【活動報告】小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました

 去る10月26日に益田市立高津小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました。
 避難訓練の見学自体はこれで3年目となりますが、年を追うごとに動きがよくなってくるなと感心しています。
 今回の想定は地震から津波発生で高台への避難という想定。
 地震の緊急速報を流し、安全点検を行った上で校庭に避難、その後近くの翔陽高校へ避難という流れです。

小学校の周囲には歩道が殆ど無く、あっても幅が狭いため普段から安全確保は大変


 6年生は1年生の手を引いて移動するのですが、歩道のない狭い歩行者ゾーンを並んで小走りな移動はかなり気を遣って大変そうでした。

交差点や横断歩道など、流れがまっすぐでない場所はどうしても人が滞留して危険


また、途中で交通量のそれなりにある道路を横断する必要があるため、本番ではちょっと危険になるかもしれないと感じた場所もありました。
参加していた子ども達は真剣に取り組んでいましたし、先生方もかなり真剣に訓練に参加されていました。

避難訓練の講評を聞く。次回に活かせるような仕掛けが必要


 いくつかの課題や気になった部分、ご質問などがありましたので、それは後日報告書として提出させていただくことになっています。
 避難訓練は誰でもできる簡単な訓練ですが、簡単なだけに馬鹿にしてしまうことも多く、成功することが目的になっている場合も多々あります。
 訓練以上のことは本番では殆どできませんので、引き続きしっかりと訓練していただければ名と思います。
 今回、避難訓練の見学を許可してくださった校長先生始めとする先生方、そして訓練を一生懸命していた子ども達に感謝します。
ありがとうございました。

避難訓練は観察者を置いてみよう

 避難訓練では、その施設の人が全員参加して行動することが大切だと思われていますが、実はそうではありません。
 全員が参加してしまうと、その避難訓練を客観的に評価できる人がいなくなり、その避難訓練のよかったところや悪かったところが客観的に判断できず、結局「無事に終わりました」という月並みな結果になってしまいます。
 避難訓練に直接参加せず、側から訓練の様子を見て評価する人がいると、避難訓練のいいところ悪いところが冷静に見えて次の訓練に反映することができます。
 当研究所でもそういった支援はしていますし結果報告書も作成していますが、無理に外部から観察者を入れなくても自分のところで誰かにその役をしてもらうことで、充分に役に立ちます。
 その時の視点は「本当にそれでいいのか?」「なぜそうなったのか?」「自分だったらどう動くだろうか?」というもの。
 例えば、避難訓練中に本当にけが人が出たとします。全員が訓練参加者になってしまうと、その記録は「怪我に対応した」で終わってしまいますが、観察者はそれだけではなく、「その怪我が起きた原因はなにか?」「本番でも発生する可能性はあるか?」「本番で起きたらどうすればその人の命が守れるか」といった視点で報告をしてもらうのです。
 それから、観察者がいると参加者は手が抜けません。特に管理職が観察者になっている場合、参加者は非常に真面目に取り組むことが多いですから、管理職の方には「自分がおらず、連絡もつかない」という想定にしてぜひ観察者になってほしいと思います。
 かつて、とある学校でその学校の避難訓練の見物をする機会がありました。その訓練では、学校から屋外の安全な場所へ避難するという訓練内容だったのですが、屋外への避難中、生徒の一人が溝に落ちて怪我をする事故を目撃してしまいました。
 どういう立場なのかはわかりませんが、近くで世間話をしながらそれを見ていた数名の教員は生徒に「保健室に行きなさい」の一言で特に何をするでもなし。
 見ていたこちらは「団子になって駆け足で避難行動していたため足下が見えなかった」ことや「溝蓋に隙間があって、そこに足が落ちてしまった」こと、「本番時に保健室が機能しているのか?」などさまざまな問題点や疑問点が出てきたのですが、それを指摘したところ、「溝蓋の管理はうちじゃない」や「怪我した人が悪い」「あんたに言われる筋合いはない」といった回答をいただきました。
 もしこれを見ていたのが筆者では無く、その学校の校長や教頭、もしくは教育委員会や保護者などであればこの教員達の反応は確実に変わったと思います。
 学校に限らず、組織として避難訓練するのであれば管理職が自分の目で見て何が問題なのかを洗い出したほうが効率がいいですから、訓練をする際には担当者に丸投げせず、ぜひ管理職の方が率先して観察者になっていただきたいと思います。
 客観的に見る目ができ、その意見が反映できるようになると、訓練の効率や効果は非常に高くなりますので、有意義な避難訓練がしっかりとできると思います。
 なぜか今の時期はさまざまな場所で避難訓練を行っています。余談になりますが、そういった過去の経緯から、当研究所では訓練計画の立案や実行だけでなく訓練観察の視点や訓練の改善点を考えるといった支援も行っていますので、興味のある方は一度ご相談いただければと思います。

避難訓練の意味

 一口に避難訓練と言ってもピンからキリまであります。
 日程と訓練の流れを作ってやったことにするところも居れば、避難訓練をやる週くらいは教えても、あとは全て抜き打ちで対応させるところまで千差万別。
 毎回同じ状況設定のところもあれば、毎回異なる状況設定でやるところもあります。
 これは訓練計画者の問題と言うよりも、その訓練を行うところの問題だと考えてください。
 よくある話ですが、何らかの施設で避難訓練をしたときにトラブルが起きると「なぜトラブルが出るような訓練をさせるのか」と騒ぎ出す人が必ずいます。
 本来避難訓練というのはトラブルが出て当たり前。出ない訓練はやる意味が無いくらいのものなのですが、そういう人は計画に従って完璧にこなすのがよい訓練だと考えていますので、ものすごい勢いで文句を言われます。
 本番環境では、どんなトラブルが起きるかわかりません。どんなトラブルが起きてもいいように、訓練では起こりうるであろうさまざまな想定を組み込んで実施した方がよいのですが、時間や手間、反対者との調整などでなかなかうまくいかないというのが実情でしょう。
 結局のところ、避難訓練がなぜ必要なのかが理解されないと、避難訓練の意味はあまりないなと感じています。もちろんやらないよりはやったほうが絶対にいいですから、どんな状態であれ避難訓練はきちんと行うべきなのですが、せっかくやるのであれば、予定調和では無く、いくつかのトラブルも組み込んでおくと、より実践的な訓練になるのではないかと思っています。
 最初は参加してもらう、それだけでも大切なことです。
 最終的には、参加者が自分の判断でより安全確実に自分の命を守れるようになることが目的ですから、もしあなたが避難計画者になったら、ちょっとだけ何かを仕込んでみると面白いのではないかなと思います。

避難所には何があるか知ってますか

大抵の体育館は場所は広いが何も無い。

 防災センターや備蓄倉庫など、普段から災害対策をしている場所が避難所になる場合を除いて、多くの場合、避難者に対して支給されるものは殆どないといっていいと思います。
 小規模な避難所であれば、それなりの備蓄がある場合もありますが、大規模で通常は体育館や学校として使われている場所の場合、備蓄は期待できないと考えて下さい。
 では、備蓄がある場合にはどのようなものがあるのでしょうか。
 一概には言えませんが、毛布や間仕切り、テントなどは置いてあることも多いと思います。場合によっては段ボールベッドやコッドといった簡易的な就寝用ベッドや敷物用の段ボールが提供されるかもしれません。


 ここで気がついた人もいるかもしれませんが、施設での備蓄品というのは、基本は腐らずに食べたり飲んだりしないものです。
 つまり、自分の命を繋ぎたければ自分の食べる食べ物や飲み物を準備しておかないといけないということなのです。
 最近多い大雨や台風による水害や土砂災害の場合には、避難者に非常食や飲料が提供されることもあるのですが、これはあくまでも被害がまだ起きていない、あるいは限定的で被災区域以外は通常どおりと言った場合に提供が可能なもので、大規模な地震や風水害では物流ルートが寸断されてしまうので、食べ物や飲み物は届かないと覚悟しておいたほうがあきらめがつきます。
 多くの自治体や自治会では、本番環境と同じ状態での避難所設営訓練や避難所運営訓練はあまりされません。かなり大規模にはなりますが、一度避難から避難所に一晩泊まってみると、どのような問題が生じてどういう風に解決すれば良いのかが蓄積できます。
 又、運用側もぶっつけ本番で資機材を使わなくても済むので気分的にもいいと思います。
「避難所には何も無い」
 そういう最悪の状況を前提にしてあなたの避難用アイテムを考えて準備しておくと安心です。

避難所・避難場所と対応する災害

現在推奨されている避難所表示の一例。石西地方では吉賀町のみ対応している様子。

 一口に避難所や避難場所といっても、災害の種類によってはその場所が危険な地帯にあることもよくあります。
 そのため、事前に地域防災計画やハザードマップを確認して目的の避難先がその災害に対応しているかどうかを確認しておかなければならないのですが、実際のところそこまでしていない人が多いです。
 かつては避難所の入り口にはそこが避難所であることを示すことがわかるものがあればいいといった感じでしたが、現在では避難所・避難場所名とそこがどのような災害に対応しているのかを示す表示が統一規格として日本工業規格(JIS規格)に掲載されました。
 全国統一の表示なので旅先で被災したり、日本語がわからなくても絵を見れば避難できるかどうかが分かるようになっているのですが、この規格に従っていない自治体もあるようです。
 ともあれ、お住まいの地域の避難所・避難場所と避難可能な災害についてはあなた自身がきちんと把握しておかないと、いざというときに慌てることになります。
 避難してみたら、避難所が内水氾濫で水没していたというようなことでは困りますので、地域で起きそうな災害と、その災害で避難が可能な避難所についてはきちんと把握するようにしてくださいね。
 そして、できれば複数の避難所・避難場所の確認と、そこに至るまでの避難経路についても決めておいた方がいいと思います。
 決めたとおりになるとは限りませんが、いざというときにあまり頭を使わなくてもすむようにしておくと、避難の時には安心できますよ。

家具の転倒防止対策はしてますか

 おうちの中の災害対策としてよく言われるものに家具の転倒防止対策があります。
 割と簡単で効果が高く、費用対効果もよいのでお勧めしているのですが、なぜかなかなか普及しないのが現実です。
 借家やアパートの場合、返すときに現況復旧条件がついている場合に、家具の固定をビスなどの穴が空くものでしていると、穴の痕を補修しなければいけないケースも多いようで、なかなか実際にするのは難しいとも聞きます。
 ただ、固定しなくても家具の転倒防止は可能です。
 もちろん壁や天井にビスなどでしっかりと固定してあるのが一番安全ではあるのですが、突っ張り棒を使えばある程度の安全を確保することも可能です。
 突っ張り棒で止めるときのコツは、突っ張り棒の天井などに面している部分を板などで補強してやることです。


 そうすることによって、突っ張り棒の棒の部分だけで無く、板全体で家具を支えることになるので、天井板が弱くても転倒を防ぐことが可能です。
 場所によっては突っ張り棒ではなくチェーンやL字金具などを使う場合もあると思いますが、しっかりと止めてあると地震のときだけでなく、水害で浸かったときにも家具が浮いて建物を壊すのを防ぐことができます。
 他にも、家具と天井の間に荷物を入れて家具が揺れないようにする方法もあります。
 一番良いのは普段居る場所に家具を置かないことなのですが、日本ではなかなか難しい条件ですので、寝室には背の高い家具は置かない、倒れる方向を考えて配置するなど、あなたが怪我しないような方法を考えてみて下さい。
 突っ張り棒やそれに使う板などは普通にホームセンターで売っていますので、少しずつでも固定を進めて、もし地震が来たときに家具の下敷きにならないようにしておいてくださいね。

常時と非常時の判断

台風や大雨など、ある程度早めから被害が想定される場合には、どのように対処するか悩ましいときがあります。
公共交通機関では基本的にBCPが準備されていて、その計画に従って計画運休することも増えてきました。
ただ、結果として何も起きなかった場合には、公共交通機関は計画運休したことを責められます。
困ったことに、何も無かったという事実は存在していますから、運休で困った人達だけでは無く、専門家という人達もマスメディアも喜んでバッシングをするわけです。
災害が起きたかもしれないという予測は、そういったときには完全に無視されます。
ただ、公共交通機関の場合、もし災害に伴って事故が起きるとその被害はけっして許容できるレベルではありません。
どのタイミングで常時と非常時のスイッチを切り替えるのかは、本当に判断に迷うと思います。
実はこの判断を迷わせずに実行するためにBCPが存在しているのですが、あまりバッシングすると、今度は現場の判断でBCPに従わないという選択肢が登場してしまうことになります。
そうすると、非常時に備えた計画そのものが破綻してしまいます。
公共交通機関は常に安全確実に利用者を目的地に連れて行くのが仕事です。
その目的を考えれば、災害時により安全な対応を判断することはおかしいことではないと思います。
計画運休は、数日前から予告されるものですから、それに従ったそれぞれの対応を取ることが正しい姿なのではないでしょうか。
日常生活を非常時にシフトすることは難しいものです。
特に通勤通学している人達にとっては、その所属する組織が「非常時とは」という定義をきちんと示しておく必要があります。
以前、大阪北部地震では、鉄道が止まったにもかかわらず会社や学校が通常どおり活動しようとして、あちこちで問題が発生しました。
判断に迷うときに日常を継続するのか、それとも非常時にシフトするのか。この判断、公共交通機関だけではなく、それぞれの組織や個々人もできるように準備しておきたいですね。
あっても、やっぱり判断には迷うのでしょうが。

お店にハザードマップを貼っておこう

 あなたのお宅では、ハザードマップは壁に貼ってありますか。
 家だけでなく、避難経路についても赤線などでわかるように書いて、避難先まで問題ないかを確認するようにしてください。
 ところで、不特定多数の人が集まる食堂やレストランなどの飲食店では、災害が起きたときにどこへ避難すべきか知らない人が多くやってきて利用します。
 いざというときに安全な避難先がわからないとパニックになってしまいますし、少ない従業員の方で完全な誘導をすることも難しいですから、お店の位置と近くの避難所がわかるハザードマップを貼っておくといいと思います。
 貼る場所は、トイレの中。
 小便器を使っているときに目線がある場所や、個室の場合には扉の内側。用を足しているときは案外としっかり見てくれますから、そこへ掲示しておくとかなり効果的です。飲食店に限らず、不特定多数の人が利用する施設では掲示するようにしておくと、ある程度の混乱を避けることができると思います。
 ハザードマップは大事にしまっておくものではありません。活用してこそ作った意味があります。
 掲示したからといってお客様に何かが訴求できるわけではありませんが、いざというときに少しでもお客様の生存確率を上げることができる簡単な取組です。
 広告に混じっていても構いませんので、お店のどこかにお店の位置と避難場所を記載したハザードマップを貼り出してみませんか。

【終了しました】防災マップ作成会を開催します

 毎年当研究所が行っている小学生向けの防災マップ作成会を開催します。
 期日は9月25日10時~12時。場所は高津地区です。
 今回は損保協会様のぼうさい探検隊マップコンクールからタブレット端末をお借りしてデジタルマップによる防災マップ作成をやりたいと考えています。
 集合場所や具体的な防災マップ作成エリアなど、詳しい内容につきましては、当研究所メールからお問い合わせ下さい。
 また、見学についても若干名ですが受け入れ可能です。
 興味のある方のご参加もお待ちしております。
 なお、今回作成したマップは損保協会様主催のぼうさい探検隊マップコンクールに応募することになりますので、ご了承いただければと思います。
 それから、防災マップを作ってみたいとお考えの方がいらっしゃいましたら、そのお手伝いもできると思いますので、ご連絡いただければ幸いです。

避難所に入る順番

 災害では避難者が二種類にわかれます。
 一つは元気で避難後の生活の復旧も早い人。もう一つは年齢や障がいなど何らかの理由で生活再建に支援の居る人、いわゆる生活弱者といわれる方です。
 自主防災組織や自治会が機能している地域だと、水害や台風と言った予測される災害時には事前に生活弱者の方を避難所あるいは福祉避難所に搬送して事前に安全を確保する光景が見られます。
 地域のつながりがしっかりとしているところも、比較的早めに生活弱者の方の避難は早いような気がしています。
 おおざっぱになりますが、事前に予測できる災害の場合だと、生活弱者→健常者の流れで避難所に人が増えていく構図です。
 ですが、これが地震になると光景が逆転します。
 発災後、まず最初に避難してくるのは健常者の方。そしてこういった人達が避難所を埋めたころ、生活弱者の人達が避難してくるといった光景になります。
 それがいけないというわけではないのですが、避難所に避難できる、または入れる順番を決めて地域で共有しておかないと、元気で声のでかいおっさんが避難所の一番いい場所で多くの面積を確保し、支援のいる人は避難所に入れないという光景が発生してしまうことになります。
 こういった光景は、田舎よりも都会で見られることが多いような気がします。
 顔見知りであればそれなりに遠慮や譲り合いもありますが、見知らぬ人であれば何の関係もありませんので、お互い様という意識も沸いてこないかもしれません。
 災害時にその場に居た人は誰もが被災者です。その被災者の中でも、生活への支援がないと生きていけない人もいて、そういう人達が避難所に優先して入れるような環境が作れるといいのですが。