避難所の鍵

避難所としてよく使われる体育館。ここは誰が鍵を開けるのでしょうか?

 小さな自治会の避難所であれば、避難所の鍵がどこにあるのかというのは皆さんご存じだと思います。
 災害対策や施設の利活用に熱心なところであれば、鍵の貸し出しや保管方法のルールも定められているのではないでしょうか。
 地域で災害が起きそうなとき、その地域の人が誰でも避難所の扉の鍵を開けることができているのは、避難所の基本です。
 では、大規模な避難所はどうかというと、大規模な避難所では、殆どが施設管理者しか鍵を持っていません。
 施設が開いている時間に避難所になるのなら問題ありませんが、施設が閉まっているときに避難所を開設しようとしても、鍵が無いので避難所には入れないということになります。
 そのため、学校や大きな施設などは、災害時には施設は解放せず、災害が収まってから避難所として解放するというところもあるようです。
 施設の鍵が複数あることは、防犯上好ましいことではありませんし、平時にその鍵を使ってトラブルが起きることは、施設管理者としては認めることができないことだと思いますから仕方がないことなのですが、避難してくる人から見ると施設側の都合はどうでもよくて、避難してきたのに避難所は鍵がかかっていて入れないという事実だけが残ります。
 かといって避難してきた人が鍵を壊して勝手に入ってしまうと、これは不法侵入になってまた別の騒ぎになってしまいます。
 本来は避難所の開設の一番最初の手順である鍵の問題は平時に取り扱いを決めておかないといけないのですが、災害が来ると騒がれている地域でも、それが完全にできているわけではないようです。
 あなたが避難することのできる避難所の鍵は誰がいつ、どうやって開けられるのか、避難訓練などのときにでも確認しておいた方がよさそうです。

情報入手方法は多重化しておく

 あなたは地域で起きる災害情報の入手をどのようにしていますか。
 テレビ、ラジオを初め、地域の防災無線や防災メールなど、さまざまな手段をお持ちだと思います。
 災害時には、普段以上に正確な情報が必要となります。
 そして、正確な情報の入手手段は、平時から整えておかないとデマやウソに振り回されてしまうことになりますので注意が必要です。
 お勧めはお住まいの市町村や都道府県が発表している防災メールに登録しておくこと。なかにはお住まいの地域の指定ができるものもあるようですので、割と細かく情報が届けられます。
 防災無線は、電池交換や充電装置などの整備をきちんとしていればある程度使えますが、地震などで大規模な被害を受けた場合には、無線そのものが稼働しなくなる危険性があります。
 また、SNSなどでは憶測に基づいた未確認情報が飛び交いますので、信頼できる知り合いや公共機関の情報に限定して収集した方が惑わされずに済みます。
 他には、他の地域に住んでいる人とお互いに住んでいる地域の防災メールを登録し、何かあったら電話連絡してもらう方法もあります。
 「逃げなきゃコール」と言われているものですが、当事者ではない人から連絡を受けることで、情報の受信漏れを防ぎ、安否確認を取ってもらうこともできますので、情報収集に自信のない人はどなたかに頼んでおくといいと思います。
 最後に、災害後には人の憶測という悲喜こもごもの感情がこもった情報がたくさん発信されます。これはSNSに限らず、マスコミなどでも同じ。
 発信されている情報から感情を省いた客観的事実を読み取れるようになっておくと、普段から騙されなくて済むと思いますので、そういった練習をしてみてもよいのではないかと思います。
 いずれにしても、情報があなたの手元に届くかどうかはあなたの意識次第です。
 普段から正確な情報が手に入るような環境作りをしておきたいですね。

地震が起きたら何をする?

地震がきたら・・・?

研修会で筆者がよく参加者の方にする質問です。
「火を消す」「扉を開ける」「外へ逃げる」「机の下に入る」などなど、さまざまな答えが返ってきます。
筆者なりの答えを書くと「まずは身を守れ」となります。
何をするにしても、その行動の基本は身を守ることにあります。
身を守るというのは、「死なない」「怪我しない」ということなのですが、これは地震のときにあなたがいる環境と状況によって答えが変わります。
例えば、だだっぴろい広場の真ん中にいるなら、しゃがむだけでいいでしょうし、古くて耐震補強されていない建物なら、まずはそこから逃げ出すことが正解になります。
吊り天井の建物なら、化粧板の落下で怪我しないために机の下に入ることが重要ですし、割れそうな窓のそばなら、すぐにその場から離れなければ危険です。
最適解はあなたがいる環境と状況によって正解にも不正解にもなりますから、常に自分が居る環境でどのような事故が起きそうなのかを考えた上でとりべき行動を決めておくことになります。
この作業、最初はものすごく頭を使います。面倒くさいと思うことも非常に多いと思います。
ただ、慣れてくると場所を見るだけで「地震が起きたらこうしよう」という自分の行動が自然に決められるようになります。
また、よほどあちこちを点々とする人でない限りは、普段行く場所というのは驚くほどたくさんはありません。
目をならして取るべき行動を決めておく。それだけでも身を守れる可能性は格段にあがります。
地震が来たら「机の下」、ではなく、地震が来たら「身を守る」。
そんな風に覚えておいてくださいね。

津波あれこれ

 先日太平洋のトンガで火山の大爆発があり、日本にも津波が到達しました。
 気象庁では最初は津波の恐れがないとしていたものの、後に津波警報及び注意報を太平洋沿岸から南西諸島にかけて発令しました。
 未確定ながら、これは噴火が原因の大気の震動による衝撃波、空振と呼ぶそうですが、この衝撃波によるものだとも言われています。(詳しく知りたい方はリンク先のウェザーニュースをご確認下さい。)
 そして、普通の津波と異なり原因が大気の衝撃波のため、速度は速く、そして世界中のどこででも津波が起こりうるやっかいな代物なので、潮位が上昇してから慌てて津波警報が発令されても仕方が無いと言えるでしょう。
 ところで、この津波、大波と高潮とはどのように異なるのでしょうか。
 今回は津波について再確認してみたいと思います。

1.津波とはなにか

 津波は英語でも「TUNAMI」と呼ばれていて、呼称としては日本語の津波がそのまま国際標準として使われています。
 ごくまれに隕石落下や、今回のトンガ火山の噴火による空振のような場合もありますが、津波は基本的には地震や火山などが原因で起きる海底や海岸地形の急激な隆起や陥没によって生じた大規模な海水の塊が原因となった場所から広がっていき、地上に被害を与えるものです。
 水面表層部が風などによって大きな波となる大波と異なり、海水の表層部から深層部にかけて一気に動くため、とても大きな水の塊が押し寄せることになります。

2.津波の特性
津波は海水が大きく移動するもので、水深が深いところでは波の移動速度は速いものの波高はそこまで高くはなりません。これが水深の浅い沿岸部に達すると、今度は波の速度は遅くなり、波高は一気に高くなります。
波というか大きな水の塊が何回も押し寄せてきますので、一度やり過ごしたからと言って油断は禁物です。第一波よりもそのあとの方が大きなものと言うことも多いです。
参考までに、東日本大震災時の津波の動きを空から追ったものをリンクしておきます。

東北地方太平洋沖地震による津波(岩手県久慈市上空)(youtube八戸市広報チャンネルに移動します)

2.津波と大波と高潮の違い

発生する原因がそれぞれ異なります。
津波の起きる原因は1のとおりですが、大波は台風など気圧が下がり、強風などで水面の表面で起きる現象で、高潮はやはり気圧の低下によって水位が上昇し、沿岸部が水没する状態をいいます。

3.津波の警報基準

 津波の警報基準は次の表のとおりになります。


 ただ、地震が原因で発生した津波については、予測される津波の高さでは無く、感覚的な「大きい」や「巨大」といった言葉が使われます。
 これは東日本大震災時に津波の高さを聞いた人達が避難せず、大きな人的被害を出したことから変更されました。

4.津波に関する注意報や警報が出たらどうするか

 取りあえず高い場所へ避難しましょう。津波は波と異なり海水全体が押し寄せてきますので、数十センチのものでも波とは比較にならないほどの力を持っています。
 物見高く堤防などで見ていると、もし飲まれたらまず助からないと思って下さい。
 津波が来るとわかったら、可能な限り高い場所へ移動します。海岸部から離れたとしても、海岸部とあまり変わらない高さの場合津波は押し寄せてきてあまり意味がありません。
 とにかく高手へ逃げて下さい。
 そして、津波警報や津波注意報が解除になるまでは高手で避難を継続します。
 津波は一度だけでは収まらず、何回も続けて押し寄せてきますので、安全が確認されるまでは油断しないようにしてください。

 滅多に起きないと思われていた津波ですが、最近は火山や地震の頻発により津波が発生することも増えてきています。
 もしも沿岸部で津波発生を耳にしたら、何を置いてもまずは高いところへ避難することを忘れないようにお願いします。

地震のときに動けないところ

 夕べは日向灘で大きな地震がありました。
 午前1時過ぎという時間でしたので、多くの人は寝ていたのでは無いかと思いますが、お怪我などはなかったでしょうか。
 地震のときにすぐ動けない3つとして、1.寝てるとき、2.トイレ中、3.入浴中があります。
 いずれも気がついたからといってすぐに動きを取ることは難しいと思いますので、とりあえずは怪我をしないようにしておく必要があります。
 上からものが落ちてきたり、ものが飛んできたりしないように、家具やものの配置には気をつけて下さい。
 もし布団の中の場合には、お布団や枕を頭から被って怪我をしないようにしてください。
 お風呂とトイレの場合には、閉じ込められたりすることを防ぐために出入り口を解放しておく必要があります。
 見られると情けない姿にはなりますが、閉じ込められるよりはマシ。出入り口の開放をしたら、怪我をしないような姿勢を取って下さい。
 ちょっとしたことなのですが、これらを知っておくだけでも動きが変わってきます。
 「今、そこで地震が起きたらどうしよう」を、ちょっとだけ考えて、自分の行動を決めておきたいですね。

とりあえず書き出してみよう

校内安全点検の一コマ。

 災害時にどのような行動を取るのかについては逃げ地図マイタイムライン目黒巻き地区防災計画に至るまでさまざまなアイテムが用意されています。
 ただ、割と多くの人が災害時の行動については頭の中にはあっても目で見えるようにはしていないみたいです。
 災害時を含む非常事態というのは、トラブルが加速度的に増えていきますので、早め早めに対応しないと行動ができなくなってしまいます。
 早めの行動というのは、考えていたことを目で見えるように書き出しておくことで、考えなくてもそれを見るだけで行動に移せることです。
 非常事態や緊急事態に備える必要のあるところには、ほぼ100%非常事対応マニュアルというのが用意されていて、考えられるさまざまな出来事と対応策、対応する順番が整理されていますが、これは非常時にはどんなにしっかりとした人でも100%の能力は発揮できないこと、そして考えられなかった異常事態が起きたときにそちらに対応するための能力を集中させるために存在しています。
 例えば、マイタイムラインを作成すると、備える必要のある災害、取るべき行動、そして最終的な対応まで一目でみることのできる一枚紙ができます。
 この紙を、玄関や冷蔵庫、トイレなどに貼っておくと、無意識に中身を見て覚えることができ、その結果、そこに書かれた事態になったときに考えなくても行動を取ることができるようになり、結果的に身を守ることができるのです。
 平時にあれこれと考えて対応策を決めるのであれば、それは必ず書き出して目で見えるようにしておきましょう。
 そうすることで、少なくとも災害時の行動に迷うことはなくなると思います。

避難時の履き物を考える

靴にもいろいろありますが・・・。

 水害などでは、避難するときに長靴を履くのかどうかが割と議論になったりすることがあります。
 防災をやっている人の間では「水の害では長靴禁止」が基本になっているような気がしますが、これは中に水が入ると歩けなくなってしまうからで、周囲が水没を始めた後の避難が前提になっています。
 つまり、早めの避難であれば別に長靴でも問題ない、というか、足が濡れない分だけ長靴がいいのではないかと考えることもあります。
 いつの時点で行動を開始するかによって、使える履き物も変わってきますから、一概に運動靴ばかり押すのもどうかなという気もします。
 もちろん、汎用性が高いのは運動靴ですし、水の中を歩くときに水の抵抗が少ないのも確かなので、運動靴を勧めることは正しいのですが、履き物を考えるよりもさっさと避難しろ、というのが筆者の本音ではあります。
 いろいろな話があるのは確かなのですが、早めに避難するのであれば一番履き慣れた靴がもっとも安全というのが筆者の見解です。
 普段履き慣れない履き物を非常時だからと履くと、足が慣れていないので帰って危険になることもあるのではないかと考えますので、履き慣れた靴が水没したときに備えて、もう一足、非常用持ち出し袋に履き物を準備しておくと安心ではないでしょうか。
 1足しか選べないのであれば、運動靴一択かなとは思っていますが、履き物で悩むよりも早めの避難。
 そっちの方が大切なのではないかと思っています。

ウォーターサーバー

 防災教室などで備蓄の話をしていると、割とよくウォーターサーバーの話が出てきます。
 宅配されたお水入りのタンクを給水器に取り付けて水やお湯を出せるようになっているそうで、これがあれば非常用水の備蓄が不要だと言われることもあります。
 確かに安全な飲料水が一定のペースで確実に届けられ、常に備蓄のある状態でローリングストックされていることは望ましいと思います。
 ただ、そのときに一つ気をつけていただきたいのが水の取り出し方です。ウォーターサーバーに取り付けてコックをひねれば出るようになっているはずですが、サーバーが何らかの事情で壊れてしまったとき、水を取り出せるかどうかを確認して下さい。
 ものによってはサーバーに取り付けないと水が出せなくなっているものがあるようですので、その場合にサーバが壊れてしまうとせっかくの水が役に立ちません。
 それから、水タンクが上部に乗る構造上、ウォーターサーバーは非常に揺れに弱いですから、災害時に役立てようと思うと、サーバーが転ばないようにしっかりと固定しておく必要があります。
 また、サーバーの構造が停電でも使えるかどうかを確認しておく必要があります。
 大きな災害になると、電気は間違いなく止まります.電気が止まったら供給がとまるタイプのウォーターサーバーだと、やっぱり宝の持ち腐れになってしまいます。
 誤解しないでいただきたいのは、ウォーターサーバーが駄目だといっているわけではありません。
 災害時に確実に安全な水が何リットルも確保されているのは、それだけで一つの安心材料ですから、その水をどのように取り出すことができるのかを知っておいて欲しいと言うことだけです。
 せっかくある資源なのですから、お使いのウォーターサーバーの特徴をしっかりと確認していただき、災害時にも水には困らなくて済む状態にしておきたいですね。

備蓄はわけてしまっておく

レトルト食品やインスタント食品も立派な備蓄食です。

 災害に備えてさまざまなものを備蓄しろと言われていますが、あなたのおうちではどれくらいの分量が備えられていますか。
 人によって1食分から2週間分まで、さまざまな量が準備されていると思いますが、それらの備蓄はどこにしまっていますか。
 忘れないように一カ所にしまっている方が多いのでは無いかと思いますが、一カ所にまとめておくと、管理は楽なのですがいざというときにそこが駄目になってしまうと、備蓄が全部使えなくなってしまいます。
 できれば備蓄は数カ所に分けてしまっておくようにしてください。
 そうすれば、一カ所が駄目になっても他の場所が大丈夫なことが多いです。
 例えば、2階建てのおうちなら1階と2階にそれぞれ同じ量をしまっておく。別に車庫や倉庫をお持ちであれば、そちらにも備蓄をしておく。
そうすることで、いざ何かあっても備蓄が全滅という事態だけは避けることができます。
 政府の推奨している備蓄量は1週間分(7日分)なので、そんな量を非常用持ち出し袋に入れて避難することはまず無理です。
 災害の状況が落ち着いたら家に取りに帰ることを前提にして、数カ所に分散してしまうこと。
 非常用持ち出し袋は1日程度の備蓄。そしてできれば防災ポーチを作ってもらい、そちらに1食分の備えをしておくといいと思います。
 余談ですが、非常食は長持ちしますが箱などのままの保管だとネズミなどに囓られてしまうことがあります。面倒でも、コンテナなどに詰めて保管することをお勧めします。

まずは地震に備えよう

台車で地震体験。横揺れだけでもいい体験になる。

 災害対策の中で「地震」とそれ以外にわけられるのには理由があります。
 それは「地震」はいきなりやってくること。
 他の災害ではことの大小はありますが、それなりに前兆がありますので、準備をする時間があります。
 でも、地震は突然本番がやってきて、やってきたときにはすでに結果が決まっているのです。そのため、地震対策は他の災害とは区別してさまざまな備えを行うようになっています。
 例えば、建物の耐震化。地震が来たときに慌てて耐震工事をしようと思っても耐震化は絶対にできません。事前に備えて対策していなければ、本番では家が壊れないことを祈るくらいしかできることがないのです。
 もちろん耐震化したからと言って絶対に大丈夫とは言い切れません。熊本地震のように大きな揺れが二回来たら、二回目で崩れることもあるでしょう。ただ、いきなり来た本震でその下敷きになって死んでしまうことだけは防ぐことができるのです。
 地震はいつ来るか分かりません。家にいないときかもしれませんし、お風呂やトイレ、寝ているときかもしれません。
 そのために必要な備えは、人によって異なります。
 わき水や畑に野菜がある地方と、水道やお店に頼らないといけない地方では自ずから備えるべきアイテムが異なります。
 また、周辺人口や避難所数によっても災害後の行動が変化してくると思います。
 いざというときに備えるのは必須ですが、何から準備したらいいかわからないときには、まず地震対策から準備することをお勧めします。
 今回は耐震化のことに触れましたが、耐震化できなくても家具の転倒防止や配置の変更でもずいぶんと状況がかわりますよ。


 あなたの命を守るために、あなた自身が行動する必要があることを忘れないでくださいね。