絆創膏と応急処置

 先日とある小学校の防災クラブで応急処置の練習をさせていただきました。
 怪我と手当の方法を考えてきてもらったのですが、その中で「擦り傷は洗ってから絆創膏を貼る。持っていなければ人からもらう」というのがありました。
 その子自身は絆創膏は持っていないとのことで、ではどれくらいの子が絆創膏を持っているのかを聞いてみると、参加者14人中、持っていたのは1人でした。
 ハンカチで止血処置をするということでハンカチを持参してもらうようにお願いしておいたのですが、うまく伝わっていなかったようでハンカチを持っていない子が数人いました。
 少し気になったのが、この子達は怪我をしたときにどのように手当をする気なのだろうかと言うことです。
 自分が子どもの頃には、絆創膏を普段から持って歩いている子が結構いたように記憶しています。当然それだけ擦り傷や切り傷などの生傷が絶えない状況だったのでしょうが、今の子はあまり生傷に縁がないのかもしれないなと感じます。
 怪我をしなければ怪我の手当もする必要はないのですが、怪我をしたときにいざ手当をしようと思っても、手当をするための部材がなければ手当が難しいように感じます。
 今回の練習では、ガーゼを用意して傷口の圧迫止血を行い、その後に包帯を巻いて応急処置をするということを行いました。
 ガーゼや包帯は普段の生活ではあまり使うことはないと見えて最初はかなり手こずっていましたが、慣れてくるとくるくると包帯を巻き、上手に留めるところまでできていました。

初めて巻いた包帯。初めてにしては上出来な巻き方。

 いきなりでは無理だと思いますが、練習していれば本番でもきちんとできるということだなと思っています。
 普段の生活ではさまざまな形で守られているので、応急処置についてもあまり意識することはないかもしれませんが、いざというときには誰かに頼ることはできません。
 自分が主役となって自分や周囲の人を助けていかないといけないことを考えると、クラブだけでなく学校の授業の一つとして取り組んでみてもいいのかもしれないなと思います。

【活動報告】第2回高津小学校防災クラブを開催しました

 去る10月14日、高津小学校のクラブ活動の一つとして採用していただいた防災クラブの第2回目を行いました。
 今回は応急手当のうち出血を止めるための圧迫止血法と安全な場所へ移動させるための搬送法について一緒にやってみました。
最初にみんなに怪我の種類と手当の方法を出してもらいました。毒蛾に刺されたときや切り傷、やけどといった怪我がでてきて、それに対する手当の方法もしっかりと出してくれましたが、やはり最終的には病院で手当をしてもらうという流れで考えてくれていたようで、そこで応急処置と病院での処置という話をさせてもらいました。

クラブの一コマ。手に持っているのが720mlのトマトジュース。対象年齢がちょうど30kg前後の子ども達だったので説明がしやすかった。

 そのあと、なぜ出血を止めなければいけないのかということで、人の血液の量は1kgで約80mlであることと、全身の血液量の30%を失うと失血死してしまうことを説明し、実際に体重30kgの場合で血液量はおよそ2400ml、危険になる血の流出量の720mlは、実際に720mlちょうどのトマトジュースのボトルを見てもらいました。
 驚いた子、眉をしかめた子、子ども達の反応はさまざまでしたが、圧迫止血法は子どもでもきちんと人を助けることのできる方法であることを理解してくれ、その後の演習には真剣な表情で取り組んでくれました。
 圧迫止血法のやり方では、まず最初に自分の腕をハンカチで押さえて圧迫する感覚を掴み、そのあと二人一組でお互いの腕に圧迫止血をして包帯で止めるまでの処置をやってみました。

感染防止のためビニール手袋をつけて圧迫止血から包帯巻きの処置を練習する。ビニール手袋が思った以上に使いにくかったようで、困惑している子もいた。

 ガーゼを使った圧迫止血はすぐに理解できたのですが、その後でやった包帯巻きでは、包帯を巻くのが初めてという子も多く、少し苦労したみたいですが、慣れてくると上手に巻けるようになり、処置終了後は使った包帯をきれいに巻いてしまうところまでやってくれました。
 搬送法は最初は要救助者を一人で運ぶための方法をやってみました。
脇の下から手を入れて腕を両手で引っ張って移動させるのですが、これが思った以上に難しかったようで子ども達は首を傾げながらいろいろと考えてやっていました。

負傷者役の先生を担架に載せて搬送練習。いつ落とされるかもしれないと、先生はおっかなびっくりだった様子。

 最後は担架による搬送法で、これは子ども達が担架の周りをぐるりと囲んでみんなで抱え、実際に担当の先生を載せて御神輿のように練り歩いていました。
 本当は最後に意識の確認から応急処置、安全な場所への搬送までを一つの流れとしてやる予定だったのですが、時間が足りなくてそこまではたどり着けませんでしたが、技術はしっかりと習得してくれたと思っています。
 もし、これから先人を救助しなければならなくなったとき、少しでもこの知識が役に経つといいなと思います。
 今回参加してくれた子ども達、そしてお手伝いいただいた先生に感謝します。

災害時には最初の行動を一つの流れに決めておく

防災計画では、行動をどこまで単純化できるかが使ってもらえるかどうかの鍵になる

 学校や施設での防災計画ではさまざまな災害に対して対応する行動を決めています。
 特に火災と地震に対する計画は、殆どの施設や学校でしっかりと定めているのでは無いかと思います。
 ただ、拝見する学校や施設の防災計画の中の火災と地震の行動計画でちょっと気になる部分があり、なんとなくすっきりしないので、今回は少しそれに触れてみたいと思います。

 火災や地震が発生したときにどのような行動を取るのかというと、まずは安全確保となります。
 では、その次はというと、多くの場合にはなぜか「指示に従って避難を行うこと」とされています。
 それまでは「安全を確保しながら指示を待つ」という時間の浪費が行われてしまい、場合によっては避難できなくなる恐れが発生します。これは「不用意な混乱を防ぐ」ことが目的とされているようですが、安全な場所への移動は行動開始の時間が早ければ早いほど安全に避難完了ができるものです。
 責任者の指示により確実に避難できることの条件として、全体に確実な連絡が行き届き一糸乱れぬ行動がとれることが必要ですが、果たして作られている避難計画書でそのような理想が実現できているでしょうか。
 火災や地震の時に使う避難計画書を作ったことがある方ならイメージができるかもしれませんが、火災や地震の発生時には、責任者は短時間の間に非常にたくさんの判断をし、指示を下さなければいけない計画になっていることが非常に多いです。これは可能な限り状況を制御しようとして起きるもので、例えば軍艦などで行われるダメージコントロールなどの考え方がベースになっています。
 しっかりと訓練されている人達ならばそれでいいのですが、多くの場合には訓練はせいぜい年に一度、多い人でも数回程度では、どんな人であれ複雑な行動を取ることはまず無理だと考えなければなりません。
 ではどうすればいいか。
 答えは簡単で「発生条件に対する行動を単純化すること」です。
 例えば、学校の場合で考えてみると、地震が来て治まったら「とりあえず校庭へ全員避難させる」ことにします。この場合、震度の大小は関係なくそう行動することを決めておくのです。そうすると、何も指示がなくても校庭への避難までは自動化されますから、その間に情報を収集し、次の手順を考える時間が作れます。
 情報を集めた結果、もしもすぐに津波が来るのであれば校庭から高台や校舎の屋上に避難するようにすればいいのです。また、津波発生から到達までの時間が短いと考えられている地域であれば、避難先を高台や屋上にしておいてもいいでしょう。
 火災ではどうでしょうか。
 火災の場合にはどこで起きているのかが問題になります。火災警報器は管制板を見ればどこで火災を検知したかはわかりますから、火災発生箇所だけを放送するようにします。それが事実であるか誤報であるかは後で確認すればいいことなので、まずは避難する。その際に火災発生場所が分かっていればそこを避けて避難経路を選べばいいのです。
 優先すべきは「各自の身の安全の確保」であって「無駄な行動をしないこと」ではありません。
 誰でも安全を確保できるようにするためには、とにかく行動を単純化すること。そうすればとりあえずは何も考えずに行動をすることができます。
 「○○の場合には」というような選択肢は、各自の安全が確保されてから責任者が考えればいいことです。最初の行動が自動化されていれば、その間に責任者は次の安全確保のための行動を決める時間が作れますから最終的により確実な安全が確保されます。
 災害時における安全のための行動は大げさすぎるくらいでちょうどいいと思っています。
 各自の最初の行動が一つに決められている防災計画は、誰もが理解しやすいのではないかと思います。少なくとも、被災時に読み直さないと理解できない難しい防災計画よりもずっと現実的なのではないかと思うのですが、あなたはどう思いますか。

頭の安全を確保する

いろいろな種類の防災用ヘルメット。持っていてもすぐに出せるようになっていないと使いづらい。

 落下物などからの頭の安全確保は、災害時においては大切になります。
 頭が無事で状況の判断がきちんとできるようであれば生き残れる確率は高いですが、他が無事でも頭に怪我をして意識を失ってしまうと、助かる確率は一気に下がってしまいます。そのため、防災訓練などではヘルメットや防災ずきんをかぶって訓練を行うこともよくあります。

ヘルメットと防災ずきん。防災訓練ではよく登場するアイテム。

 ちょっと気になるのは、この訓練でかぶっているヘルメットや防災ずきんが、地震の発生時に本当にすぐにつけることができる場所にあって本当にかぶることができるのだろうかということ。
 ヘルメットや防災ずきんをかぶるために怪我をしてしまっては何にもなりませんので、もしそれらを使うのであれば、日頃から身近に備えておく必要があるでしょう。
 落下する破片から頭部を守るのであれば、そういった丈夫なものでなくても、例えば帽子でも構いません。衝撃に備えるというのであれば、帽子の中にタオルでも入れておけばそれなりの対策にはなります。
 他にも、例えばかばんを手に持っているのであればそれで頭部を守れますし、最悪手で守るだけでもある程度までの保護は可能です。
 避難時には両手は空けておいた方が安全確保がしやすいことを考えれば、帽子が一番いいのかなという気がしています。
 あるいは、普段から頭上を少しだけ意識しておいて落下物がなるべくない場所を選ぶようにしておくと、あえて頭部を保護する対策をする必要はないような気もするのですが、避難するときには必ずそんな場所ばかりでもないわけで、そのあたりが悩ましいところではあります。
 いずれにしても、その場所で何か起きたらどうやって頭を守ればいいのかなということは、普段から少しだけ意識しておいて欲しいなと思います。

防災訓練で思うこと

避難訓練の一コマ。津波に備えて階段を駆け上る。ただ、このとき揺れたらどうなるかは想定されていないし訓練もされていない。

 学校や施設の防災訓練を見学させていただくときにいつも考えてしまうことがあります。
 それは、放送によって状況や行動を説明すること。
 地震や火災の場合、何らかの原因で放送設備が損壊する可能性があります。行政の防災無線のように災害対策がきちんと取られていればよいのですが、学校や施設の放送設備でそこまでの対策が取られているものがどれくらいあるでしょうか。
 放送が使えなくなった状況下の訓練をしておかないと、本番で逃げ遅れたり混乱が起きたりするのではないでしょうか。
 どんな状況下にあっても避難をすることができるような体制、それぞれが自律的に判断して動けるようにしておくことが、訓練だからこそやっておかないといけないことだと考えます。
 防災訓練は失敗することが必要だと、筆者は考えています。
 さまざまな想定をし、その状況に応じてさまざまな判断をし、自律的な安全確保をできるようにするために、防災訓練では大いに失敗をしておくこと。
 本番では失敗は許されないのですから、訓練で失敗をして経験をしっかり積んでおくことが非常に重要です。
 防災訓練は、やることが目的ではありません。やった結果、身を守れるようになることが目的なのです。
 災害ではどのようなことが起きるか誰にもわかりません。
 だからこそ、さまざまな状況を想定して訓練を行うことが必要なのです。
 「訓練は嘘をつかない」という言葉があります。しっかりとした訓練は必ず本番で役に立ちます。
 せっかく実施する防災訓練だからこそ、少しだけ予定調和でないものを入れる必要があるのではないか。
 筆者はそう考えています。

【活動報告】高津小学校で防災クラブを開催しました。

頭を守る方法について一緒に考えてみる。

 今年度から高津小学校様の協力をいただき、小学校のクラブ活動の一つに防災クラブを加えていただきました。
 コロナウイルスの影響で上半期は中止となったのですが、下半期は開催させていただけると言うことで、去る9月9日に第1回をさせていただきました。
 「地震から身を守る」というタイトルで、地震が起きるからくりや地震の時に守るべき身体の部位、避難中に余震があったときの姿勢など、1時間の間いろいろとお話をし、できる部分は実際に身体を動かして体験してもらいました。

当研究所の誇るぐらぐらくん1号で横揺れ体験。机の下で身体を保持することが難しいことを体験してもらう。


 当方があがってしまったのと、お互いに初対面と言うこともあってかなりぎこちなかったですが、防災クラブの子ども達の積極さに助けられました。
 全部で6回となっていますが、当研究所のモットーである「命を守る、命を繋ぐ」ための技術や考え方をしっかりと伝え、また、子ども達から教わっていきたいと思っています。
 上半期はコロナウイルスの影響で当研究所の活動もあまりできていなかったので、少しずつ様子を見ながら対外的な活動を再開していければと考えています。
 担当の大畑先生、そして参加してくれた子ども達に感謝します。

エアコンの室外機にご注意を

台風だけで無く、地震や水害などでも被害に遭いやすいエアコンの室外機。写真のような状態だとどちらのエアコンも使う前に点検が絶対に必要となる。(写真はそなエリア東京の展示物)

 災害の後で家の片付けをするとき、もしもエアコンの室外機がそれまで置かれていた場所から動いていた場合には不用意に触れないようにしてください。
 エアコンの室外機には冷却用のガスが収められていて、これを屋内のエアコン本体に送ることで冷却効果が出ているのですが、定位置から動いている場合には本体と室外機を繋ぐパイプが破損している可能性があり、もし動かすと破損箇所から冷却ガスが噴き出して思わぬ事故が起きることがあるからです。
 まずは電気屋さんに点検をしてもらって、エアコンの状態に問題がないかどうか確認してください。
 問題が無ければ電気屋さんが室外機を定位置に収めてくれると思いますので、その後にエアコンを使うようにしてください。
 なお、エアコンの点検は建物が通電していないとできません。点検が終わるまでは、エアコンと室外機は「動かさない」「触らない」を忘れないようにしてください。

参考
災害時の困りごとと対処法」((株)ダイキンのウェブサイトへ移動します)

家具を固定する理由

野島断層記念館メモリアルハウス内の台所の写真。阪神淡路大震災の野島断層のすぐそばにあった家の震災直後の状況を再現したもの。食卓を食器棚が直撃している。

 災害対策として優先することの一つに「家具を固定する」というのがあります。
では、なぜ家具を固定するのでしょうか。
 一つには倒れてきて下敷きになったり破片で怪我したりすることを防ぐため。
 それから倒れたり壊れたりした家具が避難経路をふさいだりするのを防ぐためです。
 家具に限らず、振動や衝撃で動き出すものは凶器になりますから、複数の固定手段でしっかりと固定し、少々のことでは動き出さないようにしておかなければいけません。
そして、固定する向きにも注意が必要です。幅が広く、奥行きが短い側に家具はよく転倒します。これは揺れや振動に対して奥行きが短い方が先に耐えられなくなってしまうからで、万が一に備えて倒れるときには人のいない方向に倒れるように固定しておきましょう。
 また、家具の扉や引き出しが飛び出さないようにロックや固定をしておきましょう。それらや中身が飛び散るとやっぱり凶器と化します。
 普段使いでいちいちロックは面倒という方には、揺れや振動でロックされるような装置もありますので、それらを活用してください。
 家具が動き出さなければ、怪我をする可能性は低くて済みます。
 また、家具の固定は地震だけで無く、水害時にもこれらの流出や流出による家屋やその他のものを破壊することを止めることができます。
 固定不可の賃貸住宅でも無い限り、あらゆるものは固定しておくことが一番です。
 またどうしても固定できない場合には、固定できないものを集めた部屋を一つ作ることで家具の転倒で下敷きになったり怪我したりする可能性を下げることができます。
 災害対策というと最初に水や食料の心配をするのですが、それよりなにより生き残ることができなければそれ以降の備えが無駄になってしまいます。
 生き残るためには生き残る確率を少しでも上げる準備をすること。
 完璧な対応を取ることは難しいですが、だからといって何もしなければ、あなたが死んだり怪我したりします。そうすると、あなたの救出や安否確認を行うために不要な人手や資機材が投入されることになり、その数が増えれば救出する人手が足りなくなって助かる命も助からなくなります。
 まずは何か一つを固定してみてください。無理なら、せめて倒れてくる方向に人がいない状態を作り上げるようにしてください。
 ほんのちょっとでも作業を行えば、それだけ助かる確率は上がります。
 今からでも遅くはありません。まずは最初の一歩を踏み出して、災害で死なない環境作りに取り組んでくださいね。

手洗いと衛生概念

 災害時に避難所で衛生的な環境を維持するのは非常に困難です。
 ですが、通常時よりも人が密集して集団生活を行う環境であることから、災害時の避難所は通常時以上に衛生的な環境を維持するための努力をしなければなりません。
 ただ、こういった非常時にはその人の行動が先鋭化してくることに注意が必要です。
 特に衛生的な環境を維持するための基本である手洗いを見るとよくわかります。普段あまり手洗いしていない人はこれ幸いと手洗いをしなくなりますし、これでもかと手洗いする人は消毒液を持ち歩くような状態になってきます。
 衛生的な環境を維持することで、避難所内での感染症の流行をできるかぎり押さえるようにすることは、避難所運営の中でかなり上位に位置する仕事です。地域医療に過度な負担をかけないためにも、衛生管理は徹底しなければなりません。
 清潔な水を確保することはもちろんですが、石けんや消毒液の準備、ドアノブや手すりなどの定期的な消毒、トイレ掃除など、衛生管理はいろいろとあるのですが、手洗いという点で考えると、どんな人でも手洗いをしなければならないような仕掛けを作っておく必要があります。
 例えば、避難所に出入りする動線上に必ず手洗い場があるように設計しておくことや、出入り口に大きな手洗いの掲示をしておくこと、館内放送で手洗いをするように働きかけることなど、その避難所に応じてさまざまな方法があると思います。
 一つ有効なのは、子ども達に手洗いをしっかりとさせること。大人というのは不思議なもので、子どもが正しいことをやっているとなぜかそれをまねする人がたくさん出てきます。
 それを利用して手洗いを習慣づけるようにしていくのです。
 最近はやっている新型コロナウイルス対策でも、手洗いは最上位にくるような感染対策になっていますし、手洗いをしっかりするだけでかなりの感染症を減らすことが可能だと言うことを、マスクの入手が困難となった今回のコロナウイルス騒動は教えてくれました。
 避難所において感染症の大流行を防ぐためにも、手洗いだけは徹底しておきたいものです。

【参考】上手な手洗いの方法(厚生労働省のウェブサイトに移動します)

消毒あれこれ

 消毒薬についてはいろいろとあるのですが、今回のコロナウイルス騒動を見ていると、かなりあちこちで混乱が起きているような気がします。
 今回は間違いやすい消毒液についてちょっとだけ触れてみたいと思います。

1.エタノールとメタノール

 学生時代に理科や科学の授業で教わったと思いますが、アルコールにも大きく分けると二種類のものが存在します。
 一つはエタノール。これはエチルアルコールで、「消毒用アルコール」「消エタ」と呼ばれています。一定濃度でウイルスや細菌を殺傷できる能力があることから、今回の新型コロナウイルス騒動では店頭から消えて無くなってしまい、普段から医療ケアが必要とされている方に届かなくなってしまいました。
 消毒に使えるのは60%から95%の濃度のエタノールです。濃度が95%以上ある無水エタノールというものがありますが、こちらは濃度が高すぎで薄めないと消毒効果がありませんので気をつけてください。
 もう一つはメタノール。これは工業用アルコールで、アルコールランプなどの燃料用として使われるものです。人体に使うのは危険です。戦後、アルコールの無かった時期にこのメタノールを飲んで失明や亡くなった方もたくさんいたそうで、呑むと目が散るアルコール、つまりメチルアルコールと覚えろと筆者は教わりました。

2.次亜塩素酸ナトリウム液と次亜塩素酸水

 同じような名前なのですが、効果は全く異なります。
 次亜塩素酸ナトリウムは、ハイターなどの塩素系漂白剤を希釈すると作ることができ、主に食器やドアノブ、テーブルやいすといった「物の消毒」に使います。
 強アルカリ性ですので、手指の消毒など人体に直接使用することは厳禁です。また、霧吹きやスプレーで空気中に散布することも止めてください。
 次亜塩素酸水は塩化ナトリウム水溶液を電気分解したりして得られるもので、基本的な用途は次亜塩素酸ナトリウムと同じく「物の消毒」に使うようにしてください。
 次亜塩素酸ナトリウムと比較すると使用期限や濃度など気をつけないといけないことがかなり多いです。時間による劣化が早いこと、有機物や紫外線によって分解されてしまうこと等、取り扱いには気をつける必要があります。
 いろいろと騒動になっているのですが、製品評価技術基盤機構、通称(NITE)の試験結果では次亜塩素酸水での殺菌はかなり量が必要だということでしたので、空気中に散布することは止めた方が無難かなと、筆者は考えています。
 ともあれ、この二つは名前はよく似ていますが作り方や性質はかなり異なるので混同しないようにしてください。
 ちなみに次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性、次亜塩素酸水は酸性です。

 消毒液にはいろいろとあっていずれも一長一短があります。
 手の消毒で一番確実なのは流水を使って石けんでしっかりと手洗いすることみたいですが、消毒液を手配するときには事故が起きないように、消毒の目的にあった消毒液を準備すること、そしてまぎらわしいものがあるので充分気をつけてください。

【参考資料】
新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について最終報告をとりまとめました。~物品への消毒に活用できます~(製品評価技術基盤機構のウェブサイトへ飛びます)