大掃除と災害対策

小物をまとめてかごにいれ、防振ジェルで棚に貼る。これだけでも立派な耐震化。

 だんだん年末に近づいてきていますが、あなたは大掃除をする人ですか。
 大掃除は普段やらない場所まで徹底的に掃除をすることが多いですので、普段動かさないタンス等の家具や家電製品も移動させているのではないかと思います。
 それらを元の場所に戻すとき、ちょっとだけ手間をかけて地震対策をしてみるのはいかがでしょうか。
 落下防止、転倒防止のための対策をするだけなので、たいした手間はかかりません。
 例えば、タンスの下に転倒防止用の新聞紙を入れたり、人がいる場所に倒れてこないように向きをかえたり、張り替える障子をちょっとだけ丈夫なものにしたり。
 掃除のついでにやってしまうと、新年はすっきりした気持ちで、そして安全に迎えることができると思います。
 せっかく大がかりにものを動かすのですから、そのついでに災害対策も一緒にしてもらって、お正月も安全にお過ごしください。

冬用タイヤの準備はしていますか

いつこんな風景になってもおかしくない季節です。

 雪がいつ降ってもおかしくない時期になりました。
 もしあなたが車をお持ちで降雪や圧雪、路面凍結など普通タイヤでは危険な状態になる場所にお住まいだったりお出かけするようなことがあるのなら、冬用タイヤの準備をすることをお勧めします。
 暖冬とはいいますが、雪が降るときには一気に降って動きが取れなくなるような大雪になることも多いです。
 今年はラニーニャ現象が発生しているということで、いつもの年よりも冷え込むのではないかという話もありますので、早めに装備しておいた方がいいかもしれません。
 四輪駆動車に乗っているからといって普通タイヤのままの人もいますが、オールシーズンタイヤで無い場合にはいくら四輪駆動車でも雪道は走れません。
 接地面であるタイヤが滑るのですから、駆動形式はあまり関係ないのです。
 ちなみに、冬タイヤは交換してもいきなり全性能が発揮できるわけではなく、ある程度走って皮を剥いておかないと、カタログどおりの性能は期待できません。
 早めに交換して慣らし運転をしておくことで、いざ降ったときにもきちんと性能が発揮できます。
 また、冬タイヤは普通タイヤよりも寿命が短いですから、交換しようとしたときにゴムが劣化していたり溝が浅くなっていたりして期待している性能が発揮できない状態になっている可能性もあります。
 早めに交換することで、そういったタイヤで発生する問題にも余裕をもって対応することができます。
 安全に車を運行するためにも、早めのタイヤ交換をお勧めします。

イメージは異なるもの

 「雪が積もる」と聞いて、あなたはどんな光景をイメージするでしょうか。
 よく雪の降る地方の人であればメートル単位の雪を想像するでしょうし、雪の降らない地域の人だと、屋根がうっすらと白くなっている状態を想像するのではないでしょうか。
 「雪が積もる」という一言でも想像する光景が異なるのですから、しっかりとした会話をしない限りは人によって災害のイメージが異なってくるのは仕方が無いことなのかもしれません。
 水害になる可能性が高まる「時間雨量50mm」という基準も、言葉で聞いて雨の降り方が想像できる人はほとんどいないのではないでしょうか。
 人によって、使っている言葉のイメージは千差万別です。
 防災のことを地域等で取り組むときには、まずは参加してくれた人の持つイメージを統一しておくこと。
 それが災害対策を地域で進め、継続していくための第一歩ではないでしょうか。

災害対策の準備は地域で異なる

市販品の非常用持ち出し袋セット
よくある非常用持ち出し袋のセット品

 個人の防災では非常用持ち出し袋や避難所のことがかなり頻繁に言われますが、非常用持ち出し袋や避難所の準備について都会と田舎では異なっているのはイメージできますか。
 以前に聞いた話ですが、大雨でとある田舎の集落が孤立したとき、数日後にその集落に救援部隊がたどり着いたら、住んでいた人達は特に困っていなかったということがあったそうです。
 もちろん電気は止まっているのですが、水は井戸から取っていて、熱源はプロパンガス。トイレはくみ取り。そして米は備蓄していて野菜は庭から取ってくるというような生活で、冷蔵庫と照明が使えないくらいでそこまでの不自由はなかったということのようでした。
 もしこれが都会地だと、停電は水も熱源も人の生活から奪ってしまいますし、食料の備蓄もそこまでの量はないのではないでしょうか。
 ライフラインが集中管理されている状況だと、一つのダメージが致命的な影響を与えることになりますが、普段の生活ではそこまで意識はしていないと思います。
 都会地と田舎での防災に対する準備の違いや意識の違いは、こういった普段の生活環境にもあるのではないかと思っています。
 実際、防災のご相談をいただくときにはよくライフラインと備蓄の話になって、そこまで非常食の準備をしないといけないのかと言われることがあります。
 災害への備えは住んでいる環境によって大きく異なるので、必要なものを選んで準備していただくような話になるのですが、都会基準で作られているマニュアルに完全に従うと、過剰準備になるのかもしれないと思うことがあります。
 もちろん、井戸が枯渇したりする可能性もありますから最低限の命を維持するための道具は必要なのですが、お住まいの環境や条件によって、準備するものを切り替え、命を守れるようにしてほしいなと思います。

南岸低気圧

 気象情報で「南岸低気圧」の名前を聞くようになってきました。
 南岸低気圧は日本列島の太平洋側沿岸部を進みながら発達する低気圧で、日本列島の南側の沿岸を進むことから南岸低気圧と呼ばれていますが、主に冬から春にかけて発生しますので、筆者は冬を告げる季節の変化のようなイメージを持っています。
 勢力が極端に強くなると「爆弾低気圧」と呼ばれたりもしますが、太平洋側での大雨や大雪はこの低気圧によってもたらされることが多いようです。
 この南岸低気圧、気象台を始めとする天気を予測する人達も降水・降雪予報を当てるのはなかなか難しいとのことで、太平洋岸で予想外の大雨や大雪が降ることもままあるようですので、天気予報でこの低気圧の名前が出てきたときには天候に注意が必要です。
 ちなみに、日本海側で雪が多いのは大陸から吹く冷たい季節風が日本海から熱と水蒸気を受け取って雪雲となり降るもので、こちらは比較的予測しやすいようです。
 とはいえ、地球の温暖化による影響が天気にもさまざまな影響を与えていますので、どこで何が起きても不思議ではありません。
 お出かけ前には天気予報の確認。できれば習慣づけておきたいですね。

【終了しました】防災安全講演会が開催されます

 令和3年11月30日の13時30分から、大田市のあすてらすで島根県の主催する防災安全講演会が開催されます。
 講師は国崎信江氏で、演題は「災害時の避難所をめぐる課題について~女性・子どもの視点から~」。
 他に事例発表としてしまね女性センター小川洋子氏による「島根県の防災における女性参画の現状」があります。
 お申し込みやや詳しいことにつきましては、リンク先をご確認ください。

令和3年度防災安全講演会(島根県のウェブサイトへ移動します)

救急ポーチの作り方

救急セット
救急ポーチの一例。消毒用として衛生綿が準備されている。

あなたの非常用持ち出し袋には救急セットは入っていますか。
非常用持ち出し袋の作り方では、「救急セット」や「救急箱」と書かれてはいるのですが、その中身について具体的に触れているものというのはあまり見たことがない気がします。
今回はこの救急セットには何を入れておくといいのかを考えてみたいと思います。

1.持病の薬がいるならまずはそれから準備する

まず最初に準備すべきは、常に必要な薬があるかどうかです。
日常的に薬を飲まないといけない人は、まずはその薬を救急セットに入れてください。
目安としては1週間分です。処方せんが必要な薬の場合には、かかりつけのお医者さんに事情を説明して非常用として準備しておくようにしましょう。
処方せんが必要な薬にも有効期限が存在していますので、新しいものを受け取ったら、その都度救急セットに備えているものと入れ替えるようにしてください。

2.外傷に備える

 絆創膏はちょっとした怪我や傷に使えて手間のいらない便利なものです。
 いくつかの大きさを揃えておくと、ちょっとした怪我なら簡単に処置ができて助かります。
 最近ではハイドロコロイドタイプの絆創膏も出ていて、これを使うと、貼り替えの手間が内上に傷跡が殆ど分からないくらいにきれいに直ります。
 ただし、ハイドロコロイドタイプは傷口を密閉して身体の修復機能を利用するという構造上、傷口がきれいになっていないとかえって怪我を悪化させることも可能性としてありますので、傷口が充分に洗浄できない場合には通常タイプの絆創膏を使った方が安全かもしれないと思います。
 次に滅菌ガーゼ。大きな擦り傷や抜くと命に危険がありそうな傷口の保護に使います。また、圧迫止血法を使うときには現金ガーゼを使うのが基本となりますので、いくつか準備しておきましょう。
 器具としては、手当に使うはさみやピンセット、毛抜きといった道具類はセットのものも売っていますが、値段と性能がほぼ比例するものです。
 そのため、入手できるのであれば個別に揃えた方が安くて良いものが揃うのではないかと思います。
 滅菌、減菌されている必要はありませんが、救急セットに入れるのであれば、それなりに衛生的なものを入れてください。
 そして粘着包帯。当然包帯として使えますが、それ以外にも添え木の固定具やテーピング、ちょっとしたものを縛るときなどにかなり役立ちますので、1セットはあったほうがいいと思います。
 粘着包帯と滅菌ガーゼの組み合わせだと圧迫止血もしやすくなりますので、滅菌ガーゼとセットで考えるといいのではないでしょうか。
 最後に使い捨てカイロと急速冷却剤。季節によって変わるかもしれませんが、小型の使い捨てカイロと急速冷却剤を入れておくといざというときに非常に役立ちます。
 使い捨てカイロは体温の保全に、急速冷却剤は打ち身やねんざ部分を冷やすのに使えます。いずれも緊急用ですので、小型のもので充分だと思います。

 基本となるのは以上の2つ。これなら準備することはあまり難しくないと思いますが、理由を説明しておきます。
 持病の薬というのは、実はかなり準備優先度の高いものになります。携帯トイレ、水の次くらいに重要なのでは無いかと筆者は考えています。
 せっかく命が助かったのに、持病の悪化で体調不良や亡くなってしまうようではなんにもなりませんので、非常用持ち出し袋だけでなく、普段持って歩く防災ポーチにも持病の薬は必ず入れておくようにしましょう。
 それから、怪我に使えるアイテム類は自分で持っておかないとなんとかできるものではありません。そこで、怪我に対しては応急処置できるようなアイテムを揃えておくのと同時に、それらの道具類が使えるようになっておきましょう。怪我をしてから治療の手引き書を読むようでは、助かるものも助からないと思います。

 ・・・ひょっとすると、「こんなものでいいの?」と思われるかもしれませんが、こんなもので充分です。
 後の準備については、おうちの救急箱を考えてみてください。普段どのような道具や薬を使っているでしょうか。救急箱に入っている薬や道具は、使うものと使わないものがはっきりとわかれていると思います。その中でよく動いていて無いと困るものを追加していけばいいのです。もし救急箱が無い、あるいは中身が動いていないおうちの場合には、追加アイテムも不要だと思います。
 最後に、これらを救急ポーチに入れるときには、それぞれのアイテムをチャック付きビニール袋にいれて収めるようにします。
 これは避難時に非常用持ち出し袋がずぶ濡れになったとしても、持病や応急処置に使うものは濡らさないようにするためです。
 蓋を開けるととても簡単な救急ポーチですが、例えば新型コロナウイルス感染症対策だとここにマスクや非接触型体温計などが必要になるかもしれません。それらのことも踏まえた上で、あなたにベストな救急ポーチを作ってもらいたいなと思います。

公衆電話の位置を知っていますか

 携帯電話(スマートフォン含む)は、恐らくあなたも含めて多くの人が持っていると思います。
 では、あなたの身の回りでどこに公衆電話があるか思い出せるでしょうか。
 また、公衆電話の使い方はご存じですか。
 災害などで停電が長引くと、携帯電話の電波の中継を行っている携帯基地局の電源が喪失され、携帯電話がつながらなくなります。
 携帯電話の普及で殆ど姿を見なくなってしまった公衆電話ですが、災害発生時には有線回線のため、基地局の状況に関係なく電話をかけることが可能です。
 また、公衆電話は大災害などで一度に大量の通信がある地域に集中したときに行われる通信規制の対象になりにくい特徴も持っています。
 いざというときに非常に頼りになる存在ではあるのですが、携帯電話の普及で公衆電話を使う人が激減したため、災害対策用に置かれているものを除いて、殆ど見かけることがなくなってしまいました。
 とはいえ、大規模災害時の携帯基地局の復旧にはある程度の時間がかかりますから、公衆電話というのはそういったときに自分の状況を被災地外へ伝えることのできる有力な手段となります。
 NTT西日本では、お住まいの地域の公衆電話の設置場所を地図にしたものを公開しています。
 あなたが作る防災マップやご自身の防災計画の中で、いざというときに備えてお近くの公衆電話の位置も把握しておくと便利です。
 そして、10円硬貨と公衆電話の使い方も身につけておくと、いざというときに困らなくて済むと思います。

公衆電話設置場所検索(NTT西日本管内)(NTT西日本のウェブサイトへ移動します)

公衆電話設置場所検索(NTT東日本管内)(NTT東日本のウェブサイトへ移動します)

各種見舞金と保険

 突然ですが、あなたは災害に備えた火災保険や地震保険に加入していますか。
 変な言い方になるかもしれませんが、もしもあなたが持ち家で、災害後も引き続き持ち家を持ちたいのであれば、地震保険に入っておくことをお勧めします。
 というのも、地震で全損したおうちには、国の被災者生活再建支援金が支給されますが、その額は最大で300万円となっています。
 これに日本赤十字社などから義援金が配られるとして、その額は地域の人口や災害の規模によって相当まちまちと考えていいと思います。
 大きな災害でも被災者数が多ければ受け取れる義援金の額は少なくなりますし、受け取れる時期も、はっきり言えば不明です。
 そんな状態で、ひょっとすると仕事も家も無くしてローンだけ払わなければならないという事態に陥るかもしれないと考えると、保険でせめて当座の資金だけでもなんとかするような手はずをしておかなければまずいと思います。
 では、どんな保険に入ればいいのかということなのですが、まずは火災保険に入ることです。
 火災保険があって、その火災保険に付帯する形で地震保険が存在しているため、火災保険なしで地震保険のみ保険をかけるということはできない仕組みになっています。
 しかも、火災保険額の30%~50%が補償額になるため、保険をかけていてもけっして安心というわけではありません。
 ただ、いくらかはローンが減らせますし、何よりもまとまったお金が国の生活再建支援金や義援金などよりも早く受け取れますので、生活が非常に楽になります。
 重ねて書きますが、地震保険は火災保険の付帯ですので、火災保険をかけた上で地震保険をかけることになります。
 もしもあなたが持ち家で火災保険を掛けているのなら、地震保険が付帯されているかを確認し、していないようなら必ず付帯させてください。そうしないと、火災保険では地震による被害は補償されません。
 だいぶ言われるようになってはきましたが、今一度自分のおうちの保険を確認し、災害対応型になっているかどうかをチェックしておいてくださいね。

稲むらの火

 今日、11月5日は世界津波の日です。
 津波という言葉は、あまり他の言語では存在しないようで、国際的にも「TUNAMI」と呼ばれているようです。
 ところで、あなたは稲むらの火という故事をご存じですか。
 江戸時代に起きた安政南海地震のとき、夜に村を襲ってきた津波から逃げるため地元の商人だった濱口梧陵という人が丘にあった稲わらに火をつけて村人達に避難の方向を教えたというものです。
 元々はラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が採録したお話だそうですが、この出来事が旧暦の11月5日だったことから、この日が世界津波の日になったそうです。
 いくつかの大陸プレートで構成されている日本列島は地震大国ですが、津波大国でもあります。
 最近東海・東南海地震が起きるような話が出ていますが、これに限らず、津波の影響のある地域にお住まいであれば、こういった日にご自身の避難経路や避難方法について考えてみて欲しいと思います。
 ちなみに、坂口梧陵さんの地元である和歌山県広川町のウェブサイトで紹介されている「稲むらの火」の話は、伝えられている物語とはちょっと異なっているようですので、興味がある方はそちらもぜひ覗いてみてください。

資料室【稲むらの火】~安政地震津波の顛末~(和歌山県広川町「稲むらの火の館」のウェブサイトへ移動します)