危険がわかるかどうか

動物園で見るとこんな感じだけど、実際に出会うとかなり怖く感じるのがクマという生き物。

 ラジオを聞いていたら、恐怖体験として「山でこぐまに出会ったので必死に逃げた」という話をしていました。
 パーソナリティーの方は「子供でもくまですからね。小さいけど」といった感じだったのですが、それを聞いていて、クマの生息域に住んでいる人やそういうところを登山する人ならこの話の本当の怖さがわかるのになと感じ、わからないというのはこういうことなのかと妙に納得しました。
 「子グマがいる」というのは、別に子グマが脅威なわけではありません。いえ、子グマでもよほど小さな個体でない限りは人間よりも力が強くて十分脅威なのですが、それ以上に怖いのが、その子グマのすぐ近くに母グマがいて、状況によっては問答無用で襲われるということなのです。
 たぶん、山に登る人も同じような印象を持つのではないかと思いますが、子グマは無警戒にいきなり現れます。そして、理不尽なのですが母グマは人を見ると子グマに対する脅威と見なしてかなり警戒していて、ちょっとでも母グマが子グマが危険だと感じたら、即座に攻撃をしかけてきます。
 話をしていた人はそのことを前提にしていたと思うのですが、子グマには気を荒くしている母グマがついているということを知らなければ、単に「かわいい小さなクマがどうして怖いんだろう?」という印象になってしまうのでしょう。特に動物園ののんびりしたクマしか知らない人もいるわけで、そうなると怖いということが理解できないのかもしれません。
 人が危険を感じるためにはそのことが危険であるということを知っておかないといけないのだなと、今回の話でちょっと考えさせられました。
 危険を知ること、できれば危険な目にあってみること。
 人が的確な判断をするためには、そういった経験が重要なのかもしれません。

死ぬところを想像してみる

 災害の研修をするときには危険から身を遠ざけることの大切さを説明するのですが、その時に「自分が死ぬかもしれないと思っているか」を聞くことがあります。
 災害の研修会で自分の身を守るための話を聞いているのに、自分が死ぬかもしれないと考える人はまずいません。
 ごくたまにいることがありますが、そういった人はものすごく真剣に研修を受講しています。
 人間の特性なのか、なぜか自分だけは死なないと思い込んでいる人が非常に多いのが気になるのですが、被災したとき、さまざまな理由から自分が死んでしまうことは当然考えられます。
 でも、楽観思想なのか周囲の人はだれか死ぬかもしれないが、自分は死ぬというイメージがつかないというのが実際なのでしょう。
 正直なところ、災害で死んでしまうときには、その死体はあまり人がみることができる状態にはなっていません。
 そういう状態がイメージできればもっと真剣に考えるのかもしれませんが、見ていないものや体験していないものをイメージするのはかなり難しいものです。
 でも、自分が死ぬところをイメージしたとき、どんな死に方をすればいいのかについて、一度考えてみてもいいのではないかと思います。
 誰もいつか死にますが、その原因が災害にならないように、災害で死んでしまうかもしれないという想像をしながら研修会や訓練に参加してくれるといいなと思っています。

二重遭難は絶対に避ける

 災害が起きたとき、逃げ遅れた人を救助するような場面に出会うこともあると思います。
 その場合には、冷たいようですがまずはあなた自身の安全を確保することが最優先。
 危険がなければできる限り人命救助に協力すべきだと思いますが、周囲が何らかの理由でその場にいる人たちが危険な状態になっていたり、安全か危険かの判断ができない場合には、ひどいようですが逃げ遅れた人の救助を諦めて自分の命を優先させてください。
 災害で逃げ遅れた人を救助していて一緒に死んでしまったのでは、せっかくの命が無駄になります。
 災害救助のプロである消防や自衛隊の人たちも、災害救助でまず優先すべきは自分の命であることを訓練で叩き込まれています。
 それはその場で死んでしまうことで、本来なら助けられてはずの大勢の人も道連れにしてしまうことになるからです。
 ひどい言い方になりますが、まずは自分の命を最優先すること。ほかの人の命は、自分の安全が確保されている範囲で救助に参加するようにしてください。

炭酸水で髪を洗う

今回使ったのは右側のほう。さっぱりしたのは冷たいから?それとも炭酸のおかげ?

子供とラジオ体操をしていて、ジャンプの時に膝を痛めました。
もともと壊れ気味の膝なのでケアをしているのですが、今回は痛みが引かないので、整形外科に行って膝の処置をしてもらい、当日は入浴不可、シャワーもダメという指示をいただきました。
ただ、あいにくこの日は暑くて汗だくになってしまっていて、全身がべたべた。
とりあえず体はおしりふきで拭き、頭をどうしようと考え、以前に炭酸水で洗うとすっきりすると聞いたことがあったので、試しにやってみました。
結論から行くと、ものすごくさっぱりします。
500mlのペットボトルに半分残っていた炭酸水を使って頭を洗ったのですが、冷たかったこともあってか、驚くくらいさっぱりして、気持ちよく寝ることができました。
そういえば冷たい炭酸水を使ったヘッドスパなんかがあったなと思い出しながら、非常に快適な状態を手に入れることができたのは本当にありがたかったです。
筆者は髪の毛が微妙な状態なので半分くらい飲みかけのペットボトルで十分でしたが、500mlのペットボトルが1本あれば、髪の毛が多い人でも洗髪できるのではないかと思います。
十分な水が手に入らないときには、こういった手段もあるということを覚えておくといいかなと思います。

お化粧用品も準備する

大規模災害になると、長期で避難所生活を余儀なくされる方もたくさん出てきます。
そして、大勢の人たちと一緒に暮らすわけですから、身支度ができないと非常に恥ずかしいと感じてできるだけ人目に触れないようにお布団からでなくなったり、他人との接触を嫌がるようになってしまいます。
身支度の中にはお化粧も入ってきますので、もしあなたがお化粧をする人であれば、普段使っているもの、少なくとも必要最低限のものだけでも非常用持ち出し袋に入れておくべきです。
お化粧の効果というのは馬鹿にできないもので、本人も周囲も明るくなりますし、きれいな身支度は自分の安心や自信にもつながります。
やりすぎると嗅覚過敏症の人や化学物質アレルギーを持っている人が困りますので、香水などの匂いがするものは避けたほうがいいかもしれませんが、あまり臭いのしないものを中心に備えておくといいでしょう。
支援物資として送られてくるものの中には化粧品はほとんどないと思って、自分のこころの健康を維持するためにも、お化粧道具を入れておくようにしてくださいね。
ちなみに、化粧を落とす道具も一緒に準備しておくと、お肌があれずに済みます。
その時には、水を使わなくてもすむような化粧を落とす道具を準備しておくと安心だと思います。
避難中であっても、できるだけ普段の生活は維持するようにしないといけませんので、お化粧の習慣のある方は、お化粧道具も忘れずに、非常用持ち出し袋に入れて準備しておいてくださいね。

バリアフリーを考える

技術の普及や周囲の理解もあってか、日常生活に支援が必要な人でも地域で暮らすことができるようになってきています。
生活の支援といってもさまざまですが、自分で自分が生活する場所を選ぶことができるようになったことは非常に喜ばしいことだと思っています。
ただ、生活の支援がいる人は、全てを自力でできる人たちに比べると、どうしても避難の判断や準備、行動が遅れがちになってしまうので、対策としては事前に決められることを全部決めて、いざというときにすべてが自動で動くようにしておく必要があると思います。
さて、今回のお題のバリアフリーですが、避難所におけるバリアフリーというと、どうしても車いすや足の不自由な人が移動しやすいようにスロープや傾斜を準備するというのが最初にイメージされることが多いようです。
でも、バリアフリーというのは、そもそもがバリア、つまり「障害」がフリーの状態、障害がない状態といった意味合いになりますので、一般的に思い浮かぶような物理的なものだけではないはずです。
一般的には、生活するときのバリアには4種類あるそうで、「物理的バリア」「制度的バリア」「文化情報面のバリア」「意識上のバリア」がそれにあたります。
災害時には普段のあれこれが先鋭化してしまいますので、どうしても生活に支援が必要な人たちには厳しい状態になりがちですから、事前にさまざまなケースを考えて想定し、備えておく必要があります。
先ほどのスロープ一つとってみても、健常者が考えるスロープと必要な人の考えるスロープでは出来上がりが違うかもしれません。
同じように、避難所に掲示される情報が難しく書かれていてわからない人がいるかもしれません。
状況がわからず、一人一つの配給品をたくさん取ってしまう人がいるかもしれません。
できあがった仮設トイレが使えない人や、仮設トイレがわからない人がいるかもしれません。
そこで生活する人たちがお互いの家庭の文化が可能な限りぶつからず、必要最小限のストレスで済むような避難所にするためには、開設してからさまざまな人の意見を吸い上げる仕組みを作ることも大切ですが、事前にバリアを持っている人たちに参加してもらって実際の避難や避難所の設営や運営で気づいた点を教えてもらい、改善を続けていくしかありません。
バリアはストレスに直結しますし、へたをするとバリアを感じる人の生死にも影響してきます。
その地域に住む人たちがどのようなバリアを持っていて、どのように支援すればとりあえずの生活が確保できるのか。
避難所のバリアフリーはそういうことをしっかりと考えることが大切です。

ただ寝るだけでも立派な避難練習

ただの段ボール箱でも使い方で立派な寝具に早変わり。

 災害時、特に雨や台風の場合には、大抵の場合一晩を避難先で過ごすことになります。ホテルや親戚宅などならとりあえずの寝具はあると思いますが、避難所に行くとそういうわけに行かない場合があります。
 事前に避難先に準備しておくか、早めの避難で一緒に寝具を持ち込まない限りは、寝るときには布団が無い状態です。
 そして、基本的に体育館の備品は一時避難では使わせてはもらえませんので、寝るための方法を考えなければいけません。
 最近ではコッドや段ボールベッドなども準備されるようにはなってきましたが、それも基本的に高齢者が優先で数が足りているわけではありません。
 つまり、寝るための道具も自分で準備しておく必要があるのです。
 テント泊に馴れている人なら寝袋やその下に敷くマットなどは持っていると思いますのでそれなりに快適な就寝ができると思いますが、そうでない場合にはどうするか。
 そのためには、家で布団を使わずに快適に寝るにはどうしたらいいかを練習しておくといいと思います。
 やってみると、意外なものが役に立ったり、使えるとSNSで言われていたようなものが案外役に立たなかったりと、さまざまな体験ができます。
 その中で、携帯性に優れていて自分がそれなりにしっかり寝られるような道具が見つかっていくと思います。
 衣食住は大切ですが、それ以上に必要なものの一つが睡眠です。
 可能な限り眠りの質を落とさなくてもすむように、しっかりと練習をして自分に向いているアイテムを見つけるようにしてください。

ゴミをどう処分するか

災害時にはさまざまなゴミがでる。これをうまく捌かないと後々さらに大変になる。

 災害が発生すると、必ず出るのがゴミです。
 普段の生活分だけでなく、被災したものを処分するためにさまざまなゴミが発生し、それが一度に集中するために、なかなか処分が追いつかないという問題があります。
 そのうえ、災害ゴミは可燃物、不燃物、家電金属、プラスチックを問わず、まとめて出されてしまうために、全てを埋め立てることになり、処分場は一杯になってしまって新たな騒動を生み出すこともあります。
 また、古い町並みのところが被災すると道路のあちこちにゴミだまりができて車が通れなくなるような事態も発生しますから、安全な場所までゴミを輸送する手段も必要になります。
 災害時だからこそ、しっかりとした集積方法や分別方法の周知をしてゴミを出してもらい、それをきちんと処分していくことが必要になってきます。
 これは避難所でも同じで、仕分けしてあるゴミは処分経路に負担はかかっても、処分できない事態にはなりませんので、できるだけ発生元に近いところでしっかりと仕分けをするようにしてください。
 最近では中間保存場所を作って、そこで種類ごとに仕分けすることも始められていますが、充分に広い場所を確保できるのかという場所の問題があって、完全にやるのは難しいようです。
 ただ、工夫次第でうまくいく場合もかなりあるようですので、地域にあわせたゴミの処分について、何も無いときにしっかりと取り決めをしておくといいと思います。
 災害とゴミは切っても切り離せないほど関係性が高いものです。
 素早い復旧には、ゴミの処分計画はかなり重要な位置を占めますので、自治会や行政機関などが平時から準備をしておくことをお勧めします。

電気をどう確保するか

 災害が起きて困るのが停電です。
 発送電分離とかで電力会社の体力はかなり削られていますので、昔のように数日で復旧ということが期待しない方が良さそうです。
 でも、生活に必要な電気はできるだけ早く確保したいですから、ある程度は事前準備しておく必要がありそうです。
 例えば、スマートフォンなどであれば、乾電池や充電池があればとりあえずは凌げます。防災用ラジオなどには発電機能を持っているものもありますから、自分のスマートフォンなどが充電できる出力があるかどうかを確認した上で用意するのもありでしょう。
 また、最近よく目につくのが蓄電池と太陽光パネルのセット。寒い地方の冬だと発電できないかもしれませんが、ある程度の発電量は期待してもよさそうです。
 少し規模が大きくなると、自家発電機が選択肢に入ってきます。燃料供給の問題はありますが、正弦波タイプの自家発電機ならパソコンなどの精密機器にも使えますし、ある程度まではいろいろな家電製品も使うことができます。
 気をつけないといけないのは、絶対に屋内では使わないこと。
 排気ガスで一酸化炭素中毒になって、毎年亡くなる方が出ていますので、面倒でも発電機本体は屋外に設置して、電源コードで家の中に給電するようにしてください。
 余談になりますが、最近は災害対応住宅として屋根にソーラーパネルをつけ、屋内に非常用電源のあるものがあるようですが、使えるかどうかは蓄電機の出力とコンセントの位置次第。本当に使いたいものの電力量と相談の上で使われたらいいと思います。
 普段の生活通りに電気を使おうとすると、自家発電機では追いつかないくらいの電力量を使っているかもしれません。
 省エネや節電という話にも繋がりますが、普段から自分がどれくらい電気を必要としているのかを確認した上で、準備をしておくといいと思います。

避難時に持って行くもの

非常用持ち出し袋にはいろいろなものが必要だとされているけれど・・・?

避難には大きく分けると自宅避難と自宅以外のどこかへ避難する立退き避難があります。
自宅避難では、自宅が災害にあう危険性の無い人と、何らかの事情で立退き避難ができない人に別れますが、どちらにしても被災後には数日は単独で生活できるだけの品を準備しておく必要があります。
自宅以外のどこかへ避難する場合も、持って行ける範囲にはなりますが、一日から二日支援なしで凌げるだけの品は用意しておいた方が安心です。

自宅待機の場合には自宅が安全であることが前提にはなる。
危ないところに住んでいる場合には、基本は立退き避難(水平避難)。


 避難してから支援物資が届き出すまでの間をつなぐものとして非常用持ち出し袋を持って避難することが必要なのですが、内閣府や日本赤十字社などが出している非常用持ち出し袋のリストを見ると、全部揃えると持ち運びできない状態になってしまうことも考えられるくらいたくさんのアイテムが必要だとされています。
 また、市販品の非常用持ち出し袋を見られた方は、そのアイテムの量にぎょっとされたのではないかと思います。
 これらの非常用持ち出し袋は、過去に被災した経験者の聞き取り調査で「なくて困ったもの」や「あったほうがよかったもの」などが書かれていますが、よく内容を見ると、ある場所では重要でもある場所ではそこまででもないといった品もそれなりにあったりします。
 とはいえ、いつどこで役に立つか分からないことを考えると、なかなか「それはいらない」というのも勇気がいるものです。
 そんなときは、割り切って自分がそれがないと生活できない品に絞ってみるのも手です。
 例えば、高齢者の方だと入れ歯や補聴器、老眼鏡、持病の薬など、他の人のものが借りられないものは必須ですし、赤ちゃんならミルクやおむつは絶対に必要です。
 支援物資の届く順番は、より多くの人が必要としている緊急性のあるものが優先されますので、必ず自分が使えるものが届くとは限りません。
 個人的な相性で使えたり使えなかったりするものもこの中に入ります。例えば生理用品などは合わないものだとかぶれや湿疹などが出るようですので、自分に合ったものを準備しておく必要があるでしょう。
 次に、水とトイレ。のどの渇きと排泄要求は止めることがかなり難しいです。
 水道が使えれば大丈夫なのですが、被災すると停電が起き、そうすると給水がストップしてしまう場合も多いです。
 そうなると、飲料水、生活用水、トイレの水は自前で準備しないといけませんが、特にトイレの水は一回流すごとに最低7リットル程度は必要になりますので、水の確保ができない場合には、流しきれずに汚水が溜まり、トイレが大惨事になることが予測できると思います。
 少なくとも、飲み水と携帯トイレは準備しておいて、飲み水の確保とトイレを汚物の保管場所にしないようにしましょう。
 あとは着替えや歯磨きなどの衛生用品、非常食、そして暇つぶしの道具くらいがあれば、最低限必要な装備にはなります。
 非常用持ち出し袋はしっかりと品物を準備した方がいいですが、持っていくのには限界がありますから、迷ったときには0からの足し算で準備するようにしてください。
 最後に、一つだけ注意してほしいのは、お酒は持っていかないこと。
 不安な環境での飲酒は身体にも精神的にも悪い影響が出ます。
 お酒は避難が終わってからゆっくり楽しく飲むことにして、避難所ではお水やお茶で過ごすようにしてください。