SNSでの情報を見極めるには

 最近の災害で、発生地域の人たちが情報を得ている大事な情報源としてSNSがあります。TwitterやLINE、FacebookといったSNSは、素早くピンポイントの情報を得ることができるため、非常に重宝されています。
 ただ、こういった非常事態の時に間違っている情報を面白がって流す人は必ず発生しますし、それを真に受けて間違った情報を拡散する人もかなりいます。
 先日、読売新聞を読んでいると、LINEみらい財団が情報リテラシー教育の中で、「情報は「だいふく」で確かめる」ということが書いてありました。
 LINEみらい財団のウェブサイトの「情報防災訓練(情報収集編)」の資料の中に出ているのですが、

1.「だ」れが言っているのか
2.「い」つ言ったのか
3.「ふく」数の情報があるか

を確認しろというのがありました。
 「誰が」「いつ」その情報を発信しているのかは、内容の重要度にかなりの差が出ます。
 誰が言っているのかはよく見落とされるものですが、よくあるのが「友達が自衛隊の人に聞いた話」や「知り合いが市役所の職員の話を聞いた」など、また聞きになっているようなものは、基本的に信用しないほうが無難です。また、信用しすぎることは危険ですが「公式」が表示されているものはある程度信用ができると思います。
 それから、できればその人のアカウントを確認し、普段どのような情報を発信しているのかを確認しておいた方がいいです。普段からおかしな情報発信をしている人は信用できませんし、普段と異なる流れの情報発信の文体や写真などの場合には、アカウントが誰かに操作されている可能性もあります。
 また、その情報がいつ時点のものなのかはしっかりと確認しておかないと、よく見ると数時間前の話といったことがよくあります。
 過去、「避難所で水が足りない」といった情報で、いつ発信されたものかを確認しないで真に受けたたくさんの人が水を送り付けて収集がつかなくなったケースもありますので、「いつ」は必ず確認するようにしてください。
 最後の「複数」は同じ情報が複数の人から発信されているかどうかを見極めることになります。とはいっても、同じ記事をたくさんの人がシェアすることもよくありますので、例えば「使われている写真が異なっているか」や「シェアではなく別な人が発信した情報であること」などには注意をする必要があります。
 また、災害時に限りませんがSNSでは似たような意見の人が集まるというクセがありますので、SNSで出ている情報判断が常に正しいというわけではないということを覚えておいてください。
 玉石混合の情報をどう使うのかは受け取る人次第です。
 しっかりと見極めて、どう活かすのかを考えてくださいね。

災害時の情報とのつきあい方・デマなどの見極め方を学ぶ情報リテラシー×防災の教材「情報防災訓練(情報収集編)」を開発(LINEみらい財団のウェブサイトへ移動します)

防災ってなんだ?

 いろいろなことが言われている防災ですが、要は「自分の命を守ること」が目的で、それが達成できるのであれば防災の普及啓発は必要性がかなり小さくなります。
 でも、この「自分の命を守ること」については、なかなかピンとくる人がいないようで、安全と空気はタダと言われた時代の弊害なのかなと思うこともあります。
 日本は数十年にわたって大きな戦争もなく、国土全土が襲われるような災害もなく、割と平和に暮らせてきました。
 人は自分の経験している範囲でしか物事が理解できないことが多いですので、「今まで何もなかったから、この先も大丈夫」と考えてしまっているのかもしれません。
 実際のところは、毎年のようにどこかで大きな災害が起きている時代に入っているわけで、いつ自分が被災者になるのかわからないという時代になっています。
 毎年同じような災害に遭っている人もいるかもしれません。
 そうすると、自分がいつ災害に遭ってもいいように備えをしておく必要があります。
それが防災活動です。
 防災は誰かがしてくれるものではなく、自分で自分の命を守ることです。そして、自分の命と同様に他人の命も守らなければなりません。
 自分が対策しないと、周りの人が巻き込まれることになりますから、自分の命、周りの命を守るための準備はしっかりとしておいてほしいと思います。

災害に備えるのは自分

 災害時の対応については、行政の不手際がいろいろと指摘されることが多いのですが、こと避難に関する限りは自分で対策を備えておくしか方法はありません。
 行政サイドは人的不足、経験不足、研修不足などなど、さまざまな理由でまともな対応はできないと考えてください。
 これら行政サイドの不足を補うために自主防災組織を作るということになったのですが、自主防災組織も行政から地域の防災対応を丸投げされ、高齢化や人口減少、近所付き合いの減少などで活動不全に陥ってしまっているところもかなり多いです。
 どんな人であれ、自分の身を守るのは自分しかいないということを肝に命じておきましょう。
 情報は自分で取りに行く、避難の判断は自分でする、避難は自分でする、といった、自分で判断するための情報を集めて自分で決定し、自分で避難するという手立てを考えておかないといけないのです。
 その過程の中で、自分ではできないことが出てくることがあります。その自分でできないことをどのように周囲に助けてもらうのか、これが重要になるのです。
 自主防災組織も何もしない人をおんぶにだっこで助けて避難させるほどの能力はありません。助けてほしい人が助けてほしいことを伝えることができて、初めて助けてもらえるということを知っておきましょう。
 自力で何とかなる人や、自分の情報を出したくない人は、自分でなんとかすればいいので人の助けは不要でしょう。でも、人の助けが欲しい人は欲しいと言わなければ伝わらないのです。
 現在作成することとされている要支援者の個別避難計画も、避難準備や避難、避難後の支援に至るまですべてを誰かに押し付けるというのでは計画は必ず破綻します。
 その人が何をどこまでできるのか、どうすれば安全が確保できるのかは人によって異なります。まずは自分が自分の身を守るために考えて準備すること。もし自分で何をすればいいのかわからなければ、わかる人を探しましょう。
 繰り返しますが、災害時には誰も助けてはくれません。もし助けがきたとすれば、かなり運がよいか、それとも準備がしっかりとできていたかのどちらかです。
 災害時に身の安全を確保できるように、自分で準備を整えておきましょう。

点の情報、面の情報

 防災の研修会をやっていると、いただくご意見の中に高確率で「避難情報の発表が遅い!」というのがあります。
 行政に物申しておくようにと言われることも多いのですが、当研究所はあまり行政とのお付き合いがないので、直接お伝えいただくようにその都度お話はしています。
 ただ、防災の研修会でよく言われている「避難レベル3で避難に時間がかかる人の避難開始、避難レベル4でその地域の危険な場所の人は全員避難」というのを真に受けると、そういったご意見が出るのも無理はないと思っています。その地域全体が危険になる可能性があるときには、地域の中にはすでに危険になっている場所も当然存在し、避難情報だけを鵜呑みにすると避難が遅れてしまうという事態が発生するからです。
 ただ、日本の場合には、災害が予測されるときに行政から発表される各種情報は、あくまでも「お願い」にすぎませんので強制力はありません。
 同じ地域であっても、住んでいる場所によって早く避難しないといけない人もいれば、避難が必要ない人もいるわけで、それを加味したうえで自分の避難判断をしてほしいというのが、行政側の考え方になります。
 その地域の雨量や雨雲レーダーの状況、川の状態などのデータからその地域がどういった状態なのかを見ているだけで、実際に現地であなたの周囲の状況を見て判断しているわけではありませんから、行政の発表する避難情報は「面の情報」になります。
 でも、あなたも含めて多くの人が知りたいのは、地域がどうなるのかではなく、自分のいる場所がどうなるのかということなわけで、欲しいのは自分のいる場所という「点の情報」になるわけです。
 行政があなたがいる場所という「点の情報」を出すのは無理ですから、それぞれがどのタイミングで避難しなければいけないのかは、それぞれが自分で考えて行動を決めておくしか手はなく、そのためにマイタイムラインと呼ばれる自分の災害時行動計画を作ることが推奨されているのです。
 避難情報はあくまでも一つの目安であって、実際には自分で行動を決めるための鍵を作っておくことが重要となります。
 例えば、近所の側溝の水が溢れたら、とか、裏山から水が出てくるようになったら、といったピンポイントの危険情報を使うことで、あなたの安全確保ができると思います。
 あなたの周りの「点の情報」を上手に使って、あなたの安全を確保するようにしてくださいね。

防災散歩のススメ

 新しい生活環境になった人も多いと思いますが、住み始めた地域のハザードマップは確認しましたか。
 地域によってはすでにハザードマップを配られなくなっているところもあるようですが、国土地理院の重ねるハザードなどを利用して、住んでいる地域のハザードはしっかりと確認しておいてください。
 そして、お休みの時にでもハザードマップを持って実際に地域を歩く防災散歩をしてみてください。ハザードマップを見ながら歩いてみると、ハザードマップを見ているだけではよくわからないことがたくさんわかります。
 また、歩いてみると安全な場所や危険な場所が案外たくさんあることに気づくと思います。
 ついでに地域の特性や地形などもわかりますから、時間を見つけては防災散歩をやってみることをお勧めします。

国土地理院「重ねるハザード」

安全な場所?

 地震が起きると、「安全な場所に避難しましょう」ということがよく言われますが、この安全な場所というのは、具体的にはどんなイメージを持っていますか。
 こういった質問をすると、案外と大人の人は考え込んでしまうことが多く、逆に子どもはいろいろと答えを考えてくれます。
 これは大人は100%安全かどうかで考え、子どもは「ここよりも安全な場所」という視点で考えるからだと思っています。
実は、日本には地震が起きた時に100%安全な場所は存在しないと考えていいと思います。相対的に安全な場所と危険な場所はありますし、絶対危険な場所も存在しますが、安全確実な場所を考えてしまうと、答えが出てこないのではないかと思います。
 質問に回答する子供たちのように、その場所で比較的安全なエリアはどこかということを探す視点はとても重要で、普段から見慣れていないと見つけることは難しいと思います。比較的安全なエリアで、自分の身を守るための格好をしっかりととることができれば、怪我をすることはほとんどないと思いますので、その場のどこなら安全だろうという視点が自然にできるように、普段から意識しておくといいと思います。
 ちなみに、大人と子供で地域の安全点検をすると、子どもの方が危険なものや危険な場所を良く知っていることがわかります。同じところを普段歩いていても、大人は割と漫然としていることが多いのかなとも思います。
 地震がきた時には、訓練とは違って誰もあなたにどうすればいいのかの指示はくれません。自分で自分の身を守れるように、目線や訓練をしておきたいですね。

管理責任を明確化しておく

  

 学校や公民館、集会所や体育館、大規模な寺社仏閣などは、平時はそれぞれの利用がされていますが、災害時には避難所やご遺体の収容所、応援部隊の仮宿など、さまざまなことに転用されることになります。
 もしあなたがこういった施設の管理者だった場合、転用されたときの責任は誰にあるのかについてきちんと明確化されているでしょうか。
 決まっていなかった場合には、かなり高確率でその施設を普段管理している人が災害後も引き続き管理させられる場合が多いですので、災害時にも普段の仕事にプラスしてややこしい仕事がやってくることを覚悟しておきましょう。
 避難所以外の場合には、行政職員や警察、消防、自衛隊、その他入居する団体がきちんと管理してくれるのですが、避難所だけはなぜか施設管理者に押し付けられるケースが多いのです。
 そうならないためには、例えば平時にその避難所を利用する可能性のある人たちを集めて避難所運営委員会を作り、その中で運営手順や管理責任者についてきちんと決めておくことをお勧めします。
 避難所の運営は避難者のことにプラスして、情報や物資の集積所、支援申請窓口などかなり多岐に渡ります。きちんと運営マニュアルややることになれている人がやるのなら問題はないと思いますが、そうでない場合には、自分のことは当座なにもできないことを覚悟しておきましょう。
 ちなみに、こういった避難所に派遣されてくる行政職員は当てになりません。行政職員という看板は背負っていますが、彼らは防災のことについてはほぼ何も知りません。基本的には災害や避難所運営の知識はないと考えておいた方がいいです。
 管理責任を明確化しておくことで、誰が責任者なのかが明確になります。責任者がはっきりしていれば、善かれ悪しかれ行動や判断が素早くできるようになりますので、平時のうちにしっかりとした検討をしておくようにしてください。

避難訓練

 避難訓練は少なくとも年に1回はやることになっているところが多いと思いますが、あなたは参加していますか。
 自治会や地区の避難訓練ではそうでもないのですが、学校や施設等の避難訓練だと、なぜか偉い人ほど参加しないという光景が見られます。
 例えば施設長や園長、校長や、担任の先生も参加せずに指示を出していることもよく見られる風景です。
 自分が目を光らせて全員を訓練に参加させるという考え方はいいと思うのですが、実際に自分もやらないと、本番では怪我したり、避難し損ねたり、場合によっては死んでしまったりすることも考えられますので、できる限り当事者として訓練に参加してほしいと思います。
 訓練参加者は、言われることではなく行動を見ています。
 偉い人が真剣にやれば、それは訓練参加者にもしっかりと伝わるので、きちんとした中身の濃い訓練になります。
 訓練の講評は、講評担当の人を毎回ランダムで選んでしてもらうか、当研究所のような防災の専門家に依頼すれば済む話なので、偉いからと傍観者にならずにしっかりと訓練に参加してください。
 新年度に入って、これから避難訓練を行うところも多いと思います。
 毎年同じような訓練になるかもしれませんが、その場所にあった知見を取り入れて行う訓練なら、必ず本番で役に立ちますから、訓練を目的にするのではなく、訓練によって得られる成果を目的に取り組んでほしいなと思います。

避難所と人目

 何らかの理由で避難所生活をしなければならなくなった場合、いろいろと困ることが起きてきますが、その中でも他人の目については対策を講じておく必要があります。
 普段の生活では、例えば家にいたり、自分の部屋に入ったりすれば他人の視線を防ぐことができるのですが、避難所ではそういうわけにいきません。
 24時間常に人目にさらされる生活を送ることになりますので、それが嫌な場合にはしっかりとした対策を用意しておきましょう。
 具体的には、安いものでいいので自立型のテントを一張準備しておきましょう。それがあるのとないのでは、自分の中の安心感がまったく異なります。
 テントがあれば、最悪避難所以外でも安全な場所があれば、そこで張って生活する場を作ることができます。
 行政が避難所に届けてくれる目隠し用の壁は、数が少ない上に視線を遮るのには中途半端な高さであまりあてにはなりませんので、当座の安全な場所として、自立型テントを非常用持ち出し袋に入れておくことをお勧めします。

虫対策と救急用品

 暖かくなってきてさまざまな虫が登場する季節となってきました。
 自分の家であれば何らかの虫対策をしていると思うのですが、災害後の避難所では、この虫対策は結構深刻な問題になります。
 避難所となる施設に網戸があればいいのですが、学校の体育館等にはそういった虫よけの装備を持っていない施設もたくさんありますし、持っていても災害で壊れてしまっている場合もあるでしょう。
 そうすると個人での虫よけ対策を行うことになるのですが、避難時に持って出る非常用持ち出し袋などに虫よけを入れている人がどれくらいいるのかと考えてしまいます。
 救急用品に入れるものとして、虫よけと虫刺されの薬は入れておいた方が安心だと思います。避難所によっては蚊取り線香を焚いたり、虫の寄らないスプレーを出入口に撒いたりすることもあるのですが、体質的にそういったものがダメな人もいるので、最終的には個人的な装備に頼ることになります。
 また、虫刺されの薬も避難所に置かれていないことの多いアイテムの一つですので、一緒に準備しておくといいでしょう。
 非常用持ち出し袋の救急用品には何を入れるのかについてはいろいろと考えることも多いのですが、普段は気にならないようなそういった部分も考えて準備しておくといいと思います。