避難口表示灯は高手に、そして避難誘導灯は低い位置にある方がわかりやすいのではないかと感じています。

床に避難誘導灯がある場所もある。
いざというときに安心できる。

特にスーパーや百貨店などは表示だけ見て避難すると棚や商品にぶつかったりすることがあって危険ではないのかなと感じています。
避難口の位置と避難経路の事前確認、それに強力な懐中電灯を持っていれば危険は回避できそうですが、施設の誘導灯に全面的に頼るのは危険かなと感じています。
また、古い施設だと避難誘導標識もピクトグラムでなく文字だけで表示されているものも残っています。これは古いものについては施設の改修までは法律が適用されないために起きることで、見慣れた「緑+白」だけでなく「赤+白」というものも存在しますので意識して確認するようにしておいたほうがいいですね。

ハザードマップの功罪

 ハザードマップというのをご存じですか。
 自治体によって表示されているものはいろいろ違いますが、ある想定の中で被害の発生する場所を地図に落とし込んだもので「被害予測地図」とも呼ばれます。
 去年の西日本豪雨では、岡山県真備町での洪水ハザードマップと浸水域がほぼ一致したと言うことで脚光を浴びました。
 あなたが住んでいる地域やお勤め先のハザードマップ、一度は見たことがありますか?
 もしまだなら、良い機会ですので自分が住んでいる場所や勤め先にどのような危険が潜んでいるのか確認してみてくださいね。
 ハザードマップは、殆どの自治体が自分のところのホームページ内で見ることができるようにしています。
 該当部分を印刷して、とりあえず安全かどうかを確認してください。

益田市の洪水土砂災害ハザードマップ

津和野町の洪水土砂災害ハザードマップ

吉賀町の洪水土砂災害ハザードマップ(防災マップの冊子の一部になっています)

島根県砂防危険箇所検索システム(土砂災害の起きそうな指定地域の地図です)

国土交通省浜田河川国道事務所(高津川系河川浸水想定区域情報)

 ところで、東日本大震災のとき、被災地に住む多くの人はこのハザードマップを知っており、ちゃんと読み込んでいました。
 でも、そのハザードマップでは「浸水しない」とされた地域の人に大きな被害が出ることになりました。
 最初に書きましたが、ハザードマップというのは「ある想定の中で被害が発生する場所」を表示したものですので、前提条件が変われば当然浸水域も変わることになります。
 余談ですが、上記で掲載しているURLの中でも、国土交通省が想定している条件と益田市が想定している条件が異なるため、両方のハザードマップを比較すると浸水域にかなりの違いがあるのがわかると思います。
 東日本大震災前に出されたハザードマップの想定は明治・昭和三陸津波で、想定波高は8.8mとなっていました。それ以上の津波が来れば当然ハザードマップ以上の浸水域が発生するわけですが、見た人はハザードマップに表示された「津波で浸かるか浸からないか」だけを見て自分の居場所が安全かどうかを判断していたそうです。
 危険を知らせるためのハザードマップが「ここは安全だと誤解させる安心マップ」になってしまっていたのです。
 ハザードマップというのは、自分がいるところの危険度を目で見ることの出来る便利な地図です。
 ですが、条件が変わればハザードマップに書かれる影響範囲も相当変わるということを頭に置いた上で、内容を確認するようにしたいものです。

「おはしも」と避難先

学校や保育の現場では、数年前から避難訓練時に子ども達と「「お・は・し・も」を守りましょう」という約束をしているようです。
「お」は「押さない」
「は」は「走らない」
「し」は「しゃべらない」
「も」は「もどらない」
避難する際にとても大切なことがわかりやすく端的に書かれています。
人を押せば将棋倒しになってけが人が出るかもしれませんし、走れば転んで怪我するかもしれない。
しゃべっていると逃げる速度が遅くなってしまいますし、せっかく助かったのに「まだ大丈夫」や「もう収まった」と判断して戻り、災害に巻き込まれてしまった人のなんと多いことか。
この標語、子ども達だけでなく地域の大人達にも普及していけばいいなと感じます。
ところで、避難訓練はどこまで逃げる訓練をしているのでしょうか。
学校では校庭まで避難して全員を点呼することになっていることが多いようですが、校庭が全ての災害に対して安全かどうかの検証がされているかどうか、私にはどうにも疑問です。
火事の避難訓練では校庭まで逃げて点呼で終了でも大丈夫かもしれませんが、他の災害に備えるためにはもう一歩先まで訓練しておく必要がありそうです。
具体的には「確実に安全だと判断できる場所まで逃げること」。
洪水や地震、津波、竜巻など、災害によって避難すべき安全な場所は変わります。
それぞれの想定で安全な場所を決め、そこに避難する訓練まではやっておくこと。
そして「なぜその避難行動をするのか」ということを徹底して教えておくこと。
そうでないといざ本番のとき、高手に逃げなければいけない洪水で校庭に逃げ出すという妙なことになってしまいます。
避難する先の判断と悲観開始の決断、それに避難指示はあらかじめ判断基準を決めておき、校庭の次の避難先までとりあえずきちんと避難すること。
仮にそこまでのことが必要なかったとしても、それは結果論で安全を確保することを最優先に行動しないといけません.
せっかく素敵な約束をしているので、安全で的確な避難が出来るような訓練までしておきたいものですね。

高齢者などの要支援者ほど事前訓練をしっかりしておこう

 最近あちらこちらで自主防災組織の立ち上げが進められています。
 地域のことは地域で行うという前提の自主防災組織が編成されると、まずはその地域の避難についての計画や訓練がされるようになります。
 その避難計画や避難訓練、避難所運営訓練には、いったいどんな人の参加が予定されているでしょうか。
 多くの場合は自治会役員や地域の元気な人達が中心だと思いますが、高齢者や障害者といった支援の必要な方もちゃんと参加していますか?
 自主防災組織が作る避難計画書では、多くの場合「避難準備・高齢者避難開始情報」が発令された段階で、高齢者や障害者と言った要支援者を最初に避難所に移動させることになっているからです。
 つまり、避難所に一番最初に避難してくるのは要支援者の方々であり、恐らく一番長い時間避難所にいることになる方々なわけです。
 この最初に避難してくるはずの人達も訓練にきちんと参加していますか?
 「寝たきりだから」とか「足が悪いから」とか、「人が多いところへいくと何が起きるかわからないから」といって、要支援者が参加を拒んだり、参加を見送ったりしていませんか?
 でも、要支援者が実際に参加しないとどんな支援や準備が必要なのかわかりません。
 やってみたら、設備や資機材の関係でその要支援者がその避難所では受け入れることができないということもあるでしょう。
 それは実際にやってみないとわからないことなのです。
 要支援者によっては「家以外は病院でないと無理」という方がいるかもしれません。 そんな人は、ちゃんと非常時に病院に収容してもらえる手はずを整えているか、受け入れてもらえない場合はどのタイミングでどこへ移動させるのかを決めているか確認しておかないといけません。
 また、避難してくる要支援者の人たちは、ちゃんと持出用防災セットを準備して持ってくることができるでしょうか?
 彼らが身一つで避難してきた場合、食料や寝具といった物資の準備は避難所に備わっていますか?
 準備できていない場合、どこから誰がいつまでに用意するのか、きちんと取り決めてありますか?
 また、避難所内を安全に移動したり、トイレを使ったりすることができますか?
 食事や寝ることが問題なくできますか?
 それらはやっぱり実際にやってみないと分からない部分なのです。
 いざというとき、助かろうと思って避難してきたが、自分が生きるために必要なものが何も無い避難所で死ぬことになってしまったというのでは悲しすぎます。
 立場の弱い要支援者の人たちほど事前訓練が必要だと言うことを、自主防災組織の方は基本的な事項としておいてほしいなと思います。

 余談ではありますが要支援者の方は生活弱者でもあるので、行政の人間が一緒に参加することで地域に隠れている、本来行わないといけないさまざまな支援ニーズを掘り起こすことも可能になります。
 行政、特に福祉関係の方が参加してもらえれば、要支援者が避難所に避難できない場合の受け入れ先の問題も考えてもらえると思いますので、避難計画を作るときや避難訓練をするときには、防災関係だけで無く、福祉関係の部署にも声をかけてみてください。

お薬手帳は必須の持ち物です

自分が飲んでいる薬。
災害時にどのように調達するか考えたことがありますか?

お薬手帳の表紙
お薬手帳で命を守ろう

薬の必要な持病をお持ちの人や小学生までの子どものいる方は、避難用の持出セット、
あるいは普段持ち歩く自分の荷物の中に、お薬手帳を入れておきましょう。
災害が発生したとき、自分のかかりつけの医院や診療所、薬局が無事である保証はありません。
もし持病を持っている場合、薬が切れたら死活問題ということにもなりますし、
小さなお子さんの場合、薬の合う合わないが非常に重要な問題になってきます。
災害で被災し、避難生活を続けていると、その間にはDMATを初めとする災害支援の医療チームが 被災地に入ってきて、避難所を回って医療支援をしてくれます。
 でも、自分のことを全く知らない医者に対して、短時間で正確に自分の病気や症状、どんな薬を使っ ていたかを完璧に説明できる人なんて殆どいないのではないでしょうか?
 その時、自分に必要な薬を得るための最良の手段となるのがこのお薬手帳なのです。
 この手帳には、いつどんな診療科からどのような薬がどれだけ、何日分出たのかがきちんと記録されています。
 診察する医師は、このお薬手帳の記録を元にして病気を推察し、薬を処方することが可能になるのです。
 また、飲んだ薬の履歴を見ると、副作用のあったものや効かなかったものなども分かることがあるため、
 短い診療時間で適切に診断し、薬を処方することが可能になります。
 毎日飲まないといけない薬のある人は、お薬手帳を持ち歩き、いざというときに使えるようにしておきましょう。
 また、お薬手帳の中のどんな薬をもらったか書かれた部分を、スマホやタブレットで写真を撮ってクラウドサービスに預けておいたり、コピーを取って、そのコピーを避難用の持出セットに入れておくのも手です。
 自分や子どもの身を守る大切な一つの方法として、お薬手帳を忘れないようにしましょう。
 なお、ご存じだとは思いますが、お薬手帳は一人に一冊です。
 医療機関ごと、薬局ごとに一冊ずつ作るのではありませんので、もし万一、そのような使い方をしているのであれば、大至急一冊にまとめるのをおすすめします。