災害対策における優先順位

家具の転倒防止のためのつっかえ棒。でも、揺れたら落ちそうな物がたくさん乗っているのが問題。

 ご家庭での災害対策についての優先順位についてお問い合わせいただくことがありますが、ことご家庭に関する限り、最優先されるべきは地震対策です。
 建物の耐震補強や家具などの転倒防止をしっかりと行うこと。これがもっとも優先されるべき対策です。
 というのも、他の災害は発生するまでにいくらかの時間が必ずありますから、その間にある程度の対策や準備をすることが可能です。
 でも、地震は予告なしでいきなり発生し、そして発生したときには勝負がついているからです。
 地震で大切なことは揺れで死なないことです。建物が倒壊しない、家具の下敷きにならない、落ちてくる物、落ちた物で怪我をしないといった揺れ対策がきちんとできていれば、殆どの場合地震で直接死ぬことはありません。
 殆ど、と書いたのは、揺れによる心臓発作やそれに類する病気によってなくなる可能性は0%と言い切れないからです。
 日本は地震大国ではありますが、地震で命を失う場合というのは、建物や家具、崖崩れや崩落などにより潰されてしまうか、あるいは揺れで転ぶか、もしくは揺れにより車等の乗り物がどこかへ突っ込んでしまうかといったところで、事前に対策さえできていれば助かる可能性は十分すぎるくらいあります。
 怖いのは高層建築の倒壊や部品落下ですが、田舎ではそこまでの高い建物はありませんので、そういった場所に近づかなければ大丈夫です。
 とにかく地震対策。これを最優先で行うようにしてください。それ以外の災害については、地震対策ができてから準備しても遅くはないと思います。もし余裕があれば、地震対策に平行して非常用持ち出し袋を備えておけば完璧だと思います。
 もちろんこの順位でやる必要はないと思います。これはあくまでも筆者の考える優先順位なので、あなたが考える優先順位で災害対策を考えていただければと思います。
何も備えないのは、この日本ではあり得ないことですので、しっかりと対策をしておいてくださいね。

おうちのエネルギー源は多重化しておこう

 電気、ガス、灯油、薪、炭など、おうちで使うエネルギー源にはさまざまなものがあると思います。
 最近は安全性や燃料コストの安さ、掃除のしやすさなどでオール電化にしているおうちも多いと思いますが、防災の視点から見ると、エネルギー源はなるべく多くしておいた方が安全だと考えています。
 例えば、電気であれば災害や思わぬ障害による大規模停電がいつ起きてもおかしくはありません。そんなとき、ガスや灯油など他のエネルギー源があれば、停電のときでも暖を取ったり調理をしたりすることができます。
 電気とは異なり、他のエネルギー源の場合には酸素が必要になりますので定期的な換気は必要となるのが難点ではありますが、いざというときに凍えなくて済むのは何よりの安心になると思います。
 もちろんオール電化がいけないというわけではありません。送電が止まることによって停電になることが困るのですから、蓄電池が備わっていればそれである程度まではカバーが可能になります。
 太陽光発電システムがセットになっていれば、日中の発電も可能になりますのでそれなりに生活が維持できると思います。
 ガスや灯油は燃料としての使用期限が存在しますので、保管しておいて何年も放っておくというわけにはいきません。
 薪や炭は、乾燥した環境が維持できるなら年単位で安定して保管することができますが、使い方にはかなりのコツが必要です。
 これらを備えるのであれば、日常生活の中に上手に組み込んだり、キャンプやバーベキューなどで定期的に消費をしながらローリングストックしていうことになるでしょう。そこまでたくさんでなくてもいいと思いますが、数日間はエネルギー源として使用可能な量のストックは必要です。
 自分の生活にあったエネルギー源の多重化について、考えてみてくださいね。

追伸:軽油+発電機の組み合わせはどうだろうかというご相談をいただくことがありますが、こちらは値段が高額になること、大きな音と排気ガスが出ること、利用頻度が費用に見合ったものかをご検討いただき、周辺環境や電気の必要量などをよく考えて必要だと判断した場合に準備されればいいと思います。
燃料の軽油も長く置いておくと変質してしまうことがありますので、そのあたりも十分に気をつけていただければと思います。

非常用持ち出し袋の中身と普段の生活

 非常用持ち出し袋の中身についてはたびたび触れているところですが、中身に迷うときには、自分の普段の生活を思い返してみてください。
 いつ、どんなときに何をしているか、どのようなときに何を使ってどんなことをしているか、まずはそれを考えてみてください。
 その上で、その生活習慣は避難先でもしないといけないことなのか、やったほうがいいことなのか、やらなくてもいいことなのかを整理します。
 やらなければいけない、やったほうがいいと判断すれば、それに必要なものは準備しておかないといけないということになります。
 ここで注意したいのは、やらないといけない、やったほうがよい、やらなくてもいいはあくまでも主観です。他の人の意見を考えるとうまくいきませんので、そこだけは気をつけてください。
 さて、準備をするとき、それらのものが非常用持ち出し袋に詰めておくと困るようなものであれば、非常用持ち出し袋を普段自分が使う場所へ移動させ、その中から出し入れをするようにします。
 そうすることで、非常用持ち出し袋の位置も把握できますし、いざというときに探さなくてすみます。
 避難生活はどれくらい普段の生活の質を維持できるかで快適性が変わります。
 非常用持ち出し袋を自分が持って歩ける範囲で、という前提にはなりますが、普段から自分の生活を考えておいて、非常用持ち出し袋の中身を備えるようにしてくださいね。

お散歩と避難訓練

 寒い季節になってきましたが、あなたの体調は大丈夫ですか。
 寒い時期になると屋内に引きこもりがちになりますが、天気の落ち着いている日には外で散歩してみると、意外とリフレッシュできるものです。
 せっかくなので、災害時に避難しようと考えている一時避難場所や避難所まで、実際に歩いてみてはいかがでしょうか。
 毎回同じところではなく、天候や体長に応じて近いところ、遠いところ、災害ごとに安全な場所などを確認しながら歩いてみると、思ってもなかった障害があったり、意外な避難可能な場所を見つけたりできて面白いですよ。
 子連れのご家庭では一緒になって歩いてみると、子どもがどの程度までなら歩けるのかや、歩けない子を背負ってどのくらいまでなら移動できるのかなどを試しておくと、緊急事態のときに自分たちがどのように避難すればよいのかのイメージができます。
 今回添付した写真でも小さな子が背負われていますが、この背負子はリュックサックになっていて、さらには背負っている子どものいすにもなる優れものです。
 リュックサックに納まる量はたいしたものではありませんが、数個の紙おむつと1回分の離乳食程度なら十分に納まりますので、普段使いでセットしておくといざというときにもそのまま子どもを乗せて背負って避難を開始することができます。
 非常時には可能な限り両手を空けるということを考えると、こういったアイテムを上手に使うのもありではないでしょうか。ただ、おんぶは背負う方もですが、背負われる子どもも慣れていないと上手に背負うことができませんので、そういう部分での練習にもなります。最初はうまく背負われてくれない子どもも、背負っている人と同じ目線になっていることに気づくと結構喜んでくれます。
 ちょっとした天気の安定した時間に、ちょっとしたお散歩で気分転換。
 新型コロナウイルスの流行が不安になっている今だからこそ、他人と接触せずに済むお出かけを考えたいものですね。

モンベル・ベビーキャリア(monbellのサイトへ移動します)

ヘルプマーク・ヘルプカードをご存じですか

 見た目では判断がつかない身体の内部の障害や難病の人、妊娠初期の人など、援助や配慮が必要だが見た目ではわからない人が身につけ、周囲に援助や配慮が必要であることを知らせるためのものです。
 東京都が考案して全国に普及されてきているそうですが、残念ながら筆者自身はまだ本物を見たことがありません。ただ、調べてみると島根県でも障がい福祉課がこのヘルプマークやヘルプカードの普及を行っているようです。
 ヘルプマークは、赤地に白い字で十字マークとハートマークが掲載されています。そして裏面には、その人がどういったことで援助や配慮が必要なのかという記載がされています。
 ヘルプカードも同様で、このカードの中に支援が必要な内容が書かれていますので、もし障がいのある人からこれらのものが提示されたら、記載されている内容に沿って支援をして欲しいとのこと。
 また、これらが併用される場合もあるようですので、もし提示されたらマークの裏側やヘルプカードの有無を確認をしてください。
 災害時には情報がうまく伝わらない・伝えられないことが数多く発生しますので、こういったことを知っておいて、いざというときにその人を助けることができるといいなと思います。
 内容など詳しいことについては、島根県障がい福祉課のウェブサイトをご確認ください。

ヘルプマーク・ヘルプカードについて」(島根県障がい福祉課のウェブサイトへ移動します)

被災地域での自己防衛

 いやな話になりますが、被災した地域ではさまざまな犯罪が発生します。
 暴力や盗難、性犯罪に至るまで、びっくりするくらいさまざまな事件が起こります。そして、警察力は災害対応で低下しますので、犯罪抑止も難しい状態になります。
 これらから完全に身を守る方法で一番手っ取り早いのは、普段の生活をミニマリストにすることと、被災後は可能な限り早く被災地から待避してしまうことで、被災地にいなければ発災後に起きるさまざまな犯罪から、自身の身と財産を守ることはできます。
 でも、被災地から避難できない人もいるでしょう。そういう場合には、まずは一人にならないことが重要です。
 普段からあいさつを交わして顔を売っておくことで、被災後に不審者と思われずに済みますし、声をかけることで孤立を防ぐこともできます。
 犯罪は対象が無人、もしくは一人であるところを狙って起きることが殆どです。集団化しておくことで、犯罪の発生を未然に防ぐことが可能になります。
 また、可能であれば自治会単位で地域パトロールもすることです。被災地域には、復旧支援の人よりも遙かに早く火事場泥棒がやってきます。それらに活躍させないためには、できる範囲で地域を巡回することです
 犯罪者は人の目をとても嫌がります。複数の目が地域やお互いを見ていることがわかれば、犯罪に遭遇する確率はきわめて低くなります。
 こう書いてくると分かる人も多いと思いますが、被災地域での犯罪発生率の抑制は、平時にどれだけ地域コミュニティが円滑に保たれていたのかと言うことと反比例します。地域コミュニティがしっかりしているところは犯罪発生確率が下がりますし、そうでないところはその逆となります。
 最後に暴力と性犯罪のお話をしておきます。
 防災関係の自己防衛の話では、女性に対しては「被災地では地味で目立たない格好をしろ」「女性を意識させるな」という話をされます。それも大切なことだとは思いますが、それ以上に大切なことは、絶対に一人にならないことです。
 普通、周囲の目があると考えると、犯罪行為を企んでいる人間から見ると非常にやりにくいものです。そのため、さまざまな手を使って狙った相手が一人になるチャンスを伺っています。
 どこへ行くのにも絶対に一人にならないようにすること。できれば同性で群れ、夜中にトイレに行くときでも絶対に複数で行動してすること。これを常に意識して行動してください。そして、女性用トイレや更衣室、授乳室を可能な限り早く整備し、利用する場合には必ず見張りを立てること。顔見知りでも関係ありません。近づけない、見せないようにすることが重要なのです。
 どんな人でも被害者にも加害者にもなり得るのが災害後の環境ですので、特に女性や子どもについては、必ず複数で行動し、昼夜問わず、複数の人の目が常にある状態にしておくことが大切だと思います。

デマと真実

商品の無くなった棚は不安感をあおる。

 何か大規模な災害が起きると「○○が足りなくなる」という情報が飛び交います。
 今年の上半期に新型コロナウイルスが流行したときにも、トイレットペーパーが無くなるというデマが流れて、店頭から品物が消えました。
 ここまで読んで矛盾を感じた方がいらっしゃるかもしれませんが、トイレットペーパーが無くなったことが事実なのではなく、トイレットペーパーが無くなるという話が店頭からトイレットペーパーをなくしてしまったということです。
 新型コロナウイルスの流行とトイレットペーパーとの間には何の関係もないのですが、流れを追うとこんな感じになります。

1.トイレットペーパーがなくなるという噂が出る。
2.噂を聞くと、心理的にあるうちに買っておかないと買えなくなるという不安感が起こる。
3.お店でトイレットペーパーを見かけると、噂を思い出し、あるうちに買っておこうと考えて、すぐには必要がないのにたくさん買い込んでしまう。
4.買い込む人が多いと、いつも売れる量以上に売れてしまうので、お店の在庫がなくなる。
5.いつも以上の生産能力を要求された工場ではトイレットペーパーの生産が間に合わなくなる。
6.店頭から在庫が消える。

 ここで気をつけたいのは、大量に買い占めたからと言って使う量が爆発的に増えるわけではないと言うことです。
 この後どうなるかというと、こんな感じになります。

7.店頭に無くなったためにトイレットペーパーを増産しろという世間の圧力がかかる。
8.やむを得ずメーカーが増産する。
9.結果的に消費量は変わっていないので、ある程度充足すると売れなくなる。
10.メーカーやお店がトイレットペーパーが売れなくて困ることになる。

 今回のコロナウイルスの流行では、製紙メーカーが生産はしており流通も動いているため買い占めなくても大丈夫というアナウンスを何度もしていたのですが、マスメディア的にはトイレットペーパーが無くなった絵の方がインパクトがありますので、そういった放送を繰り返し、それを見た人達が慌てて買い占めに走り、という悪循環の輪が広がりました。
 冷静に考えれば新型コロナウイルスが流行したからといってトイレットペーパーがなくなる理由にはならないのですが、店頭から在庫が無くなったことが心理的に不安を抱えている人達の後押しをすることになりました。
 消毒用アルコールでも同じようなことが起こり、日常生活で消毒用アルコールが必要な人達を困らせることになりました。ちょっと不思議だったのは、自分用の消毒ボトルを持って歩いている人が店頭や施設の入り口でそこに備え付けてある消毒液を使っていたことです。他所の消毒液を使う気なら、消毒液を自宅に大量に買い占めた意味はなんだったのでしょうか。普通の人であれば、石けん+流水で手洗いをしっかりと行えば大丈夫ということが理解できていれば、こんなおかしなことにはならなかったでしょう。
 マスクの場合は少し事情が異なっていて、生産国である中国が国内を優先したために入荷がなくなり、多くの人が買い占めに走ってしまいました。マスク不足を解消すると称して、アベノマスクなどと揶揄された政府公認で配布する布マスクが出てきたりしましたが、現在は生産が追いつき、以前よりも安くなっているものも出てきています。アベノマスクも、結果だけ見ると大金を使って役に立たないマスクが配られたという、ある意味ではデマに踊らされたような形になってしまいました。
 デマはどのような大規模災害でもついて回るものですが、それを見抜く力がないとデマが結果的に真実を生み出すことになってしまいます。
 マスメディアの偏向報道は今に始まったことではありませんが、SNSでも自分が見たい情報ばかりが整理されて集まってくるため、デマをデマと見抜けなくなっていることが増えてきています。
 まずは因果関係を考えること。そして、それが無くなるとしてどれくらいまでは耐えられるのか、また、必要とされる量は1日どれ位なのかなど、その物品に関する自分の消費情報をしっかりと整理しておくことです。そして、1週間なり10日なりの数量が確保できていればそれでよしと考えることです。どこまで買い占めればいいのかという終わりを決めていないと、消えない不安によりいつまでも買い占めを続けることになってしまいます。
 最後に、自分の信じようとしている情報とは真逆の情報を読んでみることです。
 情報には正の情報と負の情報の両方が存在しているはずですから、自分の思っていることと反対の主張を読むことである程度客観的に物事を見ることができるようになると思います。
 大規模災害ではさまざまな流言飛語が飛び交います。出所不明のデマもたくさん出てきます。それらの情報を鵜呑みにせず、いろんな角度から考えてから行動することを習慣にしたいものですね。

地図を使いこなす力をつける

防災マップ作りの一コマ。地図作りは地味な作業になってしまうので、飽きてしまう子どもが多い。うまく乗せられていないのが当研究所の現在の課題。

 地図を使いこなす力といっても、別に方位磁針を持ってオリエンテーリングをやってくださいという話ではありません。
 防災では、まず最初に防災マップという地図を作るところから始めます。
 危険な場所、安全なところ、役に経つものなどを区分けして色づけし、どこをどのようにすれば安全が確保できるかという作業なのですが、この地図が出来上がったらそれで終わりというケースがとても多いです。
 当研究所でも年に1回防災マップ作りをしているのですが、やはり完成して終わりになっているのが現状です。
 本当はこの地図を使って危険な場所の危険度を下げ、安全な場所は安全であることを確保し、役にたつものはきちんと使い方をマスターしておくといった作業が必要となります。
 これが本来の地図を使いこなす力ではないかと思います。
 日本損害保険協会様が主催している「ぼうさい探検隊マップコンクール」の応募用紙では、実はこの部分もきちんと記載するようになっていて、実施してできた地図をどのように地域に落とすのか、応募する際に頭を悩ましている部分でもあります。
 防災マップは作成して終わるのではなく、それをいかに地域の安全に反映させていくかという作業が、地味ですが非常に重要な内容です。
 当研究所でも地図の作成と出来上がったものを地域にどうやって波及させていくのかというところで試行錯誤しているところですが、この作業を確実に行うことが地域の安全を守る上での大きな鍵になる気がしています。

災害時の履き物について考える

当研究所にもさまざまな履き物がある。

 災害発生時に移動するために何らかの履き物を用意しておくように推奨されていることはご存じだと思います。
 非常用持ち出し袋にも丈夫なスリッパが入っていますし、地震の時に備えて着替えや履き物を寝る場所の近くに備えておくといったこともされているのではないでしょうか。
 ただ、一概に履き物といってもいろいろと存在していますので、登山靴から折りたたみ式スリッパまで人によって準備しているものが様々なのが現状です。
 今回はこの履き物について考えてみたいと思います。

1.なぜ履き物を準備しておかないといけないのか

 屋外にいるときはともかく、屋内では多くの場合素足か靴下を履いているだけの状態だと思います。
 地震で建物が揺れた場合、大きい地震だと窓ガラスが割れたり、棚のものが散乱したり、天井が落ちたりして人が歩く場所にものが散乱してしまいます。
 そのとき、素足や靴下だけだと移動時に落下物によって足の裏を怪我してしまう危険性があります。
 また、水害などで水に浸かった場合には、水に浸かっている部分の底は見えないので、危険なものを踏んでしまう可能性があります。
 そして、どのような災害であれ外を歩いて避難しようとすると、今の日本人の多くは裸足のまま歩くことは困難だと思います。
 そのため、履き物を準備して足を守ることが必要になるのです。

2.どんな履き物なら安全か

 履き物に求められるのは
1)脱げないこと
2)何かあっても足に怪我をしないこと
3)安全に歩けること
ですから、それらの条件を満たすものであればいいということになります。
 スリッパだと、(1)を満たせないものが多いので、かかとつきスリッパなど固定できるような機能をもったものでないと困ると思います。
 こういうところでよく出てくる運動靴だと、紐やマジックテープをしっかり留めれば(1)は大丈夫ですが、(2)で釘などを踏み抜く危険性があるので、踏み抜き防止のインナーソールが入っている方が安心だと思います。
 長靴は(1)も(2)もそれなりに条件を満たしているのですが、非常に滑りやすいという特性を持っていますので、災害時に履いて避難する場合には歩き方に注意が必要です。
 (1)~(3)の条件を満たせる靴で一番いいのは登山靴でしょうが、はき慣れていないと歩きにくいという大きな欠点がありますので、登山する趣味のない人にはちょっとハードルが高い気がします。
 極論から書くと、かかとがついていて足首から下が露出しておらず、踏み抜き防止のインナーソールなどの対策が取られていて、滑りにくいこと、と条件を満たせれば何でもいいということになるので、結局お気に入りの履き物に手当をすればいいのではないかということになります。
 もちろん使い捨てのスリッパでもないよりは遙かにマシですから、何かを準備しておいてください。

3.どこに置くといいか

 最後に、置き場所について考えてみます。履き物が必要な理由を考えると、着替えと一緒で枕元に置くのが一番安心できますが、靴を部屋に持ち込むのは抵抗がある人もいると思います。
 枕元には着替えと使い捨てスリッパ、廊下に靴というのでもいいかもしれません。
 また、履き物を配置するときには、災害時に飛ぶ破片が履き物の中に入らないようにあらかじめ袋に入れて置いておくと安心だと思います。

 避難するにしろ、片付けをするにしろ、足を怪我すると素早い移動が困難になってしまいます。
 靴を履いて寝る必要はないと思いますが、いざというときにすぐに行動が開始できるように、身近に履き物を準備して置いてくださいね。

非常用持ち出し袋や備蓄品の意味

市販品の子ども用非常用持ち出し袋の中身。これだけでは足りないし、いらないものもあるかもしれません。

 非常用持ち出し袋や備蓄品はそれぞれきちんと準備しておきましょうという説明がされますが、非常用持ち出し袋や備蓄品をなぜ備えないといけないのかについて考えたことはありますか。
 それは避難や避難先、避難生活で自分が直面するであろう困り事を解決するためにあらかじめ準備しておくものだということです。
 お困り事解決袋と考えれば、中身に何を準備しなければいけないのかがわかってくると思います。
 そして、非常用持ち出し袋や備蓄品の中身はみんな違うということも理解できるのではないでしょうか。
 例えば、老眼鏡や入れ歯、杖などは必要とされる人以外には準備しなくてもいいものですし、スマートフォンや携帯電話を持たない人であれば充電池を持ち歩く必要はありません。
 井戸や貯水タンクがあって水の心配がいらなければ飲料水の優先度は下がりますし、野菜や米が確保できるのであれば備蓄食を準備する必要がないかもしれません。
 避難所に毛布や布団がふんだんにあるのであればエマージェンシーシートやエアマットは不要でしょうし、周囲に薪がふんだんにあるのであれば燃料はいらないかもしれません。
 もし災害が起きて逃げるとき、そして逃げた後、あなたが直面すると思われるさまざまな困り事を解決するためには何を用意しておいたほうがいいのかを考えて準備をしておくこと。
 それにより、初めて非常用持ち出し袋や備蓄品が意味を持ってくるということを知っておいて欲しいと思います。