災害用トイレは使えますか

自治会や自主防災組織の研修会では、仮設トイレの組み立てを実際にやってみてもらうことも多い。

 災害が起きると、断水や停電、浄化槽や下水道管の破損などでトイレが使えなくなるケースが結構多いです。
 トイレが使えない状態なのに無理やり使うと、トイレの中は大惨事になってしまいますので、できるならトイレがちゃんと使えることが確認できるまでは使用を禁止するようにしてください。
 そうなると必要になってくるのが仮設トイレや携帯トイレ。
 ただ、個人や自治会、自主防災組織などで準備はしていても、これを組み立てたり使ったりすることはほとんどないのではないでしょうか。
 普段使っていないものは、いざというときにも使えませんので、防災訓練のときには実際に使ってみてください。
 また、避難所で設営が必要な仮設トイレは、訓練のたびに出して組み立て、使いかたをしっかりと確認しておくことはとても大切です。
 トイレは我慢ができません。そのあたりに穴を掘ってすることにしてしまうと、周囲の衛生状態に深刻な問題が発生します。
 災害時のトイレ設営は最優先されることの一つなのです。
 いざというときに慌てなくて済むように、携帯トイレの準備、そして実際に使ってみること。
 仮設トイレは実際に組み立てて、これも使ってみること。
 この部分の訓練は手を抜かないようにしたいですね。

備蓄する飲料水のサイズ

水にもいろいろなサイズがある。

 非常用持ち出し袋や備蓄品を用意するときに悩むのがお水のことです。
 一日2~3リットルの飲料水を準備するとなると、それだけで2~3kgの重さになりますので、非常用持ち出し袋に入れて歩こうと考えると結構大変です。
 とはいえ、水は生き延びるために必須のものですから、非常用持ち出し袋だけでなく、普段使いのカバンや車の中、職場のロッカーなどにも準備しておきたいところです。ただ、よくあるのが、2~3リットルだからといって1リットルや2リットルのペットボトルで準備してしまうこと。
 分量的には問題ありませんが、持ち歩くときや飲むときに大変なのであまりお勧めしません。
 300mlから500mlの容器で複数個持ち歩くようにすると、非常用持ち出し袋の中でもおさまりがいいですし、飲むときも楽です。
 また、一度封を切ってしまうと一日もたつと飲料不適の水になってしまいますので、小分けすることで飲めない水の大量生産も防ぐことができます。
 家の備蓄品などで料理などに使用するのであれば2リットルでも問題はありませんが、直接の飲料用は持ち歩けるサイズにしておきましょう。
 また、お茶やジュースではなく、あくまで水を持ち歩くようにしてください。
 水なら傷口の洗浄や手洗いなど、ちょっとしたことにもいろいろと使えます。お茶やジュースだとこうはいきませんので、もしお茶やジュースを持ち歩くのであれば、それとは別にお水も用意しておいてください。
 ほんのちょっとした工夫ですが、これを意識するかしないかで本番ではかなり変わってきます。
 備蓄する水の量とサイズ、少しだけ意識するようにしてください。

カサカサとボソボソ

体育館などでは思った以上に生活音がよく響く。

 避難所など人が集まっているところの夜に起きるトラブルが「音」です。
 その中でもポリ袋の「カサカサ」という音は非常に不快感を与えてしまうようで、避難所以外、例えば山小屋など多くの人が就寝している場所でトラブルになることがあります。
 非常用持ち出し袋などの防水対策としてポリ袋を使う人も多いと思いますが、できればかさかさしないタイプのポリ袋を使うことをお勧めします。
 また、たくさんの人が集まって就寝している場所では、緊張しているせいか寝ていない人のぼそぼそとした小さな話し声も気になるものです。
 アイマスクや耳栓など、周囲の光や音を押さえる道具もあるのですが、善意の人ばかりではありませんので、確実に安全が確認されていない場合には、そういったものを使うのもどうかと思います。
 対策としては、音が出ないようにすることと、人の声を気にしなくても済むような小型の自立型テントを持ち込むくらいでしょうか。
 しっかりと眠れないと、気力はどんどん失われていきます。
 あなた自身が他の人に被害を与えないように、そして周りから被害を受けないためにも、避難が必要な人は事前準備をしっかりとしておきたいですね。

小銭が必須なわけ

小銭=10円玉だけとは限らない。

 災害後に停電が起きると、電子マネーやクレジットカードは一切使えなくなります。
 そうなるとお店での支払いは現金になるわけですが、お札は釣銭が難しいことからお店で販売を拒否される場合も出てきます。
 非常用持ち出し袋のアイテムの中に「小銭」が入っているのは、公衆電話を使うときだけでなく、手近なものをお店で購入するときにも必要だからなので、数十円ではなく、ある程度まとまった硬貨を準備しておく必要があります。
 出先で被災するときに備えて普段からある程度の小銭を持って歩いておきたいところですが、せめて100円玉1枚、50円玉1枚、10円玉5枚の合計200円は準備しておきたいところです。
 これだけ準備しておけば、飲み物を1本と、公衆電話での電話くらいはできますし、持ち歩きにもさほど邪魔にはならないと思います。
 小銭はいろいろなところであると重宝します。ちょっとでもいいので普段から持ち歩くようにしておきたいですね。

【活動報告】研修会「調理師が教える簡単・おいしい非常食づくり」を開催しました。

研修会の一コマ。それぞれがそれぞれのご飯を作りました。

 去る2月23日に益田市駅前町のNICO HOUSEにて、調理師が教える簡単・おいしい非常食作りを開催しました。
 当日は調理師の秋田様をお迎えし、ポリ袋を使ったさまざまな調理を実際にやってみました。
 ごはん、パスタ、そして茹でパンを一つの鍋で作り、ちょっとした工夫で本当に美味しくいただくことができました。
 非常時にも、あらかじめできることを知っておくことで生活の質を下げずに済ませることができます。
 なかでも暖かい食事は気力を維持するために絶対必要なものですので、作り方をしっかりマスターしてもらえるとよいなと思います。
 ご参加いただきました皆様、そして講師の秋田様に厚くお礼申し上げます。

作っておきたいタイムライン

当研究所のマイタイムライン研修会の風景

 台風や大雨のようなある程度予測できるはずの災害で「逃げ遅れた」ということを割とよく聞きます。
 逃げるタイミングを失ってしまったということなのですが、地震のように突然起きるわけではない災害なのに、どうして逃げるタイミングを失ってしまうのか。
 答えは簡単で、逃げる判断をする時期をきちんと決めていなかったからです。
 逃げるかどうかの判断ができないのですから、逃げられるわけはないし、また逃げるタイミングを失ってしまうのも当然です。
 最近よく耳にする「マイタイムライン」ですが、これは災害時の自分の行動計画を作るもので、いざというときにはこれに従って行動すると、少なくとも逃げ遅れることは格段に減ってくると思います。
 悩むのは行動計画を作成するときで、本番では作成しておいた行動計画に従って何も考えずに行動するようにします。
 そうすることで、その時に判断に迷うという一番時間の無駄な使い方をしなくて済むことになるのです。
 実際にマイタイムラインを作ってみると、避難が必要な人、そうでない人でかなり判断することやそのタイミングが異なってきます。
 文字どおり「自分の」災害時行動計画を作るのだということが、研修会などで作成してみるとわかると思います。
 また、タイムラインに何を書こうかと悩んでしまうことも出てくると思いますので、誰がどんなことを書いているのかを調べてみるのも参考になると思います。
 マイタイムラインはあなたの逃げ遅れや準備不足をできる限り無くすために作成するものです。
 自分の命を守る、そして生き続けることができるような計画をしっかりと考えてみてくださいね。

二種類のポリ袋

耐熱性がある場合には、パッケージのどこかに上限温度の表示がされている場合が殆ど。されていないものは、湯せんには使えないと思ったほうが無難。

非常時に一つの道具にさまざまな機能を持たせておくのは大切なことだと思います。
なかでも、ポリ袋は非常にいろいろなことに使えるので準備をしておくことをお勧めします。
調理や洗濯、保存、臭いの出るものの処分、空気で膨らませれば断熱材など、あっても困るものではありませんので、ある程度数を準備しておくことが重要です。
ただ、準備する際に気を付けてほしいことがいくつかあります。
一つは、耐熱温度を確認しておくこと。
現在市販されているポリ袋は低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンに分かれています。
低密度ポリエチレンの場合、耐熱温度は80度程度であり、湯せんに使うことができません。また、酸素を透過することから酸化しやすいものの長期保存にも向きません。
高密度ポリエチレンは耐熱温度が100度以上あるため湯せんに使えますし、酸素の透過も少ないことからある程度の保存にも使うことができます。
どちらも低温の耐性はありますので、袋の温度表示が低温のみの場合には、低密度ポリエチレンと考えたほうが無難です。
高密度ポリエチレンの場合には、耐熱温度の表示があることが多いですので、そういった商品を選ぶといいと思います。
高密度ポリエチレンはその特性上若干白みがかっていて完全な透明ではありません。また、触ったときにカサカサ音がしますので、ちょっと音が気になる人がいるかもしれません。
ちなみに、食品保存などでよく出てくるジップロックですが、袋のものは低密度ポリエチレンのため湯せんには向きません。
ポリ袋の特性を知ったうえで、非常用持ち出し袋などに常備するようにしたいですね。

チョコとようかん

 甘くて高カロリーで持ち歩きが容易ということで、非常食などに準備されていることの多いチョコレートとようかん。
 お好みにより準備すればいいと思いますが、チョコレートは糖分と脂分、ようかんは糖分の補給が可能です。
 体調が万全であれば高カロリーのチョコレートがエネルギー補給にはいいと思いますが、低体温になっていたり体調が弱っている場合には、チョコレートは体に負荷をかけてしまいますので注意が必要です。
 ようかんは糖質で構成されているので体への負荷はチョコレートに比べると軽いです。熱にも強く、ある程度の期間保存することも可能なことを考えれば、非常食として準備するのであればようかんの方が向いている気がします。
 ただ、ようかんは苦手という方もいらっしゃいますし、どうかするとお茶が欲しくなったりしますので、準備をするときにはようかん単品で自分がそれを食べられるかどうかを試しておく必要があるでしょう。
 練りようかんよりも水ようかんの方が単品での接種はしやすいと思いますが、保存期間は水ようかんの方がかなり短いので悩ましいところではあります。
 ともあれ、非常時に手軽にエネルギーを摂取することのできるチョコレートやようかん。非常食の一つとして準備しておくといいと思います。

72時間と備蓄のこと

 災害時の各家庭の備蓄について、最低3日間準備しろという話は聞いたことがあると思います。
 南海トラフ巨大地震などの話が注目されてからは7日間に延ばされていますが、この最低3日間というのにはきちんとした意味があります。
 3日間とは72時間。現在トルコ・シリア国境付近で起きた大きな地震でも取り上げられていますが、人命の救命率が極端に低下するのがこの72時間なのだそうで、発災から72時間は行政の全ての機能は人命救助に振り向けられます。
 国際緊急援助隊が被害甚大とわかってすぐに出発したのは、とにかく早く現地入りして一人でも多くの人を救助するためで、生き残った人に必要となるテントや各種資機材はそのあと準備が整い次第送られることになっています。
 つまり、どこの国であれ、怪我無く生き残れた人はとりあえず置いておいて、怪我をした人たちや生き埋めになった人たちを救助することに全力が注がれることになるのです。
 怪我無く生き残れた人たちへの対応は、けが人の処置が終わって、恐らく生存者はもう期待できないという状況になって初めて本格化します。
 ですので、人命救助に行政の機能が注がれている間は怪我無く生き残れた人は自力でなんとかするしかありません。
 そういった理由から、最低3日間自助でなんとかできるだけのものを準備しておく必要があるのです。
 とはいえ、実際に大災害が起きると3日ではどうにもならない場合も出てくるでしょう。そのため、現在内閣府防災では7日間程度の備蓄をするように国民に呼びかけているのです。
 たすかった人たちの命を守ることも重要ですが、そのまま放置すれば失われる命をなんとか助けなければなりません。
 あなたが準備している非常用持ち出し袋や備蓄品で、最低3日間の生活維持ができますか。また、もしものときにはどういった行動をとりますか。
 トルコ・シリア国境での地震の状況は毎日マスコミ報道がされていますので、もしこのような事態が自分の周りで起きたら自分がどうするのかをしっかりと考えておきたいですね。

ヘッドライトと懐中電灯

懐中電灯類

 防災グッズとして必ず登場するのが懐中電灯です。
 非常用持ち出し袋などに入れて準備している人も多いのではないでしょうか。
 でも、もしも避難しなくてはいけない場所にお住まいであるなら、懐中電灯の他にヘッドライトを準備しておくことをお勧めします。
 ヘッドライトは文字通り頭のおでこのところにつける懐中電灯で、これがあると両手が空くために夜間に徒歩で避難する場合や夜間の避難所で作業をする場合などに安全が確保しやすいです。
 ただ、ヘッドライトは性能や大きさがほぼ値段に比例しているため、高額なものほど明るさ調整や照らす面積の増減など使い勝手がよく、大きさもコンパクト。逆に値段が下がるほど明るさが一定になったり、かなり大きかったり重かったりします。
 とはいえ、ヘッドライトは懐中電灯の代わりをすることができるので、どちらか一つ持つということであれば、手持ち式の懐中電灯よりもヘッドライトにすることをお勧めします。
 最近ではホームセンターやプチプライスのお店でもいろいろな種類を取り扱っていますので、余裕がある時に自分にちょうどいいものを探してみるといいと思います。