とりあえず数値化してみる

 防災に限らず、物事を考えていくときには客観的な視点が必要となります。
 「客観的」という言葉を辞書で引いてみると「誰が見てももっともだと思われるような立場で物事を考えるさま」とあります。
 誰が見てももっともだという状態にするためには、可能な限り数値化できるものは数値化することです。
 数値は嘘をつきません。その数値に意思が関わることでいかようにでも考えられてしまうのですが、基礎となる数値は数値でしかないのです。
 数値化できないものは対策を考えることも難しくなりますから、できるかぎり数値化してみることが客観的に考える第一歩だと思います。
 防災に関していえば、例えば「家から歩くと何分で避難所へ移動できるか」や「近くの高台まで避難するのに何分かかるか」、「自分の居る場所から階段を使って外へ出るまで何分かかるか」などがあります。
 これらを知ることで、対策するための時間が具体的にわかるようになってきますから、より安全が確保できるようになります。
 他にも「自分が背負って歩ける重さ」を知っていると非常用持ち出し袋の重さをどれくらいまでで作ればいいのかがわかります。
 自分がトイレにいく回数を知っていれば、携帯用トイレの準備もしやすいでしょう。
 一食に食べる量がわかっていれば、非常食の準備も的確にできます。
 自分の情報を数値化しておくと、防災に対する備えにも有利になってきます。
 何から手をつけようかと悩む前に、まずは自分の情報を数値化してみてくださいね。

【活動報告】第4回高津小学校防災クラブを開催しました

 去る12月2日、高津小学校のクラブ活動の一つとして採用していただいた防災クラブの第4回目を行いました。
 今回は前回選んだけれどできなかった校内安全点検とビニール袋で防寒着作りの2種類の内容を同時に開催することにしてみました。

どちらを選ぶのかも楽しいひととき。今回はどちらを選んでもできるので、みんな張り切っています。

 当研究所初の講師二人体制での実施でしたが、子ども達はそれぞれに楽しんで作業をしてくれ、怪我もなく無事に終了することができました。

校内点検の一コマ。ロッカーや本棚が固定されているかどうかもチェックしてました。

 校内安全点検では、限られた時間でしたが校内を見て回り、安全な場所危険な場所の点検をして地図を作成してくれました。

集めた情報を元にして地図に落とし込んでいきます。手際よく進めていきます。
防寒着作り。試行錯誤しながら自分だけのオリジナルな防寒着を作っていく。

 防寒着作りでは、ビニール袋を利用した防寒着をそれぞれの発想で自由に作ってもらい、実際に着てみて「暖かいね」という感想をもらい、最後は記念写真をそれぞれに撮ってみました。

腕が出ないことや腕が寒いという話になって、袖をつけて服のように仕上げる人も出てきた。

 限られた時間ですが、さまざまな体験をすることによって子ども達が自分たちでもできることをたくさん見つけ、実際に行動することで子ども達も大人達も防災意識を高めていくことができるといいなと思っています。
 今回参加してくれた子ども達、そして担当の先生にお礼申し上げます。

防災対策は場所ごとに異なるものです

 防災関係の本を読んでいるといろいろと勉強になることや面白いことが書いてありますが、基本的には誰が読んでもいいように汎用性を持たせて書かれているようです。
でも、それぞれの防災行動に落とし込んでいくと、同じ対策でも住んでいる場所や位置によって対策が異なる場合が出てきます。
 それを無視して準備や備えを行っていくと、いざというときに逆にトラブルを招いてしまうことが起こりえます。
 災害対策はオーダーメイドのハンドメイドでやっていったほうが、最終的にうまく自分の身を守ることができるのではないかという気がしていますので、もしもあなたが防災関係の本を読んで備えようと思っていただけていたなら、書かれていることとあなたの置かれている状況を考えて適宜修正していくといいと思います。
 例えば、自分で準備する災害食は3日~1週間分を準備しなさいと言われていますが、都会地と地方では準備すべきものが異なります。
 都会地では自分に必要なものは全て準備しておく必要がありますが、地方で水に浸からないような場所で田畑を作っている人は、災害食を準備しておかなくても倉庫にはお米、そして畑には野菜があると思います。そうすると、全てを準備しなくても、缶詰や何かを用意しておけば当座は充分凌げるでしょう。
 また、水の確保でよく出てくるお風呂の残り湯ですが、これを置いておくことが正解の場所と、そうでない場所があります。
 一軒家やアパートなどの1階にお住みであればお風呂の残り湯は置いておく方が後で水に困らなくて済みますが、2階以上のアパートなどに住んでいる人は、残り湯は速やかに抜いておいた方が後のトラブルが少なくて済みます。
 二階以上が地震で揺れると、風呂の水は風呂桶からこぼれ出します。そのこぼれた水が床下に流れ込んで、階下での水漏れ騒動になり弁償するような場合もでてくるのです。
 一つ一つは小さなことですが、あなたが快適に被災後も生活をするために、自分に必要な防災行動を考え、準備しておいてくださいね。

携帯トイレのちょっとした問題

某百円均一ショップの携帯トイレ。男女兼用とあるが、大小兼用とは書いてない。

今更ながらなのですが、この間携帯トイレを見ていて気づいたことがあります。
それは、この携帯トイレというのはあくまでも「小用」だということです。
当たり前の話ではあるのですが、小用の携帯トイレはサイズ的にも構造的にも大きい方ができる構造になっていません。
ただ、避難中でもどんなときにでも、出るものを止めるのは非常に苦労しますので、大きい方も大丈夫なように準備しておく必要があるのですが、大小兼用となると、携帯トイレの数はいきなり少なくなってしまいます。
サイズが大きくなって、座れるか、またはバケツなどに収めて使うような構造になり、小用に使うにはもったいなくなってしまいます。
また、百円均一ショップでも取り扱いがありませんので、一回あたりの単価も少しだけ高くなります。
防災用品として携帯トイレを準備するときには、大用と小用は分けて、それぞれに準備しておく必要があるのだろうなと思いますので、非常用持ち出し袋に携帯トイレを準備する際には、忘れずに大きい方のことも準備してくださいね。

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災害エスノグラフィーをご存じですか

「災害エスノグラフィー」をご存じですか。
災害時に起きた出来事と対応を対応した本人に赤裸々に書いてもらい、それをつなげたり組み立てたりすることでその災害でどのような判断とどのような行動が行われ、その結果何が起きたのかを検証するための作業です。
「知」の共有とも言われるこの作業は、実際に起きたことを追体験することでどのようにすればよりよい判断ができたのかを検討していく作業で、当然判断のミスやありえない行動などもたくさん出てきます。
聞き取ったことにより発言者が不利益を被らないように、一般公開が数十年後になるという場合もありますが、その時に何を考えて行動し、その結果どうなったのかを検証することは、同じ状況に置かれたときに必ず参考になるものです。
最近では被災地で被災者に対して聞き取りが行われることも多く、例えば広島県では平成30年に起きた7月豪雨で避難した人避難しなかった人から当日の行動や考えを聞き取り、「私たちはなぜうまく避難できないのだろう」という災害時の行動事例集を作成しています。
記憶は、良くも悪くも風化していきます。記録も、保全しようという意思がない限り、やはり風化していくものです。
風化を防ぐためには、記録を元に追体験をし、記憶をしっかりと固定させることが必要となります。
災害ではもはや「想定外」という発言はできなくなりつつあります。
各地で発生した災害で起きたさまざまなことをしっかりと検証して次につなげていくこと。
災害エスノグラフィーは、その手助けをしてくれるものです。
災害エスノグラフィーについては、少し前になりますが「防災の決め手「災害エスノグラフィー」~阪神・淡路大震災 秘められた証言~」という本も出ていますから、興味のある方はご一読いただければと思います。

私たちはなぜうまく避難できないのだろう」(広島県のウェブサイトへ移動します)

防災の決め手「災害エスノグラフィー」~阪神淡路大震災・秘められた証言~(Amazonの書籍紹介のサイトへ移動します)

災害時に不安や緊張を緩和する方法

 被災後には災害に対するトラウマやこの先どうなるのかと言った見えない恐怖からくる不安などにより、寝が浅くなったり食欲が落ちたり、逆に過食になったりする不安定な精神状態に陥ることがあります。
 その時に役に経つのが「タッピング」です。タッピングセラピーやタッピングタッチとも言われるようですが、指先を使って身体のあちこちを優しくタッピングしてほぐしていくという内容です。
 一人でもできますし、二人でもでき、道具もいらないため、被災地での災害支援の一つとして取り入れられています。
 別に災害時に限らず、日常生活でのちょっとした緊張などをほぐすのには便利ですから、やり方を知っておいて損は無いと思います。
 慢性的な肉体的・精神的病気はお医者様にお任せするとして、ちょっとした不調のときなどに試してみてはいかがでしょうか。

タッピングセラピー・ストレスケアの手順」(一般社団法人日本TFT協会のウェブサイトへ移動します)

タッピングタッチ・はじめてみよう」(一般社団法人タッピングタッチ協会のウェブサイトへ移動します)

災害後のトイレ、使えるか使えないか。

 唐突ですが、あなたのいる場所のトイレはどういった汚物処理をしているかご存じですか。
 大きく分けると、くみ取り型、浄化槽型、そして下水型にわかれると思いますが、それぞれの処理方法によって災害後に使う方法が異なるので注意が必要です。

 いちばんシンプルなのはくみ取り型で、この場合には例えばくみ取り槽に水や汚泥が溜まってしまうような水害でも、くみ取り槽に溜まった汚泥や水を吸い出せばすぐに使えるようになります。
 また、他の災害でも水があればくみ取り槽へ流すことが可能なので、トイレに関して受けるダメージは少なくて済みます。
 もちろん最終的な点検は必要になりますが、とりあえず水さえあれば簡易トイレなどを使わなくてもトイレを使うことが可能です。

 次は浄化槽型。水害で汚泥などに浸かった場合には浄化槽の整備と点検が必要になりますので、それが終わるまでは使うことはできないと思ってください。
 浄化槽自体が水に浸からなければ、曝気槽のポンプに通電することで浄化槽の機能事態は維持することが可能ですので、流す水とポンプを動かす電源があればトイレを使うことは可能です。

 最後に下水型ですが、これは基本どんな災害でも使えなくなっていると思ってください。
 下水管は非常に詰まりやすいので、水で汚物を流し込むと途中で詰まってしまいます。そうすると大規模な修繕が必要となってしまうので、下水管の点検が終わるまでは全面的に使用禁止になります。
 また、マンホールトイレなどもありはしますが、下水処理の構造上あまり汚物を落としすぎると詰まってしまうので、マンホールトイレを設置する場合には設置しても良い場所をあらかじめ選定しておく必要があることを覚えておいてください。
 被災後、点検が終わるまでは携帯トイレや簡易トイレを使うようにしましょう。

 おまけですが、集合住宅のトイレでは、2階以上のトイレは使用不可です。もしも上層階でトイレを使った場合、途中の汚水管が破損していると破損した場所から汚物が噴き出して大惨事が起こります。
 そういった事態になった場合、汚物が噴き出した場所の住人から汚物を送り込んだ住人が訴えられたりすることがありますので、集合住宅の場合は処理方法を問わず、点検完了まではトイレは使用禁止です。
 トイレに関するさまざまな情報はありますが、まずは自分の住んでいる場所や普段でいるしている場所の環境を確認し、災害後に自分が汚物で二次被害を出さないように充分気をつけてくださいね。

誰でもできる感染症対策

 新型コロナウイルス感染が広がっているようで、連日マスコミが騒いでいますが、新型コロナウイルスに限らず、感染症対策の基本は手洗いになります。
 石けんと流水を使って手をしっかり洗うこと。これが感染症対策の基本となります。
 あとはマスクの着用。これは周囲にウイルスをまき散らさないために必要なものです。また、気休めですが防除できるかもしれません。
 この二つがしっかりとされるとどうなるのかを表した図があります。
 国立感染症研究所のインフルエンザ流行レベルマップの2018~2019年と2019~2020年(現時点では「今シーズンの動き」にあります)の流行状況を比較してみてください。
 新型コロナウイルス対策が叫ばれ始めてから、インフルエンザの感染者数が明らかに減っており、収束も早くなっていました。
 このことを考えると、手洗いをしっかりとすること、そしてマスク着用が有効であることがわかると思います。感染対策としては、できればフェイスシールドで顔を覆えば、飛んでくるウイルスの顔への付着を防ぐことができますのでより安全になるのではないかと思います。
 また、飲み会の席で酒が入ればどうしても大声で騒いでしまうことになりますので、飲み会では無く食事会にし、食べている間は静かに食べて、それから、マスクをつけてゆっくりおしゃべりをするようなスタイルだと安心できると思います。
 これからまたインフルエンザや感染性胃腸炎などが流行る季節になります。
 新型コロナウイルス対策だけで無く、冬に流行するさまざまなウイルス対策として、石けんと流水での手洗い、マスク着用、できればフェイスシールドの着用をして感染しないようにしたいですね。

参考:インフルエンザ流行レベルマップ(国立感染症研究所のウェブページへ移動します)

布団の周りに履き物を置く

 寝ている場所には履き物を置くとガラスなどを踏んでも安心して避難ができます。
 履き物と言っても、運動靴やスリッパなどいろいろとありますが、運動靴など屋外で使うものを布団の周りに置くのは抵抗がある方もいると思います。
 また、壊れたものの破片が靴の中に入ると、慌てているときにはそのまま履いてしまって怪我をしてしまうこともあるかもしれません。
 準備するのはスリッパでいいと思うのですが、屋外避難することを考えると、普通のスリッパでは無く、かかと付きの庭やベランダなどで使うようなものが安全でいいと思います。
 必要とされる機能は、すぐに履けて足の裏を守ってくれ、ある程度の距離を歩くのに支障のないことです。
 そのことを考えて、自分が歩きやすい履き物を準備しておくといいと思います。
 どうにも落ち着かないのであれば、たびや厚手の靴下などでも素足よりはマシです。
 普段履き物を履いて屋外を移動している人にとっては、屋内の小さな破片でも歩けなくなってしまう可能性がありますから、なるべく足の裏を守れるように準備しておきたいですね。

ダンゴムシのポーズをやってみよう

 いろいろ言われることも多いのですが、地震の時に身を守るための「ダンゴムシのポーズ」は理にかなっていると思っています。
 頭と首、お腹、そして手首、足首、ももの付け根の太い血管を守り、揺れにも転がらなくて済むポーズなのですが、正しくポーズを取らないと逆に怪我をするかもしれません。
 身体が硬いととっさにできないポーズでもありますので、まずはゆっくりと練習を兼ねてやってみるといいと思います。

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です


 最初は正座をします。
 それから背中を丸めながら前に倒れます。
 頭は片手で後頭部、反対側の手で首筋を隠します。その時、手首が露出しないしないように注意してください。
 足首はくじかないように気をつけてください。
 この姿勢は縦揺れにも横揺れにも耐えられる非常に安定した姿勢ですので、素早くできるように練習しておくといいと思います。
 一つ注意しておきたいのは、この姿勢を取っても屋根や天井が落ちてきたり、家具が倒れてきたりすると怪我をしてしまったり死んでしまったりします。ダンゴムシのポーズはあくまでも小さなものの落下などから身を守るためのポーズですので、家具の固定や耐震補強が必要なことは言うまでもありません。
 ところで、足の不自由な人や身体が動かしにくい人はダンゴムシのポーズを取るのが難しいかもしれません。
 そういったときは、とにかく重心を下げることです。

身体が振られないようにすることが大切。場所があるなら「メタボパンダのポーズ」(当研究所命名)をとると転がらなくて済むかも?

 具体的には、座ったりしゃがんだり、なるべく頭を地面に近い位置に下げること。
 頭は体重の1/10の重さがあり、首という細い部分で支えられているので揺れで振られると転倒しやすくなりますので、身体が振られないような姿勢を考えておくとよいでしょう。
 地震はいつどこで遭遇するかわかりません。とっさの時に自分の命を守れるのは自分自身ですから、とっさの時に身体が動かせるように練習しておいてくださいね。