災害対策、特に地震では対策をするときに一番最初に言われるのは耐震補強、または耐震化という話です。
家の倒壊を防いで命を守るということが一番の目的ですが、被災後にできるだけ避難所に避難しなくても済むことも大きな理由の一つです。
もしお手元に避難所一覧があれば確認していただきたいのですが、避難所の大きさと収容人員を比べてみてください。その避難所の建物の中に、全ての避難者が生活スペースを確保して収まるでしょうか。
多くの避難所は収容能力を超える避難者が割り当てられています。
公的な施設に全ての住民を納めるとこうなりますということなのですが、実際に災害が起きると避難者が収容しきれずにあふれ出してしまうという事態が発生しています。
では、もしも家から避難しなくて済むとしたらどうでしょうか?
家の安全が確保されているのであれば、避難時に危険な目に遭う可能性のある避難所への移動はしなくてもよくなります。
また、住み慣れた家ですからどこに何があるかも知っているし、他人の目も気にしなくて済み、ストレスも少なくて済みます。
できるだけ自宅から動かなくて済むように準備することが、災害対策のとても重要な位置をしめているのではないかと、筆者はそんな気がしているのです。
もっとも、全ての家が安全な場所に建っているわけではありません。水害や台風などで被害を受ける場所にあるおうちだってあるでしょう。
幸い、地震以外の災害では、大抵の場合何らかの前兆があります。自分の住んでいる場所がどうなったら危険なのかをあらかじめ調べておいて、どうなったら安全な避難所への避難行動を開始するのかを決めておけば、とりあえずの安全を確保することは可能になります。
あなたのお住まいの家は地震に強い作りになっていますか。
そして、他の災害で被災が予測されるような場所ではありませんか。
災害対策は、それを確認するところから始まります。
カテゴリー: 地震対策
自助・共助・公助の関係
「自助・共助・公助」ということが、防災業界ではよく言われる言葉です。
自助は自分の備え、共助は地域の備え、公助は行政の支援になるのですが、次のようなものが図としてよく描かれています。
この図だけで見ると、自分が備えていなくても共助や公助がそれをカバーするように見えるので大丈夫という感じに見えてしまうのですが、この図を時間軸で書き直すと次のようになります。
つまり、単純に言えば「災害が起きたときはまず自分の命は自分で守れ、守ったら近所同士で命を繋げ、そしたらそのうち救援がくる」ということなのですが、大前提として、まずは自分が安全に生き残るというものがあります。
ここが忘れられがちな部分なのですが、まずは自分が生き残るための手立てをきちんと整えていないと、災害が起きたときにはそこで人生終了となるという事実です。
例えば、阪神淡路大震災では災害発生後、すぐにご近所で救出活動が行われてたくさんの人が助かったとされています。
では、もしいま地震が起きたとき、ご近所の救出活動がいまあなたのお住まいの場所ですぐに開始できるでしょうか。
多くの地域では高齢化が進み、家屋やがれきの撤去がすぐにできるようなパワーはもはやありません。また、若い人がいるところは近所付き合いがほぼ皆無ですので、やっぱり救助活動はしてもらえないでしょう。
そう考えるとこんな感じの時間軸になります。
時間軸で整理するとよくわかることなのですが、肝心な初動時には、自分以外誰も助けてはくれません。
災害の規模が大きくなればなるほど、公助は遅れていきますし、場合によっては公助が行われない場合も想定しておいた方がいいでしょう。
つまり、自助とは「自分の命は自分で守れ」という意味で、共助や公助はそれを支援するものだと考える方が精神衛生的によさそうです。
これを図にするとこうなります。
災害時には、あなたの命はあなた自身が守らなければ誰も守ってはくれません。
あなたの命を守るために、まずはその方法を考えて一つでもいいので実行に移して欲しいと思います。
0か1か100か
災害対策の話をさせていただくと、よく出てくる理由に「完璧に準備なんてできない」というのがあります。
さまざまな防災対策の本や講演などで一覧表になっているようなものを全て準備しないといけないのかと考えてげんなりしてしまう場合も多いようです。確かに、それらのアイテムを準備すれば、一応は「完璧」となるのでしょうが、実際にはそれにプラスして個人の必要なアイテム類が発生し、それはその人の環境によってどんどん変化していくので、実際のところ100%完璧はまずありません。
ただ、まったく準備していないと、いざ災害が起きたときには何をしたらいいのかどうすればいいのかわからずに途方に暮れるだけになってしまいます。
必要なのは、最初の一歩。
例えば、あなたのいるところから近くの避難所までの位置関係を確認して避難経路を考えるだけでも、災害対策の一つになります。
普段水筒を持ち歩かない人であれば、小さな水のペットボトルや水筒を持って歩くだけでも立派な災害対策です。
肝心なのは、「完璧にできないからやらない」、ではなく「なにかできることを一つやってみること」で、何か一つでも用意ができたなら、拍手して自分を褒めてあげてください。何かを一つ準備した結果、あなたが生き残れる確率が確実に上がったのですから、すごいことです。
災害なんかで死んでしまうのは、あまりにももったいないです。そして、災害なんかで希望を失うのももったいない話。
そのために、何か一つ災害対策を始めてほしいなと思います。
個別避難計画と福祉避難所
今の国会で災害対策基本法が審議されていますが、その中に要支援者の個別避難計画の策定が市町村の努力義務であることが明記されました。
過去の災害で高齢者の避難が遅れて犠牲になるケースが非常に増えているため、あらかじめ個別避難計画を作って、何かあればそれに従って避難ができるようにすることを目的とし、市町村や社会福祉協議会、介護事業者やケアマネージャー、自主防災組織が要支援者一人一人の状況に応じた避難計画を策定し、特別な配慮のされた避難所のスペースまたは福祉避難所へ直接避難できるようにするようです。
これ自体は非常に有効性の高いことで、しっかりと進めていく必要性があると思っていますが、同時にいくつかの問題点も抱えていると考えています。
まずは誰が要支援者なのかを開示するかどうかということ。
これはもろに個人情報ですので、本人の同意なしに自主防災組織への情報開示はできません。
自主防災組織はその地域に住んでいる人達で構成されている組織ですので、好き嫌いや恥ずかしさ、遠慮などがあって支援不要ということを言われる人もいらっしゃるようです。
介護事業者や社会福祉協議会が対応することになると、今度は要支援者を誰が避難させるのかと言う問題が発生します。
介護事業者や社会福祉協議会が24時間いつでも避難支援ができるような体制はどこも組んでいないと思いますので、どのように対応することになるのかが気になるところです。
そして、福祉避難所として指定される福祉施設の立地条件。
石西地方の福祉施設はなぜか水害や地すべりといった災害に遭いやすい場所に建てられていることが多いです。ある程度面積が確保できて土地単価の安いところということでこうなっているのだと思いますが、福祉施設に避難したらそこで被災したという笑えない状態になることが予測されます。
また、安全な場所にある福祉施設は、多くの場合一般の避難所として指定されているのが現状です。福祉避難所として機能させる場合には指定者のみが避難できる場所になるはずなので、そのことを地域に周知徹底する必要もあります。
人的な問題と設備の問題をどうやってクリアしていくのかという大きな課題はあると思いますが、こうでもしないと要支援者が被災地域から避難しないだろうと考えると、関係者にはがんばって欲しいなと思います。
ついでに書くと、個別避難計画が必要なのは要支援者に限った話ではありません。
地域に住んでいる全ての人がそれぞれ自分で作成しておくべきものですから、要支援者にとらわれることなく、しっかりと啓発していければいいなと考えています。
日本で地震がよく起きるわけ
地震の回数と頻度では、日本は恐らく世界で一番多い国なのではないかという気がします。
ただ、どうして地震が多いのかについて考えてみたことがありますか。
その理由の一つが、日本が今の形になった理由でもあるプレートの問題です。
簡単な作図になりますが、まずは次の絵を見てください。
これは日本列島と陸の乗っているプレートの関係を示すものです。
かなり適当な日本地図の上におおざっぱに線を引いたものなので実際には自分で確認して欲しいと思いますが、日本列島は4つのプレートがぶつかっている場所であることがわかればいいと思います。
そのうち、矢印を確認していただきたいのですが、これがプレートが押しつけられている方向を示しています。
太平洋プレートとフィリピン海プレートが北アメリカプレートとユーラシアプレートに押しつけられていることがわかると思います。
そんな馬鹿なと思った方は、国土地理院のウェブサイトで地面がどれくらい動いているかを確認できますので、是非一度ご確認ください。
さて、押しつけられたプレートは、そのうちに崩壊してかかっている力が一時的に小さくなります。この崩壊時に地震が起きるというわけです。
下の図面で、海溝部に潜り込んだプレートがわかると思いますが、これが摩擦の力で反対側の陸地を引っ張っていきます。
そして限界点を超えた瞬間、陸地か海側かのどちらかが崩壊して力を逃がすのです。
力が均等にかかり続ければ崩壊するタイミングも極端に大きくずれることはないので、ある程度周期的に地震が起きることが予測できます。
それから考えると、プレートの移動が収まらない限りは日本と地震は切り離せない関係になることがわかると思います。
地震大国日本は、その成り立ちからして地震から逃げることはできません。
絶対に地震が起きない場所はないのですから、どこに住んでいても地震には備えておいた方がよいと思います。
震度で被害を予想する
地震が毎日のようにあちこちで起きていますが、備えはされていますか。
おうちの耐震化、内部の家具や棚などの耐震化など、地震に関して言えば事前準備でその後の復旧作業がずいぶんと変わってきます。
「段取り7割」や「段取り8割」という言葉がありますが、地震はまさにそのとおりで、いざ本番が起きたときにはその時点で全てが終わります。
ところで、震度と被害の関係について考えたことがありますか。
地震でさまざまな震度が発表されますが、その基準は次のようになっています。
この表をみてわかると思いますが、震度5弱が黄色、震度6強で赤になっています。
気象庁が作成する色つきの表では基本的にこの色が使われていて、黄色は「注意」赤は「危険」と考えます。
ちなみに紫は死者が出ている可能性があるときに使われる色だと思ってもらえばいいと思います。
そこから考えると、黄色は「もしかしたら何か被害が出るかも」のスタートライン、そして赤では「何らかの被害がほぼ確実に出ている」、つまり赤表示になっている震度6強以上では何らかの災害がその地域で発生したと考えてよいでしょう。
紫や濃い紫では確実に被害が出ていると考えてよい状況なので、それに対する対策を考えておかなければなりません。
ところで、震度とセットでよく出てくるマグニチュード。これは震源のエネルギー量を示すもので、おおざっぱに言うとマグニチュードが一つ上がると、エネルギー量は30倍になります。
つまり、震度3は震度1の2ランク上になるので、30倍×30倍=900倍の力が発生したと言うことになります。
計算上はマグニチュード9以上では地球が割れてしまうことになるので、マグニチュードとしては最大が9となっているわけです。
いろいろと書きましたが、震度5弱以下であっても耐震化していない場合にはものが崩れたり倒れたりすることがありますので、まずはおうちの中の耐震化、そしてできれば建物の耐震化もしておいてくださいね。
普段使う道の安全点検
新学期になり、入学式もあり、さまざまなところで生活環境が変わっている方も多いと思います。
住むところや通勤・通学路が変わった方もいるのではないでしょうか。
せっかくなので、散歩や周辺の調査も兼ねて、お住まいの地域や通勤・通学路の安全点検をしておくことをお勧めします。
普段はあまり意識しない道路ですが、よく見ると同じ道路でも安全な場所危険な場所があることに気づくと思います。
危険な場所は誰でも気づくと思いますが、身を寄せることのできる安全な場所は、点検のときでも案外と見落としていたりするものです。
安全点検では、危険な場所、安全な場所、そして役に立ちそうなものを見つけて確認していきます。いざというときにいきなり安全な場所や役に立ちそうなものを見つけるのは難しいですから、最初にしっかりと調べておいて、いざというときに備えておきたいものです。
また、もしお子様がいらっしゃるのであれば、ぜひ一緒に通学路の点検をしておいてください。そうすることで、安全や危険について同じ目線を持つことができます。
災害が起きたとき、どこでどうやり過ごし、どこで合流するのか。
常に大人の目があるとは限りませんし、周囲の大人が正しい判断をするとも限りません。
どんなに小さくても、自分の判断で自分の命をしっかりと守れるように、しっかりと安全点検をしておいて欲しいと思います。
「週間地震ニュース」をご存じですか
最近毎日のように日本のどこかが揺れていて、そのたびにニュースになっています。
ところで、どこでどのような地震が起きてどうなったのかをまとめているNPO法人があることをご存じですか。
その法人の名前は「NPO法人環境防災総合政策研究機構」。
災害に関するさまざまなことをされているところですが、ここが毎週「週間地震ニュース」をウェブ上で公開しています。
毎週どこでどのような地震があったのかが一目でわかる図や簡単な分析結果などが掲載されていて、地震を知る際には参考になると思います。
興味のある方は一度見ていただければと思います。
(週間地震ニュースは下の方にリンクがあります)
在宅避難のメリットデメリット
新型コロナウイルス感染症対策で元々存在していた避難所の問題がクローズアップされるようになってきました。
元々、行政の設定する避難所の収容人数はかなり無理のある数字があげられていたのですが、新型コロナウイルス感染症対策でパーソナルスペースを確保しなければならなくなった結果、本来の収容予定人数の半分以下、ひどいところになると当初計画の10%程度しか収容できない避難所も発生しています。
そして、現在推奨されているのが在宅避難。
避難所ではなく、できるだけ自宅で過ごせるように手を打っておきましょうという方向へ方針転換をしています。
「在宅避難」とは文字通り災害後も家で過ごすということなのですが、避難していないというといろいろなところに問題が発生するため、在宅避難と定義しています。
在宅避難では、避難所と比べて次のようなメリットデメリットがあります。
1.在宅避難のメリット
メリットで最も大きいのが、生活空間を従来通り維持できるということです。
被災前も住んでいた家をそのまま使うのですから、自分の生活空間は今まで通り。プライバシーも守れて他人に気を遣う必要もありませんからストレスは少なくてすみます。又、感染症に対するリスクも低くて済みます。乳幼児や高齢者、障害者で支援の必要な人やペットのいるご家庭では、基本的にこちらを選択できるような状況を整えておくと慌てなくてすむと思います。
2.在宅避難のデメリット
在宅避難のデメリットは、避難所への避難に比べると支援情報が入りにくくなることです。
現在のさまざまな災害支援体制は避難者支援に重点が置かれているので、在宅避難者への情報提供はどうしても遅れ気味になります。
そして、支援物資が提供されにくいという問題もあります。
在宅避難者だろうが避難所避難者だろうが、被災者には変わりないので支援物資についてはきちんと提供する義務があるのですが、集積基地となっている指定避難所の運営者がそのことを理解していないケースが割とあって、在宅避難者が支援物資の提供が受けられないということが起こっています。
それから、周囲が避難所避難を選択した場合、さまざまなことを気軽に相談できる相手がいないという事態が想定されますので、避難先などをあらかじめ聞いておくようにしておくと安心です。
全ての災害に対して安全な家や環境にお住まいなら在宅避難で問題ないのですが、そうでない場合には、避難すべき災害と避難しなくてもいい災害とを知っておく必要があります。
ハザードマップや過去の被災事例を確認し、お住まいの家や建物の状況を確認して、想定をしておくようにしてください。
災害が起こりにくい時期だからこそ、しっかりと確認して備えておきたいですね。
地盤改良と軟弱地盤
水の浸透しやすいところや埋め立て地、池や沼だったところなど、他の土地に比べると災害の起きやすい地面を軟弱地盤と呼びます。
この軟弱地盤に家などの構造物を作る際には、できる限り地盤調査をし、場合によっては地盤改良をする必要が出てきます。
これは建物がいくら耐震強化していても、地盤が弱いと建物ごとひっくり返ったり地盤に引っ張られて壊れたりしてしまうからです。
とはいえ、口で説明してもなかなかイメージが伝わりにくいのも事実です。
プリンを使った地盤の実験をしてみましたので、興味のある方はぜひご覧下さい。