家族の料理と炊き出しの違い

当研究所が主催している”外遊びご飯の会”の一コマ。

 普段ご飯を作っている人なら簡単に炊き出しができるのではないかと思われる方もおられると思いますが、一度やってみるとその考えが間違っていることに気づくと思います。
 確かに、普段作っている分量を多くすれば、計算上は多人数のごはんづくりも可能ですが、実際には材料だけでなく、鍋や釜といった調理器具やコンロの火力、調味料の量などなど、想像以上に手間暇がかかって作るのがとても大変になります。
 避難生活で暖かいものを食べたいと考え、自分たちで炊き出ししようとすると、いきなりだと失敗する場合も結構あります。
 大人数の調理は、大人数の調理のコツがいろいろとありますから、できるなら年に1回以上、地域や職場で炊き出しの練習を兼ねた催しをすることをお勧めします。
 実際に作ってみると結構大変ですが、それらを食べることで仲良くなれますし、やり続けるとコツもわかってきます。
 そしてなにより、被災後にも調理ができるという自信につながりますから、万が一食料品が届かなくてもなんとかなるという安心感があります。
 ここ数年、新型コロナウイルス感染症の蔓延で一緒にご飯を食べるということが半ば禁忌扱いになっていますが、状況が落ち着いたなら、一緒に炊き出しして食べてみてください。
 いろいろな発見があると思いますよ。

食べたいものは季節によって変化する

 大雨が続き、あちこちで避難をされている方、そして被災された方には心からお見舞い申し上げます。
 早く天気が落ち着き、自宅に帰ったり復旧作業が進むことを願っています。
 さて、そんな災害の状況が悪化しない限り、指定避難所では行政からの食糧配給がある場合が多いようです。
 多くはパンやおにぎり、ちょっとしたお弁当になるようですが、それも長期になると飽きてくるものですが、自分の非常用持ち出し袋に自分が食べたい、食べるとご機嫌になる食べ物が入っていると、それだけで気持ちが落ち着くものです。
 ただ、この食べたいものというのが曲者で、季節の移り変わりによって食べたいものが変わっていくことが多いです。
 夏場だったら冷たいものやあっさりとしたもの、冬場なら、体の温まるものやこってりしたものが好まれるようですが、あなたの非常用持ち出し袋はそういった季節の変化に対応した入れ替えがされているでしょうか。
もちろん、季節を問わずにご機嫌になる食べ物があればそれが一番いいのですが、季節の変化とともにちょっとずつ非常用持ち出し袋の食料を入れ替えていくことで、どんな季節に避難をすることになっても、とりあえずの食べたいものが確保されている状態になります。
なかなか難しいかもしれませんが、季節によって変動する食べたいものも追加しておくと、防災食のレパートリーが広がって、避難所でもご機嫌で過ごすことができるかもしれませんね。
一つ注意しておきたいのは、温める際にはその避難所のルールに従うこと。
火気厳禁のエリアでは、たとえカセットコンロであっても利用はできません。
自分が避難する予定の避難所ではどういった状況で、どこでどんなものが使えるのかについても、避難訓練のときなどに確認しておくといいかもしれませんね。

リアルタイム被害予測ウェブサイト cmapを知っていますか

 これからの時期、秋の大雨や台風による被害が予測されますが、現在進行形で被害予測をしているウェブサイトがあるのをご存じですか。
 あいおいニッセイ同和損保が提供している「リアルタイム被害予測ウェブサイト cmap」がそれです。
 本来、このシステムは台風、大雨、そして地震の建物被害を予測して迅速に損害保険の調査や支払いの体制を組むために作られたそうですが、建物被害の予測ができるということは早めの避難を促すことにもつながるのではないかということで、現在無料で情報が提供されています。
 このシステムで被害が想定される場所にいた場合には、しっかりとした対策を取り、場合によっては域外避難も考えながら早めの命を守るための行動をとることができると思います。
 もちろんAIによる予測なので、実際には被害が出ない可能性もありますが、台風などは最大で7日前からの予測ができるそうなので、それを見ながらさまざまな備えをしていくことも可能だと思います。
 ハザードマップも表示でき、アプリもあるので、興味のある方は一度試してみてください。

リアルタイム被害予測ウェブサイト cmap(あいおいニッセイ同和損保のウェブサイトへ移動します)

車の燃料の残量に気を付ける

車をシェルターにするには燃料が必要。

 地方では多くの人が車を所有していると思いますが、その車の燃料はしっかりと入っていますか。
 車は燃料がある限り、災害時のシェルターとして機能する能力を持っています。
 また、支援物資の受け取りや買い出し、行方不明者の捜索やちょっとしたお出かけなど、落ち着いてからもさまざまな場面で重要な働きをしています。
 ただ、これも燃料があってこそ。
 燃料がなくなると、単なる鉄の箱と化してしまいます。
 車の燃料は燃料計の残量が半分になったら満タンにするクセをつけておいたほうがいざというときに安心です。
 大規模な災害になると、被災地だけでなく、日本全国で燃料の供給が止まってしまうような事態が考えられます。
 東日本大震災では、直接の影響のなかった地域でも燃料不足が発生し、ガソリンスタンドで給油制限などが行われたことを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。現在は、東日本大震災のときよりもガソリンスタンドの数が減少しているので、給油制限が行われるとあの時以上に生活に影響が出ることが予想されます。
 ガソリンの残量に気を付けて、できるだけ満タンにしておくようにすることで、少なくとも最初の1日は補給なしでも過ごせるはずです。
 ちょっとしたことですが、これも災害への備えということで、燃料計の残量と補給を意識しておくことをお勧めします。

【お知らせ】救急救命講習会を開催します【終了しました】

 来る10月23日に益田市市民学習センター多目的ホールで、今年度第2回目の救急救命講習会を開催します。
 講師には日本赤十字社島根県支部の方をお招きし、心肺蘇生法やAEDの使い方、怪我の応急処置や水の事故の防ぎ方など、前回同様盛りだくさんの内容となりました。
 募集定員は10名となっており、先着順で定員になりしだい締め切りとしますので、 ご希望の方はお早めにお申し込みください。
 詳細につきましては、チラシをご確認ください。
 皆様のご参加をお待ちしております。

避難は日のあるうちにする

 予測できないような突然の大雨というのもありますが、最近は結構高精度で振り出す前に大雨の予報が出ています。
 特に夜間に大雨が予測されるような場合には、夕方までの日のあるうちのところで大雨に関する情報が出されることが多いです。
 これは早めの避難のために行われるもので、低地や水害の発生が予測されるような場所に住んでいる人は、自分のいる場所でこういった情報があったら、早めに避難を開始することを検討してください。
 夜間の避難は非常に危険です。特に大雨の場合には視界が全く効きませんので、徒歩の避難もかなり難しいです。
 指定避難所の開設は自治体が行いますので、ひょっとすると開設がされていないかもしれませんが、そういったときには高台にあるホテルや旅館といった宿泊施設や知り合いの家などを確保して避難するといいでしょう。
 また、どうにもならない場合には、車中泊ということで高台の駐車場に移動し、車で一晩過ごすという方法もあります。健康に不安のある方にはお勧めできませんが、危険を回避するという点では一つの選択肢です。
 避難方法や避難先はいろいろとありますが、可能な限り日のある明るいうちに避難を完了しておくことが肝心です。
 夜間はまったく見えない、移動はできないという前提で、自分の行動計画を考えるようにしたいですね。

面と点

 大雨に関する警報があちこちで出ていますが、あなたのお住まいの地域は大丈夫ですか。
 あなたがお住いの場所の危険をハザードマップなどで確認し、何に対して備えておけばいいかについてしっかりと確認しておくことをお勧めします。
 ところで、もしもお住いの場所が浸水するような地域の場合、避難する基準は自分で準備しているでしょうか。
 というのも、避難情報の「高齢者等避難」や「避難指示」はお住いの地域の自治体が発表するもので、あくまでも地域という面で考えられています。
 ただ、自分が住んでいる場所という点がどうかは考慮されていませんので、避難情報が出る前に家が浸水しているといった事態は十分に考えられます。
 安全に避難するためには、普段から家の周りの雨や水の様子を確認しておいて、どれくらい雨が降るとどんな感じになるのかを知っておきましょう。
 そして、ちょっと危険だなと思ったら、自治体の避難情報を待つことなく避難を開始してください。
 ひょっとすると、自治体が開設する指定避難所はまだできていないかもしれませんが、その場合には自分が安全だと思える場所に退避しておいてください。
 例えば、ハザードで見る限り安全だと思えるような日帰り入浴施設や図書館といったような時間が過ごせるような場所に移動して様子を見てもいいでしょう。
 自分の安全を自分で確保することが、災害に対する備えとしては非常に重要になります。
 何もなければそれでよし。
 万が一に備えて、早め早めの行動をとるようにしてくださいね。

あふれた水には触らない

 あちこちで大雨が続きさまざまな被害が出ているようですが、あなたのお住いの場所はいかがですか。
 洪水時には、基本は早めの避難ですが、外に出ることができないくらいの激しい雨が降っているケースも増えてきていますから、そんなときには二階以上に避難する垂直避難も避難時の検討に加えておいたほうがいいと思います。
 よく、あふれた水の中を避難する人たちの映像が出ていますが、このあふれている水は普通の川の水とはかなり異なることを知っておいてほしいと思います。
 一番の違いは、汚水が混じっているということ。あちこちが浸かると、浄化槽や下水管などの汚物も一緒にあふれてきます。こういった汚物が混じった水は、雑菌が繁殖しやすく、破傷風菌などもかなり増えていますので、万が一怪我をしたり、傷口が浸かるようなことがあればそこから化膿することや死に至る場合があります。
 よく防災講演会などでは水の中を歩くときには杖を使ってなどと説明されますが、どうしても避難が必要な場合を除いては、水があふれてきたら水の中は歩かないという風にしたほうが安全です。
 サンダル履きではなく、靴を履けといった話がありますが、それ以前に汚れた水の中は歩かないこと。
 それを前提にしてどのような避難ができるのかを検討してほしいと思います。

危険なくらげを知っておこう

 お盆が過ぎると、海の雰囲気が一気に変わって泳ぐのには悩むような波が出るようになります。また、クラゲが岸に寄ってくることもあって、海水浴場は閉鎖される場合が多いと思います。
 すでにそんな時期に入っていて今更感があるのですが、普段見かける危険なクラゲについて、今回はちょっとだけ触れてみたいと思います。
 泳ぐときに「クラゲが刺した」といわれることがあります。
 普段見慣れているミズクラゲも刺胞は持っていますので、刺されることがあり、肌の弱い人など腫れてしまうことがあるようです。
 はっきりとわかるような痛さの場合には、日本海側の場合だとアカクラゲやアンドンクラゲが該当する場合が多いようです。
 今日はアカクラゲとアンドンクラゲについて、ちょっとだけ知っておいてほしいと思います。なお、生きているクラゲは島根海洋館アクアスに展示してあるものを撮影しています。

1.アカクラゲ

 傘の部分に赤い線が入っていることからアカクラゲと呼ばれています。
 刺されると非常に痛みを感じ、みみずばれができます。
 乾燥したものがよく石に張り付いていたりしますが、乾いていても毒の有効成分は生きているので、できるだけ触らないようにしてください。

2.アンドンクラゲ

 傘の部分が四角形で行燈に似ていることからアンドンクラゲと呼ばれています。
 海水浴シーズンの後半頃から海水浴場に出現することがあります。
 複数個体でまとまっていることがあるので、それらに取り囲まれると体中がみみずばれになってしまうので、見つけたらすぐに陸に上がるようにしてください。

 不幸なことに、クラゲにもしも刺されたら、何をおいてもまず陸に上がって様子をみてください。
 クラゲの毒も蜂などと同じようにアナフィラキシーショックを引き起こすことがありますので、陸に上がって少なくとも15分から30分程度は様子をみてください。
 もしもクラゲの触手や刺胞がくっついているなら、様子を見ながらはしやピンセットなどでそっと取り除いてください。絶対に素手で触ってはいけません。
 また、痛痒い状態になると思いますが、クラゲの毒は40度以上の温度になると患部を40度以上にできれば痛痒い状態を緩和することが可能です。
 酢や水をかけるという記事を見ることもありますが、クラゲの種類によってはさらなる痛みを招く場合がありますので、何にやられたのかわからないのであれば、やらないほうが無難です。
 いずれにしても、様子を見て悪化したり、本人の様子がおかしいようなら、病院を受診するようにして下さい。
 前回虻やブユに対するところでも書きましたが、できるだけ素肌を露出しないことが刺されないことにつながりますので、ラッシュガードなどを着ておくのは有効だと思います。
 また、砂浜に不思議な色をした餃子のようなものが落ちていることがありますが、それはカツオノエボシの浮袋の場合があります。
 カツオノエボシの強力な毒はそんな状態になっても効果はそのままですので、絶対に触らないでください。

危険がわかるかどうか

動物園で見るとこんな感じだけど、実際に出会うとかなり怖く感じるのがクマという生き物。

 ラジオを聞いていたら、恐怖体験として「山でこぐまに出会ったので必死に逃げた」という話をしていました。
 パーソナリティーの方は「子供でもくまですからね。小さいけど」といった感じだったのですが、それを聞いていて、クマの生息域に住んでいる人やそういうところを登山する人ならこの話の本当の怖さがわかるのになと感じ、わからないというのはこういうことなのかと妙に納得しました。
 「子グマがいる」というのは、別に子グマが脅威なわけではありません。いえ、子グマでもよほど小さな個体でない限りは人間よりも力が強くて十分脅威なのですが、それ以上に怖いのが、その子グマのすぐ近くに母グマがいて、状況によっては問答無用で襲われるということなのです。
 たぶん、山に登る人も同じような印象を持つのではないかと思いますが、子グマは無警戒にいきなり現れます。そして、理不尽なのですが母グマは人を見ると子グマに対する脅威と見なしてかなり警戒していて、ちょっとでも母グマが子グマが危険だと感じたら、即座に攻撃をしかけてきます。
 話をしていた人はそのことを前提にしていたと思うのですが、子グマには気を荒くしている母グマがついているということを知らなければ、単に「かわいい小さなクマがどうして怖いんだろう?」という印象になってしまうのでしょう。特に動物園ののんびりしたクマしか知らない人もいるわけで、そうなると怖いということが理解できないのかもしれません。
 人が危険を感じるためにはそのことが危険であるということを知っておかないといけないのだなと、今回の話でちょっと考えさせられました。
 危険を知ること、できれば危険な目にあってみること。
 人が的確な判断をするためには、そういった経験が重要なのかもしれません。