被災時は温かい食事が気力を守る

火を使わずに簡単に加温できるのはこういった化学的に熱を作るアイテム達。ただ、お値段は結構高い。

 災害用に非常用持ち出し袋を作ることを推奨されていますが、非常用持ち出し袋に入れっぱなしにしてしまうといざというときに使いかたが分からないというなんとも情けないことになってしまいます。
 そのため、普段から使っているものを非常用持ち出し袋に入れておくのが基本になりますが、非常用持ち出し袋の中身はあなたが確実に使えるようなセットになっていますか。
 さて、災害後に生活を続けていくのには何かを食べなければいけません。
 家屋が被災して避難所生活になった場合には、非常用持ち出し袋に準備したものと各地から届けられる支援物資による食事になりますが、食中毒対策などの事情で届けられる食事は原則として常温から冷たいものが殆どになると思います。
 ただ、気持ちが落ち込んだり不安なときほど温かいものを食べたいもので、温かいものを食べられるようにある程度の準備はしておいたほうが安心です。


 具体的にはカセットコンロを準備すること。カセットコンロはカセットボンベという独立している燃料が必要ですが、カセットボンベさえあれば割とどこででもお湯が沸かせ、温かいものを摂ることが可能になります。
 普段から登山などしている人であればOD缶と携帯コンロはお持ちでは無いかと思うので、それを使ってもいいと思います。


 もちろん、できればお鍋ややかんなども準備しておきたいところですが、お湯を作れるかどうかが食のレベルを決めると言ってもいいと思いますので、持ち運びできる調理器具を準備しておくようにしましょう。
 幸いにして、これから寒くなってくるとお鍋のおいしい季節になります。
 最近では卓上型のIHコンロも普及しているようですが、カセットガスコンロなら普段使いも災害時に使うことも可能なアイテムですので、これを使って家族や仲間、もしくはご自身でお鍋を囲むのもいいのではないでしょうか。

自分だけは死なない災害

2021年8月14日の高津川の増水。このときも川に作業に出かけ、流されて亡くなった人が出た。

 災害が起きると、不幸にして亡くなる方が出る場合があります。
 亡くなった方も、死のうと思って亡くなったわけではなく、何らかの事情で災害に巻き込まれて亡くなっていることが殆どです。
 例えば、大雨の時に田の水を見に行ったり、川に様子を見に行ったり。出かける途中や出かけた先で溝や川にはまってしまっています。
 災害で人が死ぬかもしれないという認識は殆どの人が持っていると思うのですが、不思議なことに、自分が死ぬかもと思っている人はまずいません。
 自分が死ぬかもしれないという意識が持てないのです。
 死ぬとは思っていないから、無意識に危険な行動を取ってしまい、そして亡くなってしまうことが起こるのです。
 もしかしたら、非常時に平時の感覚で行動してしまうせいなのかもしれませんが、災害は誰にも程度の差はあれ危険をもたらします。
 災害から身を守るには、「行政が言うから行動」ではなく、「自分の身を守るためにはどういう行動が必要か」をふまえた上での自分の判断で行動をしないと、手遅れになったり避難途中で遭難することになったりします。
 「自分だけは死なない」のは、今までがたまたま運が良かったからで、単なる偶然でしかありません。
 災害時の考え方は「自分が助かるにはどうすればいいのか」です。
 考え方を間違えないようにしたいですね。

赤ちゃんの災害への備え

 生活弱者といわれる方々の中に、赤ちゃんとそのお母さんが含まれていますが、もしもあなたがその対象であるなら、ご自身の災害に対する備えができているでしょうか。
 被災後の避難所での生活は、支援物資が届くまでは自助でなんとかしないといけませんが、元気な大人でも備えがないと結構大変ですので、赤ちゃんが居る場合にはそれ以上に事前に準備をしておかないといけません。
 そして、赤ちゃんは日々大きくなっていきますので、ただ準備すればいいわけでは無く、成長にあわせて日々備えを変えていく必要があります。
 おむつやミルクの量、着るための服など、非常用持ち出し袋を作っても数週間で準備した内容を全部変えてしまわないといけないこともよく起きます。
 もっとも、赤ちゃんとのお出かけをするためのお出かけカバンを作っている方であれば、お出かけから戻ったらすぐに次のおでかけの準備をするようにしておけば、それが非常用持ち出し袋になりますからそんなに手間ではないと思います。
 お出かけをあまりしないようなおうちであれば、3日分くらいのおでかけができるような内容で非常用持ち出し袋をつくっておくといいと思います。
 もちろん一番良いのは避難しなくても済む、家にそのままいることができる状態ですので、1週間程度の備蓄はしておくようにします。
 でも、万が一何も持っていない状態で被災し、避難することになったらどうするか。
 日本新生児生育医学会というところが「被災地の避難所等で生活をする赤ちゃんのためのQ&A」というリーフレットを発行していますので、興味のある方はリンク先を覗いてみてください。

被災地の避難所等で生活をする赤ちゃんのためのQ&A」(日本新生児生育医学会のウェブサイトへ移動します)

「助けて」って言えますか

 日本人はできるだけ自分で全てのことをやることが美徳とされていて、「他人に頼ること=迷惑をかけること」と考えている人が多いです。
 なんでもかんでも周囲に頼り倒すのはまた別の問題を引き起こすことになると思いますが、それでも普段からある程度他人に助けてもらう練習をしておくことは、災害時に役に立ちます。
 というのも、普段なら全部自分でできることでも、大災害で被災者になると自分だけではできないことがたくさん発生するからです。
 特に、自宅が被災したとき、その復旧を一人でやろうとするとかなり無理があります。恐らく、やっている最中に心が折れてしまうのではないでしょうか。
 災害時に発生するさまざまな問題は、自分一人で解決できないものがとても多いですが、困っている自分が「助けて」と言わない限り、救いの手は届きません。
 他人に頼ることは、他人に迷惑をかけることではありません。自分ができないことや時間がかかることをできる人や作業の早い人にお願いするのは、その後のあなたの生活に影響が出てくる災害復旧では生活再建のために行うべきことなのです。
 災害ボランティアは「助けたい」と思って被災地へ乗り込んできます。彼らの善意に頼って、しっかり助けてもらえばいいのです。
 ポイントは助けて欲しいことを明確に伝えること。
 特にボランティアセンターへ派遣を依頼する際には、どんな作業をどれくらいする必要があるのかをはっきり伝えないと、なかなか人が来てくれません。
 どんな作業があるのか、どれくらい人や時間を投入しないといけないのか、もし自分で分からなければ、わかる人に頼んで確認してもらえばいい話です。
 普段から「助けて」を言いやすい状況を作っておくことで、助けてもらえる確率はかなり高くなります。
 あなたが被災したとき、他人の力が必要なときに「助けて」が言えるようになっておきましょう。

普段と非常時の切り替えスイッチを持とう

 いきなりやってくる地震はともかくとして、多くの災害ではその前兆があります。
 例えば水害であれば河川の増水や水路が溢れたり、大雨が降ってみたりしますし、台風であればその進路からやってくる時期がある程度は予測できます。
 でも、予測できているはずの災害で逃げ遅れたり亡くなってしまう方がいることも事実です。逃げる必要があるのかどうかさえ判断できないままに巻き込まれたとか、逃げる必要があるとは思わなかったといった被災者の意見を聞くと、問題になるのは、いつ「いつもの毎日」から「非常事態」に認識を切り替えるのかということなのではないかと思います。
 大災害が起きるときにも普段と同じ行動をしていては、状況によりますが大けがや死んでしまうことも起こりえますから、どこかの段階で頭の中を非常事態に切り替えないといけません。
 この切り替えスイッチ、実は人によって異なるので気をつけてください。
 例えば、浸水するような場所に住んでいる身体が不自由な人であれば、他の人が避難を始める前に避難を開始しないと、巻き込まれると動きが取れなくなります。
 また、氾濫の影響がない、風害にも土砂災害にも影響のないような場所に住んでいる元気な人であれば、ほとんど普段どおりの生活を送ることができるでしょう。
 住んでいる環境やそのときのあなたの状況により、切り替えスイッチをどこに置くかが変わってくるということなのです。
 普段と非常時の切り替えスイッチは、恐らくほとんどの人に必要なものです。
 このスイッチがきちんと作動できるように、スイッチを切り替えるタイミングと、切り替えたら何を止めて何をするのかを、普段のうちに決めておいてくださいね。

「お・は・し・も」を考える

 避難訓練のときに良く言われているのが「お・は・し・も」というキーワードです。
 「おさない」「はしらない」「しゃべらない」「もどらない」の頭文字で、避難のときに気をつけるべき行動を並べているのですが、これは屋内避難の時に気をつけることだということがあまり理解されていないのかなという気がします。
 「押さない」は屋内でも屋外でも押されれば危ないですから危険なことはわかると思います。「戻らない」も、安全確保できたらわざわざ危険な場所に出向くことはないわけで、危険な場所にわざわざ戻る必要はないということはご理解いただけると思います。
 問題になるのは、「走らない」と「しゃべらない」。
 屋内では階段や出入口などで人が滞留しますが、その時に走ってくる人がたくさんいるとぶつかったり押したりすることになって将棋倒しになる危険性があります。
 また、屋内で火事から逃げる場合には、一酸化炭素を始めとする有毒なガスを体内になるべく取り込まないように、呼吸は浅く、行動は急いでとなります。ここで走ると息を大きく吸い込むことになるので危険です。
 次に「しゃべらない」。これも火災や屋内の場合には有毒ガスの吸い込みを防いだり、避難指示をきちんと聞き取るためにもできるだけ静かに移動した方が安全を確保できます。
 ですが、津波からの避難となると、なるべく大声で津波が来ることと避難を呼びかける行動をしたほうが多くの人を助ける行動に繋がります。
 「お・は・し・も」に限りませんが、状況に応じて正解は変わりますし、場合によっては正解がない状況も起こりえますので、言葉にとらわれず、その場その場でできる限り自分の命を守るための行動が取れるような判断力をつけるようにしたいですね。

まずは身の安全の確保から

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 地震のようにいきなり事象が発生するような災害の場合、まずは身を守る行動をとることが最優先になります。
 「身を守る行動」、というのは「怪我をしないための行動」ということで、例えば学校の教室などの場合には机の下に隠れたり、落下物が落ちてこないような場所に退避したりといった行動になります。
 建物が崩れる可能性が高いようであれば、揺れたら建物から脱出するような経路の確保や一部だけでも崩れないように補強するなどの方法を考えておかないといけません。
 とにかく基本は怪我をしないことですが、興奮していると大きな怪我をしていても気がつかないような場合がありますので、本当に怪我していないかどうかを、目と手での接触によって確認しておきましょう。
 地震の避難訓練では、想定した揺れが収まったらすぐに避難開始としているような場合が多いと思いますが、まずは自分の身体の怪我の確認、そして周囲の人の怪我の確認、それから避難という流れにできるといいなと思います。
 もちろん崩れそうな状態や危険な状態の場所では、まずは避難して身体の怪我の確認をするといった風にTPOにあわせた対応が必要になりますが、身の安全の確保としての怪我の確認、できるだけ習慣にするようにしてくださいね。

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました

包帯を巻くのは結構難しい

 2021年10月27日に益田市立高津小学校のクラブ活動で防災クラブを開催しました。
 今回は「助けよう、助かろう」をテーマに、前日にあった避難訓練で怪我をしないように気をつけていたかという問いかけをし、その後大けがをした場合の病院でのトリアージについて少し触れ、それから圧迫止血法を中心とする応急手当と担架での搬送を体験してもらいました。

うまく巻けたかな?


 毎回時間配分がうまくできなくてドタバタになるのですが、今回はかなり強引に進めて時間内になんとか終了することができました。
 応急処置にしても担架での搬送にしても、実際に体験してみないとわからないことが多いので、今回はさわりだけでも体験してもらえてよかったのではないかと思っています。

有人で担架を担ぐと緊張感がでる。慎重に階段を上がる。


 今の学校は保健室が充実しているので、ちょっとした怪我でも保健室で手当を受けることができます。
 でも、簡単な応急処置が自分でできるようになっていると、いざというときだけでなく、普段の生活の中でも役に立つのではないかなと思います。
 毎回お世話になっている防災クラブ担当の先生と、毎回参加してくれている子ども達に感謝します。

【活動報告】小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました

 去る10月26日に益田市立高津小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました。
 避難訓練の見学自体はこれで3年目となりますが、年を追うごとに動きがよくなってくるなと感心しています。
 今回の想定は地震から津波発生で高台への避難という想定。
 地震の緊急速報を流し、安全点検を行った上で校庭に避難、その後近くの翔陽高校へ避難という流れです。

小学校の周囲には歩道が殆ど無く、あっても幅が狭いため普段から安全確保は大変


 6年生は1年生の手を引いて移動するのですが、歩道のない狭い歩行者ゾーンを並んで小走りな移動はかなり気を遣って大変そうでした。

交差点や横断歩道など、流れがまっすぐでない場所はどうしても人が滞留して危険


また、途中で交通量のそれなりにある道路を横断する必要があるため、本番ではちょっと危険になるかもしれないと感じた場所もありました。
参加していた子ども達は真剣に取り組んでいましたし、先生方もかなり真剣に訓練に参加されていました。

避難訓練の講評を聞く。次回に活かせるような仕掛けが必要


 いくつかの課題や気になった部分、ご質問などがありましたので、それは後日報告書として提出させていただくことになっています。
 避難訓練は誰でもできる簡単な訓練ですが、簡単なだけに馬鹿にしてしまうことも多く、成功することが目的になっている場合も多々あります。
 訓練以上のことは本番では殆どできませんので、引き続きしっかりと訓練していただければ名と思います。
 今回、避難訓練の見学を許可してくださった校長先生始めとする先生方、そして訓練を一生懸命していた子ども達に感謝します。
ありがとうございました。

【活動報告】有害鳥獣対策・その後(~2021.10.23)

 宅地に出没するイノシシ対策として、現在当研究所では2基の檻を有害駆除として管理しています。
 前回捕まえてから、檻に寄ってきてはいるもののなかなか捕まらない日々が続いていましたが、本日施主様から連絡があり、イノシシの子が2頭、罠にかかったという連絡をいただきました。
 監視カメラの画像を確認してみると、早朝に親子で来ていたイノシシの子が2頭のかかったようでした。


 捕まるのは毎回最初から設置している檻なので、何かあるのかもしれませんが、ともあれ置いておくと被害が発生するのは目に見えていますので、処分を行うことにしました。
 実のところ、施主様からの最初のご依頼は「庭にでるイノシシを何とかして欲しい」というものでしたので、ドングリの木の撤去をお願いし撤去されて後はすでに庭にイノシシはでなくなっているのですが、ご近所に被害が出ていることからできるなら捕まえて欲しいとの施主様のご希望で、もうしばらく檻を運用することになりました。
 ただ、イノシシに限らず、檻で有害鳥獣を捕獲しようとすると餌を撒くことになりますから、有害鳥獣はターゲット以外にもたくさん寄ってきます。
 捕まえることで個体数を減らせるのは確かなのですが、他の野生動物の数を増やしても困るので、正直なところ罠の運用は悩むところです。
 ともあれ、周辺で被害が続いているのも確かですので、イノシシに相手にされていない檻は位置を変えながら、もうしばらく様子を見ながらの運用をしていきたいと思っています。