ご家庭での災害対策についての優先順位についてお問い合わせいただくことがありますが、ことご家庭に関する限り、最優先されるべきは地震対策です。
建物の耐震補強や家具などの転倒防止をしっかりと行うこと。これがもっとも優先されるべき対策です。
というのも、他の災害は発生するまでにいくらかの時間が必ずありますから、その間にある程度の対策や準備をすることが可能です。
でも、地震は予告なしでいきなり発生し、そして発生したときには勝負がついているからです。
地震で大切なことは揺れで死なないことです。建物が倒壊しない、家具の下敷きにならない、落ちてくる物、落ちた物で怪我をしないといった揺れ対策がきちんとできていれば、殆どの場合地震で直接死ぬことはありません。
殆ど、と書いたのは、揺れによる心臓発作やそれに類する病気によってなくなる可能性は0%と言い切れないからです。
日本は地震大国ではありますが、地震で命を失う場合というのは、建物や家具、崖崩れや崩落などにより潰されてしまうか、あるいは揺れで転ぶか、もしくは揺れにより車等の乗り物がどこかへ突っ込んでしまうかといったところで、事前に対策さえできていれば助かる可能性は十分すぎるくらいあります。
怖いのは高層建築の倒壊や部品落下ですが、田舎ではそこまでの高い建物はありませんので、そういった場所に近づかなければ大丈夫です。
とにかく地震対策。これを最優先で行うようにしてください。それ以外の災害については、地震対策ができてから準備しても遅くはないと思います。もし余裕があれば、地震対策に平行して非常用持ち出し袋を備えておけば完璧だと思います。
もちろんこの順位でやる必要はないと思います。これはあくまでも筆者の考える優先順位なので、あなたが考える優先順位で災害対策を考えていただければと思います。
何も備えないのは、この日本ではあり得ないことですので、しっかりと対策をしておいてくださいね。
カテゴリー: 地震対策
【活動報告】第4回高津小学校防災クラブを開催しました
去る12月2日、高津小学校のクラブ活動の一つとして採用していただいた防災クラブの第4回目を行いました。
今回は前回選んだけれどできなかった校内安全点検とビニール袋で防寒着作りの2種類の内容を同時に開催することにしてみました。
当研究所初の講師二人体制での実施でしたが、子ども達はそれぞれに楽しんで作業をしてくれ、怪我もなく無事に終了することができました。
校内安全点検では、限られた時間でしたが校内を見て回り、安全な場所危険な場所の点検をして地図を作成してくれました。
防寒着作りでは、ビニール袋を利用した防寒着をそれぞれの発想で自由に作ってもらい、実際に着てみて「暖かいね」という感想をもらい、最後は記念写真をそれぞれに撮ってみました。
限られた時間ですが、さまざまな体験をすることによって子ども達が自分たちでもできることをたくさん見つけ、実際に行動することで子ども達も大人達も防災意識を高めていくことができるといいなと思っています。
今回参加してくれた子ども達、そして担当の先生にお礼申し上げます。
防災対策は場所ごとに異なるものです
防災関係の本を読んでいるといろいろと勉強になることや面白いことが書いてありますが、基本的には誰が読んでもいいように汎用性を持たせて書かれているようです。
でも、それぞれの防災行動に落とし込んでいくと、同じ対策でも住んでいる場所や位置によって対策が異なる場合が出てきます。
それを無視して準備や備えを行っていくと、いざというときに逆にトラブルを招いてしまうことが起こりえます。
災害対策はオーダーメイドのハンドメイドでやっていったほうが、最終的にうまく自分の身を守ることができるのではないかという気がしていますので、もしもあなたが防災関係の本を読んで備えようと思っていただけていたなら、書かれていることとあなたの置かれている状況を考えて適宜修正していくといいと思います。
例えば、自分で準備する災害食は3日~1週間分を準備しなさいと言われていますが、都会地と地方では準備すべきものが異なります。
都会地では自分に必要なものは全て準備しておく必要がありますが、地方で水に浸からないような場所で田畑を作っている人は、災害食を準備しておかなくても倉庫にはお米、そして畑には野菜があると思います。そうすると、全てを準備しなくても、缶詰や何かを用意しておけば当座は充分凌げるでしょう。
また、水の確保でよく出てくるお風呂の残り湯ですが、これを置いておくことが正解の場所と、そうでない場所があります。
一軒家やアパートなどの1階にお住みであればお風呂の残り湯は置いておく方が後で水に困らなくて済みますが、2階以上のアパートなどに住んでいる人は、残り湯は速やかに抜いておいた方が後のトラブルが少なくて済みます。
二階以上が地震で揺れると、風呂の水は風呂桶からこぼれ出します。そのこぼれた水が床下に流れ込んで、階下での水漏れ騒動になり弁償するような場合もでてくるのです。
一つ一つは小さなことですが、あなたが快適に被災後も生活をするために、自分に必要な防災行動を考え、準備しておいてくださいね。
災害後のトイレ、使えるか使えないか。
唐突ですが、あなたのいる場所のトイレはどういった汚物処理をしているかご存じですか。
大きく分けると、くみ取り型、浄化槽型、そして下水型にわかれると思いますが、それぞれの処理方法によって災害後に使う方法が異なるので注意が必要です。
いちばんシンプルなのはくみ取り型で、この場合には例えばくみ取り槽に水や汚泥が溜まってしまうような水害でも、くみ取り槽に溜まった汚泥や水を吸い出せばすぐに使えるようになります。
また、他の災害でも水があればくみ取り槽へ流すことが可能なので、トイレに関して受けるダメージは少なくて済みます。
もちろん最終的な点検は必要になりますが、とりあえず水さえあれば簡易トイレなどを使わなくてもトイレを使うことが可能です。
次は浄化槽型。水害で汚泥などに浸かった場合には浄化槽の整備と点検が必要になりますので、それが終わるまでは使うことはできないと思ってください。
浄化槽自体が水に浸からなければ、曝気槽のポンプに通電することで浄化槽の機能事態は維持することが可能ですので、流す水とポンプを動かす電源があればトイレを使うことは可能です。
最後に下水型ですが、これは基本どんな災害でも使えなくなっていると思ってください。
下水管は非常に詰まりやすいので、水で汚物を流し込むと途中で詰まってしまいます。そうすると大規模な修繕が必要となってしまうので、下水管の点検が終わるまでは全面的に使用禁止になります。
また、マンホールトイレなどもありはしますが、下水処理の構造上あまり汚物を落としすぎると詰まってしまうので、マンホールトイレを設置する場合には設置しても良い場所をあらかじめ選定しておく必要があることを覚えておいてください。
被災後、点検が終わるまでは携帯トイレや簡易トイレを使うようにしましょう。
おまけですが、集合住宅のトイレでは、2階以上のトイレは使用不可です。もしも上層階でトイレを使った場合、途中の汚水管が破損していると破損した場所から汚物が噴き出して大惨事が起こります。
そういった事態になった場合、汚物が噴き出した場所の住人から汚物を送り込んだ住人が訴えられたりすることがありますので、集合住宅の場合は処理方法を問わず、点検完了まではトイレは使用禁止です。
トイレに関するさまざまな情報はありますが、まずは自分の住んでいる場所や普段でいるしている場所の環境を確認し、災害後に自分が汚物で二次被害を出さないように充分気をつけてくださいね。
布団の周りに履き物を置く
寝ている場所には履き物を置くとガラスなどを踏んでも安心して避難ができます。
履き物と言っても、運動靴やスリッパなどいろいろとありますが、運動靴など屋外で使うものを布団の周りに置くのは抵抗がある方もいると思います。
また、壊れたものの破片が靴の中に入ると、慌てているときにはそのまま履いてしまって怪我をしてしまうこともあるかもしれません。
準備するのはスリッパでいいと思うのですが、屋外避難することを考えると、普通のスリッパでは無く、かかと付きの庭やベランダなどで使うようなものが安全でいいと思います。
必要とされる機能は、すぐに履けて足の裏を守ってくれ、ある程度の距離を歩くのに支障のないことです。
そのことを考えて、自分が歩きやすい履き物を準備しておくといいと思います。
どうにも落ち着かないのであれば、たびや厚手の靴下などでも素足よりはマシです。
普段履き物を履いて屋外を移動している人にとっては、屋内の小さな破片でも歩けなくなってしまう可能性がありますから、なるべく足の裏を守れるように準備しておきたいですね。
ダンゴムシのポーズをやってみよう
いろいろ言われることも多いのですが、地震の時に身を守るための「ダンゴムシのポーズ」は理にかなっていると思っています。
頭と首、お腹、そして手首、足首、ももの付け根の太い血管を守り、揺れにも転がらなくて済むポーズなのですが、正しくポーズを取らないと逆に怪我をするかもしれません。
身体が硬いととっさにできないポーズでもありますので、まずはゆっくりと練習を兼ねてやってみるといいと思います。
最初は正座をします。
それから背中を丸めながら前に倒れます。
頭は片手で後頭部、反対側の手で首筋を隠します。その時、手首が露出しないしないように注意してください。
足首はくじかないように気をつけてください。
この姿勢は縦揺れにも横揺れにも耐えられる非常に安定した姿勢ですので、素早くできるように練習しておくといいと思います。
一つ注意しておきたいのは、この姿勢を取っても屋根や天井が落ちてきたり、家具が倒れてきたりすると怪我をしてしまったり死んでしまったりします。ダンゴムシのポーズはあくまでも小さなものの落下などから身を守るためのポーズですので、家具の固定や耐震補強が必要なことは言うまでもありません。
ところで、足の不自由な人や身体が動かしにくい人はダンゴムシのポーズを取るのが難しいかもしれません。
そういったときは、とにかく重心を下げることです。
具体的には、座ったりしゃがんだり、なるべく頭を地面に近い位置に下げること。
頭は体重の1/10の重さがあり、首という細い部分で支えられているので揺れで振られると転倒しやすくなりますので、身体が振られないような姿勢を考えておくとよいでしょう。
地震はいつどこで遭遇するかわかりません。とっさの時に自分の命を守れるのは自分自身ですから、とっさの時に身体が動かせるように練習しておいてくださいね。
支援物資の物流について考える
災害後の復旧が速やかに進むかどうかは被災者の安心をいかに獲得するかにかかっています。
必要なものがきちんと手に入る、衛生環境が確保できるといった条件が満たせれば、とりあえずの混乱は防ぐことが可能です。
そのためには、支援物資を輸送するための物流網を確保する必要があります。
大量に支援物資を運び込み仕分けをして被災地へ輸送する物資集積拠点、そして被災地内で小分けし、各避難所へ配送する物資集積基地、最後は避難所にできるデポ。
これらが上手につながることが必要となってきますが、こういった物流網を行政が設計・管理することは、人的にもノウハウ的にもほぼ無理です。
立て続けの災害のおかげで、物資集積拠点や物資集積基地の指定や運用は運送業者さんに任せた方が効率的だと言うことが認識されてきたようですが、物資集積基地からもよりのデポ、そしてデポから被災地の住民に物資が渡る部分が現在うまくつながっていないところが多いです。
運送屋さんが避難所まで持ってきた物資をいかに早く確実に必要とされる人の手に届けられるのかというところは、被災前にどれくらい物流について真剣に考えてきたかに比例しますから、避難所運営委員会がそこまで考えて運営設計をしているかどうかが鍵になります。
避難所は物資と情報の両方が集積する場所ですから、それらを避難所への避難者だけではなく、被災地域の人達に物資や情報を届ける必要があります。
災害対策のラストワンマイルと呼ばれる避難所から地域の被災者への物資や情報の伝達方法を、一度検討してみて欲しいと思います。
家の周りのお片付けと防災
突然ですが、あなたのおうちの外回りはきれいに片付いていますか。
水害や台風といった大きな災害がくるとわかっているときには来るまでのところできれいに片付けて風で飛びそうだったり水で流されそうなものは片付けたりしますが、できれば普段から片付けておきたいものです。
というのも、竜巻や突風といった予告なしにくる強い風が吹くと、無防備に散らかしていた様々なものが風で吹き飛ばされてあちこちに散らかってしまいます。
その中には道路に落ちて通行を妨げたり、飛んでいった先で建物を壊したりガラスを割ったり、へたをすると人にぶつかって怪我をさせることになっているかもしれません。そういったことを防ぐためにも、普段から家の周りはきちんと片付けておくことをお勧めします。
全部を片付けるのが難しい場合には、風の吹く方向を確認して、風の影響を受けそうな場所だけでも片付けておくとかなり状況が違うと思います。
風だけで無く、地震の際にも、片付いていない場所では大きな損害が起きる可能性がありますから、片付いておいて損はありません。
もう少しすると年末大掃除をされることもあるのではないかと思いますが、その際に風にものが飛ばされないようにする対策についても考えておいてくださいね。
ブルーシートを準備する
地震で被災した後、家の復旧時に必要にして手に入らなくなるものの一つにブルーシートがあります。
建設現場などで使うことが多い青色のビニールシートで、被災した家屋の屋根や壁などの応急修理に必ずと言って良いほど登場します。
大阪北部地震などで屋根にブルーシートがかかったたくさんの家を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
避難所の場所取りや間仕切り、屋根や壁の応急修理資材、場合によっては仮設テント、家の中のものを一時避難させるための仮置き場など、使おうと思うといくらでも用途があるので大規模災害になると数ヶ月程度は手に入らなくなることもありますが、家屋の応急修理では早さが必要となります。屋根などは、雨が降る前にブルーシートをかぶせて雨漏りしないようにしておかないとそこから入ってくる雨や湿気で家が駄目になってしまうこともありますから、屋根を覆えるくらいのブルーシートは備蓄しておいた方がいいでしょう。
ただ、このブルーシート、基本は消耗品ですので数年もすると劣化していくことがありますから、なるべくしっかりとしたものを光の当たらない劣化の進みにくいところに保管するようにしましょう。
また、ブルーシートは水害時に土のうと一緒に使うことで応急的な水害対策もできますので、やり方を知っておくと浸水対策時に助かると思います。
なお、ブルーシートについては以前触れたことがありますので、そちらを参照していただければと思います。
これからの季節、水害はあまり心配しなくてもいいかもしれませんが、大きな災害が起きる前に準備しておきたいですね。
耐震化する意味
各自治体が耐震補強に対する補助を行っているようですが、なかなか耐震補強が進んでいない現実があります。
一般住宅に限らず、会社や古いビルなどでも耐震化が進んでいないのですが、予算がないからといって後回しにしていい問題ではないことに気づいている方がどれくらいいるのかなと考えます。
震度6強以上の地震に遭った場合、古い家や会社、ビルなどは倒壊する危険性があります。
石西地方でもいつ揺れてもおかしくないと言われている弥栄断層が存在していますが、これが動くと最大でマグニチュード7.7程度の地震が起きる(政府地震調査研究推進本部)と予測されています。
情報が少ないためにいつ頃動くかは不明ですが、いつ動いても不思議ではないということでもあるので、今この瞬間にも揺れるかもしれません。
でも、もし地震が発生したら、その時になって慌てて地震対策をしようとしても手遅れです。地震で生き残るためには、とにかくものの下敷きにならないことですが、古い家屋に人がいて倒壊した場合、かなりの確率で圧死することになってしまます。これは運が悪かったでは済みません。耐震補強しておけば助かったわけですから、想定外では無く人災になるわけです。
特に会社やビルなどで倒壊が起きたとしたら、耐震補強にかかる経費以上にさまざまな出費を強いられた上に信用まで無くなるという、ある意味では致命的なダメージを負いかねない状況になります。幸い建物全てを耐震補強しなくても一部を補強したり一室だけを補強するなど、最近ではいろいろな方法がありますので、いくらかお金をかければ対策は充分に取ることが可能な時代になっています。
地震の怖いところはいつ来るか分からないところですが、地震は地面が揺れるだけですから、対策さえきちんとできていれば死ぬ可能性を下げることができます。
繰り返しになりますが、地震で倒壊した家屋の下敷きになって圧死することは想定外ということができません。
耐震補強は高く感じるかもしれませんが、あなたや従業員、関係する人のの命の値段と考えてみたら、それでも高いと感じますか。
かけた費用の分だけは確実に安全が確保できる。そういう意味では、地震は相手にしやすい災害なのかもしれませんね。