通電火災を防ごう

地震が起きると、電力会社は被災した一帯の送電を止めます。
発災後、電柱や電気施設の確認をした上で通電を再開するわけですが、この時、地震で壊れた電化製品や断線した電気コードがショートしたり、電気ストーブなどの暖房器具が倒れてきた洗濯物や本など可燃物と接触したりして火災が起きることがあります。
これを通電火災と呼びますが、1995年の阪神淡路大震災で起きた出火はこの通電火災が原因とされているものが数多くあります。
また、東日本大震災でも、発生した火災の6割が通電によるものとされ、中には避難所として使われていた施設も、通電火災により閉鎖になったケースもあります。
電力会社でも対応は進めていて、2016年4月の熊本地震では通電火災は0件となっています。
これは通電前に通電予定箇所を広報して回ったり、倒壊した家屋への引き込み線を撤去することにより達成できたものです。
とはいえ、規模が大きくなったり被災範囲が広範囲になってしまった場合には、全ての場所に電力会社が対応できるとは限りません。
そのため、自衛手段として配電盤を「感震ブレーカー付き」にしておきましょう。
感震ブレーカーと言ってもさまざまな種類があり、配電盤内に感震装置を内蔵しているものや設定した揺れが起きた段階でボールやバネの力によりにブレーカーのスイッチを切るするものなど、いろいろあります。


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簡易型感震ブレーカー「スイッチ断ボール3」 SWB03


感震ブレーカーはその名の通り地震に対して有効な電源切断装置ですが、他の災害では機能しません。
そして、地震以外の災害時でもブレーカーで電気を遮断しなくてはいけないことは変わりません。
ただ、いきなり来る地震ではブレーカーによる電気遮断のことを忘れがち。
そのため、自分の財産を守るためにも、周囲を燃やさないためにも、感震ブレーカーを設置するようにしましょう。
また、当たり前ですが普段から電気ストーブやファンヒーターの周りには可燃物を置かない、使っていない電化製品はプラグを抜いておくといったことも意識しておくようにします。
東京消防庁の調査では、東京消防庁管内で発生したストーブ火災のうち、電気ストーブによるものが実に7割を占めていたそうです。
災害時だけでなく、普段からも火災を出さないように意識したいものですね。

り災証明書・被災証明書の使い道

災害が発生すると、地元自治体に申請することでり災証明書や被災証明書がもらえます。
これは「被災しました」という証明書なんですが、この証明書、何に使うのかご存じですか?
今回はり災証明書使い道について確認してみます。

1)準備

り災証明書の申請に限りませんが、被災した建物、家財用品その他、自分が持っていて被災したものの写真は全て角度を変え複数枚写真を撮っておきましょう。
写真があると、り災証明書の申請だけでなく、地震保険などで手続きする際にも重要な資料となります。

2)り災証明書・被災証明書の発行手続き

「り災証明書」は建物が被災したとき、「被災証明書」は建物以外で被災したときに発行されるものですが、自治体によっては全ての被災証明を「り災証明書」にしている場合もありますので、窓口で何が罹災したのかを説明して必要な証明書の手続きを行ってください。
なお、り災証明書の発行手続きについては以前触れたことがありましたので、そちらも参考にしてください。

3)り災証明書・被災証明書が必要なもの

行政などで行う各種減免手続きに必要となります。
減免手続きとは「こんな被害を受けたから○○を支払うことを減額して(免除して)」というもので、例えば「各種税金」「国民健康保険」があります。
また、災害関連の「見舞金や助成金」を受ける場合にもこの証明書が必要となります。
住宅ローンなどローン関係は、り災証明書を提出することで金融機関ほかの貸付条件が変更になる場合があるようです。
また大規模災害の指定をNHKがした場合には、このり災証明書他の書類を揃えて提出することで、受信料の減免がある場合もあるようです。
自治体以外の手続きについては、発生した災害によりその都度適用される場合とそうでない場合があるようですので詳しくはそれぞれが発信する情報を確認するしかなさそうです。

4)り災証明書・被災証明書が必要ないもの

行政への手続きではないものは殆どの場合不要です。
代表的なものが「地震保険」。これは各保険会社の規定で支払われるものなのでり災証明書があってもなくても、独自に判定が行われます。
建物だけでなく家財も対象となる場合がありますので、加入している保険会社に状況を説明し、写真や現物などで確認をしてもらうことになります。
火災保険や生命保険についても、り災証明書や被災証明書は原則として不要です。

証明書の申請は手間がかかる上に時間もかかります。
そのため、自分がなんのためにそれを取得するのかについてよく考え、優先順位をつけて手続きを行うようにしましょう。
また、り災証明書の申請受付は自治体により差はありますが受付期間が決まっています。手続きを忘れると、本来受けられるはずの行政関係の各種申請ができなくなりますので、忘れずに手続きをするようにしてください。

自分がやるべきことと他人に任せることを決めておく

 災害が発生すると、災害対応で自治体や企業は通常の仕事とは異なる仕事が極端に増えます。
 そして災害が収まると、あちこちから来てくれる応援部隊や手伝ってくれるボランティアが復旧や復興に携わってくれることになります。
 人手が増えるのはありがたいことなのですが、その時に支援を受ける側が「自分たちでないと出来ない仕事」と「任せても大丈夫な仕事」の整理をしておかないと、せっかく来てくれた人達が遊んでしまう上に自分たちの仕事は増える一方という事態になってしまいます。
 平時に仕事の整理をしておくことで、支援してくれる人達に効率よく仕事がしてもらえ、自分たちも自分たちにしか出来ない仕事に集中できるというメリットを生むことができるのです。
 仕事の整理は「災害時・災害後になにをしなくてはいけないのかという仕事の洗い出し」と「自分たちでないと出来ないこと」「自分たちがやった方が効率がいいこと」「他の人に任せても大丈夫なこと」「他の人に任せた方が効率がいいこと」にわけて考えます。
 そして、任せる部分はマニュアルを作ってそれを見ればできるようにしておくこと、そして、任せるべき相手が決まっているのならその相手を交えて事前に練習をしておいたほうがよいでしょう。
 自治体の場合だと、例えば罹災証明書はその自治体の職員でないと基本は作成ができません。また、方言の強い地域では応援部隊が電話の内容を理解できない事態も発生しうるでしょうから、それらも被災自治体職員がやったほうが効率的かもしれません。
 逆に避難所の運営や物資の備蓄と配布、資機材の手配といった部分はマニュアルの整備と手順さえ決めておけば、自分たちでやらずに誰かにお任せした方が効率がいい場合が多いです。
 企業だと、会社の根幹に関わる部分は他人任せにできないとしても、インフラの復旧やお得意様先の機材の修理や更新手続き、物資の供給などは協力関係にある他社にお願いすることはできるはずです。
 物資の備蓄や配布といった作業は、普段から作業になれている運送屋さんやホームセンター等に任せた方がうまくいくでしょうし、被災者の安否確認は地元の自治会に任せるのも手です。
 「どこでだれに何をいつ任せるのか」を決めておいてお互いに了解していると、いざ災害が発生したときにさまざまなことが自動で動くことになり、自分たちはやらないといけないことに専念できます。
 いかに自動で物事が動くのかという仕組み作りをしておくことで、さまざまな人的・物的資源を上手に使うことができるのです。
 これは個人でも同じで、被災した後一人で被災家屋を片付けるのはかなり困難ですので、知り合いやボランティアにお片付けを手伝ってもらうのに、どこまで何をお願いするのかをあらかじめ決めておくと、入ってもらったときにすぐに作業にかかることが可能になり、復旧が早く行えます。
 仕事自体を何も情報無しで「丸投げ」では困ります信用をなくします。かといって、全部抱え込んだら精神的に持ちません。
 ポイントを押さえて、任せられる部分は全て応援部隊やボランティアにお任せしてしまう。
 そのことで、いち早い復旧と精神的な落ち着きを取り戻すことが可能です。
 破滅的な大災害で無い限り支援は必ず入ってきますので、受け入れるための準備を怠りなくしておきましょう。
 また、自治体や企業の場合、支援をしてくれる相手との支援協定を結んでおくことも大切です。

プレート境界型地震と活断層型地震

今話題の南海トラフ地震ですが東日本大震災と同じプレート境界型地震で、確率的には30年以内に起きると言われているようです。
わかっているのは確実に起きるということだけで、それがいつかは誰にもわからないというのが今の状態です。
そして、南海トラフ地震が騒がれている中、2018年は島根県西部地震、大阪北部地震、胆振東部地震など大きな地震が続きました。
こちらは活断層型地震でいずれも予測されていなかったところで起こりました。
今回はこのプレート境界型地震と活断層型地震について整理してみたいと思います。

1)プレート境界型地震の起こる原因

日本は4つの大陸プレートがぶつかる場所に存在しており、これらのプレートの動きによって日本では地震がよく起きます。
このうち、太平洋プレートとフィリピン海プレートが北アメリカプレートとユーラシアプレートに潜り込んでおり、この境界部分で潜った地面が壊れたり元に戻ろうとしたりすることで地震が発生します。
これがプレート境界型地震と呼ばれるものですが、海底で起きるためこの時の反動が海に伝わり大きな津波も起こることがあります。
特に太平洋プレートとフィリピン海プレートは動きが活発なため、地震が発生する周期は数十年から数百年と割と短く、規模の大小はあれ確実に起きることがわかっています。
また、北アメリカプレートとユーラシアプレートの境でも衝突が起きているのですが、お互いに押されている力がさほど強くないため、そこまで頻繁に大きな地震が起きるところまでは行かないようです。

プレート境界型地震のイメージ図

2)活断層型地震の起こる原因

これらのプレートが互いに押し付けあうことで陸地のあちこちには歪みが生じます。その歪みに耐えられなくなったことにより発生するのが活断層型地震です。
十万年以内に動いた形跡のある活断層帯には名前が付いていますが国内だけで約2000カ所あり、まだ見つかっていない活断層もあることから日本国内のどこで起きてもおかしくないとされている地震です。
割合表層で起きることが多いことも特徴です。

3)地震の規模と被害の起き方

プレート境界型の地震は一般的に巨大です。激しい揺れが数分間続き、かつ数十年から数百年という短い期間で再発するものが多いようです。
日本の場合は海底で起きることが殆どのため、直接的な揺れよりもそれに付随する津波の方が危険かもしれません。
対して活断層型の地震はプレート境界型ほどの強さと揺れる時間の長さはなく、発生する間隔もかなり長いのが特徴です。
活断層型は「正断層」「逆断層」「横ずれ断層」の3つのパターンがあり、日本列島ができた経緯によるものか、フォッサマグナから東では「正断層」「逆断層」タイプが、西では「横ずれ断層」が多いようです。
「正断層」「逆断層」はその場で上下にずれるため、局地的に激しい揺れと被害がでます。
また「横ずれ断層」は理論的にはどこまでも伸びることが可能なので、一定方向に向けて被害が拡がる傾向があります。

断層の動きは東と西でかなり違うようです。

4)どこまで予測できるか

プレート境界型地震の場合は震源からある程度距離があるため、緊急地震速報が有効です。
また、発生する間隔が数十年から数百年ごとのため、誤差は生じますが起こる時期の予測もある程度は可能です。
ただ、深々度で発生したプレート崩壊による地震は予測が難しく、緊急地震速報が鳴る前に揺れ始めることが多いです。
活断層型地震は表層で起きることが多いため、震源直上周囲では緊急地震速報が鳴る前に揺れ始めることが殆どです。
また、再発する間隔が数十年から数十万年とまちまちなため、次にいつ起きるかは誰にもわかりません。

日本に住んでいる以上、どこに住んでいても地震に遭う確率は0%ではありません。
そして、予測できない地震がどこで起きてもおかしくない以上、備えも必要だということなのでしょうね。

新聞紙は万能選手だ

新聞紙は万能アイテムです。
もしも普段配達してもらっているなら、一週間分くらい手元に置いておくと、いざ災害が起きたときにいろいろなことに使えます。
また、非常用持ち出し袋にも1日分くらいいれておくと、本当に便利です。
どんなことに使えるのか、いくつか例をあげてみることにします。

1)敷物になる

野外では湿気てしまってあまり長くは使えませんが、体育館などに避難したとき、新聞紙が1日分あれば、床に敷くことで断熱材の代わりをしてくれます。
あるのとないのとでは大違い。ブルーシートだけでは寒い日でも、さほど床の温度を気にすることなくしのぐことができます。

2)添え木になる

一日分の新聞紙を四つ折りし、四つ折りの真ん中に折れた腕や足を入れてガムテープなどで固定すると、簡易型の添え木になります。
週刊誌や雑誌でも可能なのですが、柔らかさや使いやすさでは、新聞紙の方が上です。

3)燃料として使う

新聞紙は紙ですから、非常によく燃えてくれます。
くしゃくしゃにすればたき火をするときの焚き付けに使えますし、しっかりと堅く丸めれば、薪のようにしても使うことができます。

4)簡易トイレの吸収剤として使う

断水すると、トイレは基本的に使えなくなります。
大きなビニール袋にちぎったたくさんの新聞紙を入れて便器にはめると、簡易トイレができます。
大小問わず対応できるので、とても使いやすいです。
終わったら、ビニール袋の蓋をきつく縛れば、可燃ゴミとして処理が可能な場合もあります。
自治体によって異なるようですので、気になった方はお住まいの自治体にご確認ください。

5)防寒具として使う

新聞紙を下着の上に挟むと、断熱材の代わりになり、とても暖かく過ごせます。
また、大きなビニールのゴミ袋を加工して上着代わりに着込んで併用すると、かなりの寒さにも耐えることが可能です。
新聞紙は湿気を吸いますので、湿気を逃がさないゴミ袋を着込んでいても、快適に過ごすことが可能です。

6)日用品になる

新聞紙を折り紙すると、スリッパや食器、ゴミ箱など、さまざまなアイテムを作ることができます。

7)退屈しのぎになる

新聞記事を読んだりちぎったり折り紙するのに使えるので、思ったよりも時間がつぶれます。

他にもちょっとしたことでも使えるのが新聞紙です。
最近は新聞をとらないというお宅も増えているようですが、非常持出用防災セットに1日分、家の保管ボックスに2日分くらいを入れておくと、何かと重宝すると思います。
いろいろと試してみてくださいね。

避難所と避難場所と福祉避難所

避難所と避難場所と福祉避難所。
よく似た名称ですが、中身はちょっと違います。
今回は、この3つについて、その違いや中身について触れてみたいと思います。

1.避難所と避難場所の違い

避難場所と避難所。同じじゃないかと思いませんか?
少なくとも、防災のことをやり始めるまで、私はそう思っていました。
災害対策基本法の中でこの二つの違いについては、実はきちんと定義されています。
「避難場所」は法律上は「指定緊急避難場所」となっていて、該当する災害に対して安全な建物や公園などとりあえず逃げ込める「場所」が指定されています。
「避難所」は法律上は「指定避難所」となっていて、災害後、家が壊れたりして住む場所を確保できない人に提供される「施設」のことです。
同じ場所が指定されていることも多いのですが、例えば益田市の場合には「避難場所」は「校庭」、「避難所」は「屋内運動場」というような整理をしているようです。
益田市吉賀町は避難場所及び避難所は施設と住所の一覧表になっていましたが、津和野町は一覧表の他に位置図も作っていて、わかりやすいなと感じました。

2.避難所と福祉避難所の違い

避難者のうち、高齢者、障がい者、乳幼児、妊産婦、傷病者、内部障がい者、難病患者など特別の支援が必要な人(これらの人は「要配慮者」と呼ばれています)のために支援が受けられる施設を避難所として指定するのが福祉避難所です。
避難所と異なるのは、福祉避難所は災害発生当初から自動で設置されるものではなく、被災自治体からの要請で開設されるということです。
福祉避難所として指定できるのは一般避難所内の一部、老人福祉施設、障害者支援施設、保育所等の児童福祉施設、保健センター、特別支援学校、宿泊施設となっています。
自治体と各施設の間で協定を結ばなければ福祉避難所として指定できないのですが、災害時、収容する被災者支援に必要な職員数や資機材を確保できないことから難色を示している施設も多く、なかなか指定が進まないようです。
そのため、福祉避難所という名前は存在しますが、実際に運用できるのかという大きな問題があります。
また、要配慮者に対する配慮は配慮の必要な内容によって収容できる施設が変わるはずですが、現在のところそのような考え方はされておらず、妊産婦も障がい者も高齢者も一緒に収容するような感じになってます。
石西地域では吉賀町のみ福祉避難所の指定を確認できました。

3.支援はどう異なる?

食料や物資などの支援は「指定避難所」に対して行われることが原則になっています。
そのため、自治体の定めた「指定避難所(福祉避難所)」以外に避難した場合、そのままは物資やその他の支援が受けられない事態が発生します。
例えば、地域や有志で設置した「避難所」は支援の対象から外されることが多いようです。津和野町ではこれを「一時避難所」とし「行政の支援がない避難所」と定めていました。
ただ、災害対策基本法では避難所以外の被災者に対しても支援は行わなければならないと決められていますので、実際には自分たちの避難しているところから指定避難所に物資を受け取りに行くような形になると思われます。
また、避難場所に多数の避難者がいる場合には「指定はされていないが指定避難所扱いされる」場合もありますので、細かい運用は各自治体によって変わってきます。
ところで、人工透析や酸素吸入などの医療設備を必要とする人達への支援は、優先度は高いのですが支援はかなり遅れます。できれば被災地外に域外避難して安全を確保するほうが良いでしょう。
妊婦については、かかりつけの病院での出産が不可能な場合、最悪避難所での出産という可能性があります。
かかりつけの産婦人科医に、どのようなものが必要なのか、どのような支援が受けられるのかについて確認しておきましょう。

おんぶと抱っことベビーカー

災害でいざ避難というとき、小さな子をどうやって移動させるかということは割と悩む部分です。
「おんぶ」「抱っこ」「ベビーカー」が3大避難方法のようですが、どれも一長一短です。
今回はおんぶとだっことベビーカーでの避難について考えてみます。

1)おんぶ

避難させるときにもっとも楽で危険が少ないのはおんぶです。
背中に背負っているので、背負っている人の重心があまり狂わず、両手も空いて素早く移動ができるからです。
ただ、最近の小さな子はおんぶされ慣れていないせいか、おんぶ紐で背負うと仰け反ってしまうようで、「避難時のおんぶは危険」としているところもあるようです。
そういえば、抱っこやベビーカーはよく見ますが、おんぶで移動している親子はあまり見なくなったような気がします。
でも、非常時におんぶができるとさまざまなメリットがあります。
食事の準備や家事をするとき、おんぶ慣れさせておくと、いざというときに役に立ちそうです。
また、背中が使えないので、非常持出用防災セットはウエストポーチやベストにセットすることになり、さほどたくさんの資材は持てないのが欠点です。

2)抱っこ

避難時には手だけで抱っこして移動すると衝撃や振動などにより子どもを落としてしまう危険性がありますので、必ず大人の身体に固定する道具を使います。
抱っこひもやスリングといったものを使って移動することになりますが、なにぶん重心が前にあるためおんぶほど軽快に動くことはできません。
また、片手は固定具を支えなければいけませんので原則両手を空けるということも無理です。
ただ、首の据わらない新生児になるべく負担を掛けずに輸送する方法はこれが一番だと思います。
また抱っこで避難する場合、非常持出用防災セットをリュックサックで背負えるのがメリットと言えます。
おんぶ慣れしている子どもが少ないことを考えると、抱っこで避難所まで移動できるような訓練をしていた方がいいかもしれません。

3)ベビーカー

一度に複数の子どもを移動させるときには、ほぼ唯一の手段がベビーカーです。
親も非常持出用防災セットを背負って移動することができ、ベビーカーによっては子どもの資材を載せることも可能です。
ただ、タイヤの半径以上の障害を越えることができないことやベビーカーを押すことで両手がふさがってしまうことが難点だといえます。
また、大量の避難民がいる都会地では、ベビーカーが邪魔者扱いされて破壊される場合も考えておかなければいけません。
避難した先ではベビーカーを子どもの居場所として使うことが出来るので、それもメリットと言えるでしょう。

小さな子どもが大勢いる保育園では輸送用のお散歩車・避難車や多人数用乳母車を使って一気に避難所まで輸送するという方法を取られることが多いですが、これらの運搬車はいずれも車輪の径が大きく少々の障害物は乗り越えられるようになっています。
どの方法も良いところ悪いところがありますので、あなたとあなたの住んでいる地域の実態にあわせて準備しておくことをお勧めします。

リュックサックについて考える

防災セットの準備の中でよく「リュックサック」に触れていますが、なぜだかわかりますか?
リュックサックを使う「理由」は、「両手が空くこと」と「動きを妨げないこと」それに「防災セットが入ること」「ある程度の重さでも持って移動できること」です。
例えば、手提げカバンや肩掛けカバンに非常持出用防災セットを入れてすぐに走れるかというと、かなり難しいと思います。
でも、身体にしっかりと固定できれば、走るのはそんなに難しくありません。
ようは荷物を入れて両手が空いて、自分の動きが妨げられなければよいのです。
そうすると、背負子やボディーバック、普段使いの肩掛けかばんでも、紐やテープなどで身体に固定できれば使えそうだという判断ができます。
子どもを抱えて移動するのであれば、必要なものを詰め込んだベストやヒップバックでも問題ないでしょう。
ここであえてリュックサックを勧めているのは「誰でも使い方を知っていて準備や装備に手間がかからず、たくさんの荷物を入れて運べる道具」だから。
また、リュックサックは大小さまざまなものが市販されていますので、自分にぴったりのものを選ぶことが可能です。
お勧めのメーカーを聞かれることもあるのですが、いろいろなメーカーのものを試してみて一番自分にしっくりくるものがお勧め品です。
その上で、縫い目がしっかりとしているかどうか確認してください。
そして、肩紐の幅が太くて、できればクッションの入っているものにすると長時間背負っていても痛くなりません。
また、背中が当たる部分にはパット、腰と胸に留め具がついているものだと、よりしっかりと身体に固定ができるので楽に移動ができます。
非常持出用防災セットを詰め込むときには、軽いものを下、重たいものを上にして詰めていきます。
着替えや毛布は底に、水や食料品などは上に詰め込みます。左右のバランスを気にして詰め込んでください。
恐らくは一番の重量物となる水は、大きなボトル1本ではなく500ミリリットルのボトル数本にわけると詰め込みやすくなります。
また背中側には新聞紙や敷物を詰めておくと、荷物のでこぼこが気になりません。
この状態で背負ってみると、驚くくらい軽いことに気づくと思います。
試しに、次は重たいものを下、軽いものを上で詰め直して背負ってみてください。
同じ重量のはずなのに、今度は恐ろしく重たく感じると思います。
背負うものに関しては、重心が高い方が自分の体の重心との誤差が少なくなるため軽く感じるのです。
この中には生活用品のストックが入っていて、モノがなくなるたびに入れ替えをするはずですから、いろいろと中を組み替えてみて背負ってみて、自分が一番軽いと思う詰め方を見つけてください。

ゴミ問題を考える

災害が発生すると、やがて大きな問題になってくるのが「ゴミ」です。
災害の後片付けが始まると、一斉に粗大ゴミが集積場に出されます。
また、避難所など多数の人が生活する場では、一カ所で大量の生活ゴミも発生することになります。
上手に処理しないと、臭いや害虫、害獣の巣になったり処分場がなくなったりして環境が不衛生になってしまいますので、ゴミ処理についてどうするかを考えてみます。

1.粗大ゴミと生活ゴミ

災害で発生するゴミは、大きく分けると二つにわかれます。
一つは被災した建物等からだされる「粗大ゴミ」、もう一つが人が生活していく上で発生する「生活ゴミ」です。
どちらも普段から出されるものではあるのですが、災害時にはそれが極端に増えることになります。

2.粗大ゴミの処分

タンスや食器棚、テレビといった粗大ゴミは通常であればそれぞれに回収され、それぞれリサイクルや焼却処分に回されています。
ですが災害時にはその仕分けが難しいため、集積場にいろいろなものが一緒くたに出てくるのが普通です。
少し前までは集積場から直接埋立場に運び込み、すべて埋め立てゴミとして始末していましたが、支援自治体の受入体制不備や処分場のパンク、有害物質の流失という問題が発生することがありました。
そのため集積場から仮置き場へ運んで、本当に埋め立てるしかないゴミと燃やしたりリサイクルできるゴミを仕分けることで、かなりの問題を防ぐことが可能になりました。
ただ、仮置き場に一気に粗大ゴミが入ってくるので、スムーズな仕分け作業にはそれ相応の人手と時間が必要となります。
そのため、ゴミを仕分けるボランティアが募られるようになってきています。
また、生活の糧のなくなった避難者にもここで仕事をしてもらうことで、ある程度の収入を確保してもらうことも可能です。
問題としては、仕分けを行う広大な敷地が用意できるかどうかという点でしょう。

2.生活ゴミの処分

生活ゴミは普段の生活でも出てくる「暮らすために出るゴミ」です。
書類や手紙などの紙ゴミ、食事で使った弁当の空き容器や割り箸、残飯や余った食材のような生ゴミ、トイレやおむつで出された汚物などがこれにあたります。
紙ゴミは、環境的には問題がありますが、暖を取る燃料として現地で燃やすことも可能ですし、弁当の空き容器や割り箸は、供給業者に回収もお願いすれば済みます。
問題になるのは生ゴミと汚物で、これらのゴミは放っておくと悪臭を放ち、非常に不衛生になります。
そのため、廃棄するルール作りと処分するための回収計画を作っておかなくてはなりません。
廃棄するためには、面倒でも普段と同じように各自治体の回収方法に沿ってゴミを区分する必要があります。
生ゴミと汚物の取り扱い、あなたの住む自治体はどのようになっていますか?
処理方法について事前に確認しておき、きちんと回収してもらえるようにしておきましょう。
生ゴミと汚物については、二段階で処理をします。
まずは発生したら必ず新聞紙に包んでビニール袋に入れ、その口をしっかりと縛ります。そのとき、袋の中の空気をしっかり抜くと悪臭をかなり防ぐことができます。
これらのゴミは大きなゴミ袋と大きな蓋付きバケツで作られたゴミ箱に入れますが、このゴミ箱は昼夜使うので、居住区からは少し離れた、でも人目につくところに置きます。
そして、中身が一杯になったらゴミ袋の口をしっかり縛り、居住区画から離れた風下でかつ人家のない場所に作った保管場所に収めておきます。
保管場所は野生動物等に荒らされないように密閉できる容器、もしくはゴミに触れないような容器で作るようにしましょう。
そしてこららのゴミがどういうタイミングで回収されるのかを、自治体とつめておきます。
避難所以外で生活している人は、同じように仕分けしたゴミを避難所の保管場所に集めることで、回収する手間を省くことができます。

人が生きて行くには、どうしてもゴミが出来ます。
特に災害時には、衛生の問題からどうしても使い捨てのものが増え、あわせてゴミも増えることになります。
紙皿にラップをかけて使うことや、ペットボトルの再利用、ゴミの出にくい食事や災害用品をパッケージから出して備えておくことなど、なるべく災害時にゴミを出さないように考えて準備しておくことが大切です。

お湯の確保について考える

 災害が発生すると、ライフラインの復旧までは自力でなんとかしないといけません。
 ですが、冷たい非常食が続くとそれだけで気力が無くなっていきます。
 寒い中や、緊張しているに温かい飲み物を飲むだけで、元気になったり安心したり。
 温かい食べ物や飲み物が気力に与える効果を考えると、どれくらい早く温かい食事にありつけるかというのは、結構重要な問題だと感じます。
 今回は温かい食事や飲み物を作るのに使うお湯について考えてみたいと思います。

1.お湯をどう確保するか

災害が発生し、状況が見えない中でも腹は減ります。
特に乳児はミルクを飲ませないわけにはいきませんが、乳児用ミルクを冷たいまま飲ませるとお腹を壊してしまう可能性があります。
また、ほ乳瓶の消毒にもお湯が必要です。
お湯を沸かすためには、次のものが必要です
(1)水
(2)水を入れる容器
(3)水を温めるための道具
もしも非常持出用防災セットの中に鍋と携帯コンロが入っているのであれば、簡単にお湯を作ることができます。
また、発熱・加熱剤を持っていれば、やはりお湯を作るのは難しくありません。
ただ、持って出られない場合もありますし、コンロがあっても「燃料がない」ということもありえます。
その場合にはどうしましょうか。
もし何らかの熱源があれば、それを借りてお湯を作ることにします。
例えばたき火、ストーブといった暖房器具なら簡単にお湯が作れます。
ローソクや油、純度の高いアルコールとマッチやライターがあるなら、空き缶を使ってコンロを作りお湯を沸かすことが可能です。
油やアルコールを使った手作りコンロについては、インターネットのさまざまなところに作例がありますので、見てみてください。
また、そのうちに当研究所でも研究してみようと思っています。

2.お湯をどう保温するか

沸かしたお湯はそのままにしておくとあっという間に冷めてしまいます。
保温用ポットがあればよいのですが、そうでない場合にはどうするか。
クーラーボックスがあれば、その中に容器毎納めることである程度の保温が可能です。
その時には、食べたいレトルト食品や缶詰なども一緒に入れておくと、次の食事の時にある程度温かいものにありつけます。
また、空のペットボトルに入れてタオルを巻くことで即席の湯たんぽを作ることが出来ます。
これで人を温めると、どちらも温度が維持できて一石二鳥です。
このとき使うペットボトルは「ホット専用」「ホットコールド両用」と書かれたものを使うようにしてください。
表示がない場合には、肉厚のものであれば利用可能です。簡単にくしゃくしゃにできるようなものは熱に耐えられず、変形したりして事故が起きますのでご注意ください。
せっかく作ったお湯なので、できるかぎり無駄遣いしないようにしましょう。

3.保管はなるべく水に近いもので

お湯を作ると、すぐにお茶にしたがる人がいます。
やかんなどでお湯を沸かした後そのまま茶葉を放り込むと一度に大量に作れるため便利なのですが、一度お茶にしてしまうと他のものへの転用が効きません。
お湯であれば、乳児用ミルクやインスタントラーメン、スープにも使えますし、冷めてもただの水に戻るだけなので、お茶を作るときには面倒でもその都度容器を変えて入れるようにしましょう。
余談ですが、粉末タイプのお茶であれば必要な量を必要なだけ使うことが可能な上ゴミも出ないのでお勧めです。